日銀が、行っている異次元の金融緩和は、投資集団への資金供給、株式市場への投機資金流入⇒株式の値上がり、海外投資集団の資金流入を促すためのものであることはあきらかです。同時に、市場への現金供給は国債などの買入れを通じて行っており、非常に危険なインフレリスクを伴っています。国が発行する国債を日銀が買い入れていることは、国債の発行額が際限なく拡大することを意味しています。金融機関から見れば、危険性がない国債を償還前に買い取ることが分かり、売買がしやすくもなっています。
もう1つの問題は、金利が限りなく0になり、長期化する問題をどのように改善するかが問われてもいます。金利がゼロの資金を借り入れて投資することで、株式、不動産市場の乱高下が日本、その他の地域で起こる可能性も指摘されています。現在のように資金が国境を越えて自在に動く社会では、そのことが日本の市場、経済をブーメランのごとく、襲う可能性もあります。
資本家、金融機関にとって投機による利益追求ができたとしても、国民の多くは関係ない場所におり、そのような大手企業、投資集団、金融機関の行動によるインフレ、市場の混乱によるリスクの付けまわしなどを防ぐ必要があります。物価上昇を国家目標にするような国は、世界広と言えども沢山は、ありません。それだけ、異常な政治経済状態であると言えます。問題の本質は、国内消費の低迷と非正規労働の爆発的増加、中産階級の没落と貧困化です。また、多国籍企業の生産拠点の海外移転による雇用の減少です。日本経済が直面する問題を改善する解決策は、異次元の金融緩和などでないことは確実です。
<日経記事>物価見通し 16年度2.1% 日銀展望レポート
日銀は30日の金融政策決定会合で、新たな物価見通しをまとめた。目標に掲げる2%の上昇率を2015年度中に実現し、16年度は2.1%に達するシナリオを明示した。1%程度で横ばいと見込む民間予測に比べて強気な姿勢を打ち出した。ただ、黒田東彦総裁は記者会見で、目標達成は「道半ば」と強調。見通しが下振れすれば「ちゅうちょなく調整する」と追加緩和を辞さない姿勢も示した。
今回、焦点となったのが、日銀が半年ごとにまとめる経済・物価情勢の見通し(展望リポート)。とりわけ消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率見通しに市場の注目が集まった。
結果は日銀の物価見通しの「順調さ」を裏付ける内容となった。消費増税の影響を除き、15年度は1月時点の見通しの1.9%を維持。さらに新たに公表した16年度は2.1%と、目標を上回る見通しを示した。
日銀シナリオ通りに物価が上昇していけば、市場が大規模な金融緩和の「出口」を意識し始める可能性もある。
ただ、黒田総裁は記者会見でむしろ慎重さを前面に出した。物価見通しをもって「出口の時期を特定するのは時期尚早だ」とけん制。見通しが下振れれば「ちゅうちょなく調整」と追加緩和も辞さない姿勢を強調した。
それ以上に市場関係者が注目したのは前回4月8日の記者会見と今回の発言の微妙な変化だ。
前回の記者会見で黒田総裁は「(追加緩和は)現時点では考えていない」と述べた。その結果、市場の追加緩和期待が後退し、株式相場が一時調整し、円高も進んだ。今回の記者会見で「きょうは言わないのですか」と催促する質問が飛ぶと、黒田総裁は苦笑しながら「なかなか微妙な質問だ」とかわした。
市場の期待をつなぎとめるための配慮と受け止められ、市場も前回のようには動かなかった。
展望リポートでは実質成長率についても16年度までの見通しを示した。輸出回復の遅れで13年度、14年度を下方修正したものの、16年度にかけて0%台後半とみる潜在成長率を上回る成長は維持する姿を描いた。
消費増税に伴う駆け込み消費の反動の影響は「夏場以降、減衰していく」と指摘。雇用の逼迫などに伴い「賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていく」との見立てを示した。
一方、伸び悩む輸出の先行きの不確実さや、消費増税が個人消費に及ぼすマイナスの影響などをリスク要因として注視していく構えもみせた。
展望リポートには全9人の政策委員のうち、3人が反対を表明。木内登英、佐藤健裕両氏は物価上昇率が2%に達するとの見通しに反対し、白井さゆり氏は達成時期が15年度よりも後ズレするとして反対したもようだ。日銀内の見方は必ずしも一つではない。