日本経済の閉塞感は、製造業の生産拠点が減少、海外に移転したこと。また、大量生産、大量消費型産業構造を転換できないでいること。日本が持つ科学技術、製造技術を生かした産業の発展策が系統的にされていないこと。環境対策などの技術、産業の育成が軽視されていること。自然エネルギーなどの開発、投資が遅れ、転換しないことから来る化石燃料の輸入、代金が増加していること。―――これらはすべて国策に関係したことです。従来型の産業構造を転換しなかったことから来る矛盾と問題点を先送りしているだけです。抜本的な対策は異次元の金融緩和でないことはまともな経済学者、科学者であれば誰でもが分かることです。
また、規制緩和と称して自民党政権がとってきた労働法制の緩和は、非正規労働を爆発的に増加させ、日本が誇っていた中産階級、所得階層の崩壊をもたらしました。その結果、1%富裕層、99%の普通の人と、貧困層を作り出しました。そのことで、生活保護世帯の爆発的な増加、高止まり、失業者の拡大、失業手当財源の枯渇、これらを含めて社会保障制度の財源が財政に占める比率が拡大、提言かできていません。―――裏を返せば、自民党型政治、政策によってもたらされ、企業への利益誘導、利益付け替えの結果、国民が不幸にされているだけに過ぎません。また、企業活動は社会的責任を全く果たさずに、氏企業利益のみを追求すると言う身勝手さが横行する社会になっています。
このようなことを止めない限り、現在の政治経済の閉塞感、矛盾は改善しないことはあきらかです。また、輸出主導の経済構造、経済対策も止めるべきです。消費税の輸出企業への還付は国内消費税の約三割が還付されるような実体を改善すべきです。実質的に輸出補助金を多国籍企業、輸出大手企業に支給しているのを止めるべきです。また、法人税率引き下げをやめ、海外からの企業投資、進出を促進するなどという幻想、まやかしを宣伝しながら法人税率の引き下げを正当化することを止めるべきです。
<東京新聞社説>貿易、経常赤字 慌てず成熟国の政策を
日本は「貿易収支」に加えて「経常収支」も一時、赤字となった。「赤字」は心配だが、日本の経済は成熟期に入っている。「成熟」にふさわしい腰を据えた経済政策が問われている。
日本と海外とのモノやサービスなどの収支を示すのが「経常収支」で、「貿易収支」と「所得収支」が二本柱になっている。「貿易収支」は輸出入、「所得収支」は企業が海外に投資した収益として得られる配当金や利益の収支だ。
二〇一三年度、「貿易収支」は過去最大の十四兆円近い赤字となった。超円高期に進んだ国内産業の空洞化、東日本大震災後の原油や液化天然ガスの輸入増などが背景にある。
円ドル相場は2008年に一ドル=100円を割り込み、家電や自動車などの輸出企業は、為替に影響されない経営を目指して現地生産を進めた。国内産業は空洞化して輸出が減る構造変化をもたらした。異次元金融緩和で円安に戻したが、空洞化と現地生産で輸出は容易には増えない。原燃料の輸入額は価格上昇や円安で膨らみ2011年以降、貿易赤字が定着している。
ただこの間も「経常収支」は黒字で推移してきた。「所得収支」が黒字で、貿易赤字を埋めてきたからだ。貿易では赤字だが、これまでに投資した海外から安定した収益があがるようになり、差し引きでは黒字となっていたわけだ。
その「経常収支」が昨年十月から今年一月まで赤字になり、「国富の流出」と危機感が広がった。だが心配するよりも、経済構造の変化をしっかりと受け止めることが大切だろう。
「国際収支の発展段階説」という見方がある。経常収支などの「国際収支」は経済の発展段階に伴い変化していくという考え方だ。「貿易収支」は新興国に追い上げられて競争力が低下し、赤字基調になる。半面、蓄えた資金を海外投資した果実である「所得収支」は黒字になり、「経常収支」も黒字で推移する。この段階は「成熟した債権国」とされ、日本は長期的にこの段階にあるとみられる。
重要なのは「経済の成熟化」を踏まえた政策のあり方だ。
企業の競争力を高める「法人税減税」が検討されているが、少子高齢化を安定成長に生かす「健康長寿社会」への具体策はみえない。働く女性の環境整備、格差の中で意欲を失いつつある若者の雇用などでも、多くの切実な声に応える施策が今、求められている。