Sakita Blog

1級建築士事務所Sakita Space Design主宰
崎田由紀のブログ。

SUMIKA Project見学会1-宇都宮のハウス-

2009-10-26 15:13:27 | 建築

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西沢大良氏設計「宇都宮のハウス」
厚さ800の白い屋根が特徴的。
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室内は完全なワンルーム。左が玄関から奥をみたところ。右は奥から玄関を見たところ。黒い壁は全て開口。黒く細い円柱は実は鋼管杭。
この家には基礎も床も柱も壁も窓もない。雲のような屋根だけがあるイメージで作られている。
屋根は長方形だが、黒い建具は微妙な曲線を描いている。
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平面図(東京ガスパンフレットより)
3つの床仕上(コンクリート、フローリング、芝)は敷地全体を覆っているが、建具はピーナッツのような形をしているのが、平面図をみるとよくわかる。建具の納まり、大変だったろうなあ、と思うが、いったいなぜ、この形なのか?「雲の下」のコンセプトから、雲の形、なのか?ではなぜ屋根は長方形なのか?
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肝心の屋根を見てみよう。大梁が斜めに走っている。この角度は宇都宮の夏の風向きに合わせてあるらしい。この形を決めるためにいくつもの模型を作製し、風洞実験までしたとか!その上に直交方向に垂木?(上梁)が走っている。大梁の下には野縁がまわり、プリプロピレンのルーバーが天井仕上になっていて、室内空気も外部空気もこの天井で処理される仕組み。

ちょうど隣地に建つ藤本氏設計のハウスから屋根が見おろせるのだが、部分的に透明な屋根と半透明の屋根になっていて、透明なところはトップライトになり、一日の太陽の動きに合わせて室内に光りが降り注ぐ仕組み。朝はベッドの上、昼はキッチンの上、、、と。
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軒天には換気のための開口が空けてあり、ゲストルームの壁につけられたオーニングで開閉する。

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外から屋根を見上げると、ものすごいコンセプトと実験、モックアップの製作、、、と凝りに凝ってつくられた結果の実物は、なんだかとてもラフな納まりでびっくり。
写真ではよく見えないかもしれないが、断熱材が隙間から見える。吸湿しちゃわないのか?と心配になる。
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開口を空けたところ。
新建築別冊「SUMIKA Project」で伊東豊男氏が「わざわざ屋根の中に風を通さなくてもいいんじゃないの?建具を開けば、部屋の中を自由に風が通るわけだから」と言っていましたが、どうして屋根の中の風にそんなにこだわっちゃったのかなあ、というのは私も同じように感じた。
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3つの床仕上の一つの芝、、、のはずが、芝が日照不足のため枯れてしまったとかで、リュウノヒゲになっていた。置き石があって、そこを通らないと洗面、トイレ、風呂という水回りへ行けない。屋根と壁に囲まれているので、一旦外へでないと行けない、、、というちょっと前?に流行った?動線よりはマシだが、どうして室内に植物の床を持ち込まないとならなかったのか?それもなんだかよくわからない。
「新建築」で西沢氏が「光は本来、上から垂直に降り注がなくてはいけないし、とくに住宅のような施設ではそうです。上から光を毎日浴びていれば、人間の身体は基本的に支障なく活動するようになります。」と言っていて、健康的な生活のための日時計住宅の提案のようなことを述べていた。上からの光のためには壁に穿つ窓は不要となり、真っ黒な壁面となったのだろう。
しかし、芝が育たないような日照不足の、囲われた室内で、本当に健康な生活が送れるのだろうか?
この家に住めば鬱にはならないといっていたけれど、垂直面に穿たれた普通の窓から景色を眺めることなく過ごす毎日では、かえって鬱になってしまうのではないだろうか?
あまりにもコンセプチュアルで、脳完結型の建築に、「ついていけないなあ」と思うのは、私の感覚が普通過ぎて建築家っぽくないということなのだろうか、、、?


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