紛争を軍事衝突にしない。紛争を話し合いで解決する。領土問題は関係国できちんとした話し合いを行い、解決させる。場合によっては国連などが入り、話し合い、調停を行うことも必要かもしれません。
人口の増加、工業化などを進める中国、東南アジア各国はエネルギー資源の確保、食料、資源の確保をめぐって、それぞれの国が政策の重点とした取り組み、主張を行っています。したがって、このようなことが起こることは想定範囲であったはずです。いずれにしても関係国が武力を使って、相手国を威圧する、従わせるような対応は許すべきではありません。
ウクライナ問題、クリミア自治共和国の編入に端を発した、ロシアなどの領土割譲の動きも影響をしているように思います。領土問題は多くの国家、地域で軍事衝突に発展していますし、可能性があります。このような問題を軍事的な衝突とするのではなくて、話し合いによる外交で解決させることを基本とし、急ぐべきです。今回の中国、ベトナムの紛争も、当事国だけで解決できないのであれば、国連が仲介して、関係国、周辺国の協力も要請して話し合いを進めるべきです。また、中国は武力による威圧と一方的な主張、行動を慎むべきです。そのことが、将来的に中国にとっても政治経済によい結果をもたらすだろうことを理解すべきです。
<ベトナム報道記事>
ベトナム外務省は4日、中国海事局が南シナ海に設置した石油リグ「HD981」で掘削を開始すると通告したことに対し、この海域はベトナムの大陸棚と排他的経済水域(EEZ)に属しているとして断固反対するとの声明を発表した。EEZは国連海洋法条約に基づいて設定される水域で、自国の陸地から200カイリまでの領域。
中国海事局の通告は、今月2日から8月15日までこの石油リグで掘削を行うため、全ての船舶にリグから半径1カイリ以内の海域に侵入しないよう求めている。問題の海域は、リーソン島(南中部沿岸地方クアンガイ省)から119カイリ、ベトナムが領有権を主張し中国が実効支配しているホアンサ諸島(英名:パラセル諸島、中国名:西沙諸島)のチートン島から18カイリの場所にある。
ベトナム外務省のレ・ハイ・ビン報道官は「ベトナムの領海における外国のあらゆる活動は、ベトナムの許可のない限り不法で価値のないものだ。断固反対する」と強調した。
この問題に関してペトロベトナムグループ(Vietnam National Oil and Gas Group=PVN)は4日、協力関係にある中国海洋石油に対し、協力の精神に反する行為だとし、直ちに不法な活動を中止するよう求める書簡を送った
<WSJ記事>中国、東シナ海で周辺国と米国の出方を探る
中国がベトナム沖の紛争海域に巨大な石油リグを運び込んだことによって、米国や近隣諸国の政府が以前から恐れていたことが明らかになった。つまり、中国が領有権を主張する海域の防衛を大幅に強化し、周辺国と米国の出方を探ろうとしているのだ。
今回、南シナ海での領有権の主張の中心となっているのは、中国の国営石油会社がパラセル(西沙)諸島近くに設けた最新式の石油リグ。ベトナムはこの設置に反対し、海上警察がこれを阻止しようとしていた。リグをめぐるにらみ合いは数日間続き、7日には大きな衝突が発生。ベトナムは、約80隻の中国船が紛争海域に入り、衝突の際にベトナム側の乗組員6人がけがをしたと発表した。海上警察のNgo Ngoc Thu副司令官は8日、現場には多くの船がとどまっており、緊張が続いていると述べた。
両国の当局者はいずれも、相手の船が体当たりしてきたと主張している。中国外務省の当局者は、船を退去させるようベトナムに要求した。
このリグはありきたりのリグではない。高さ138メートルのプラットフォームは中国初の深海リグで、水深3000メートルでの作業ができる。2年前に鳴り物入りで完成したこのリグは、中国石油業界にとっての「戦略兵器」と言われる。このリグは、石油開発の大幅な拡大という以前からの中国の目標を実現可能にすることで、石油開発をめぐる状況を一変させるものになる可能性がある。 シンガポール国立大学エネルギー研究所のフェロー、クリストファー・レン氏は南シナ海での中国の石油掘削について、「その意図は以前からあった」とし、「今やそれができるようになったということだ」と述べた。
しかし、安保問題のアナリストは、紛争は石油リグ、それに南シナ海の天然資源の開発をめぐって起きているが、問題はこの対立がもたらす結果がどのような先例として残るかであり、中国の周辺国と米国が、中国に対し紛争海域の戦略資源をほしいままにすることを認めるかどうかだ。
専門家らは、アジアの一部の同盟国がオバマ政権のアジアでの軸足がぐらついていると不安を抱いている時に、中国は、米国がこれらの同盟国に対する支援の約束を守るかどうかを試しているのだと指摘した。
オバマ大統領は4月のアジア歴訪で、同盟国を安心させることに力を入れた。日本に対しては、中国も領有権を主張している東シナ海の諸島も安保条約のカバー範囲に入ると明言し、フィリピンでは、同国の南シナ海での領有権紛争まで支援するかどうかは明確にしなかったものの、米国の軍事支援は「鉄壁」だと強調した。ただ、かつての敵で、中国の台頭への懸念から安保、外交関係を強化してきたベトナムへの訪問は今回の旅程には入っていなかった。
米戦略国際問題研究所(CSIS)のアーネスト・バウワー、グレゴリー・ポーリングの両氏は、中国がオバマ大統領のアジア歴訪の直後にリグを設置したという事実は、ベトナム、(東南アジア諸国連合=ASEAN)諸国、それに米国の決意を試そうとするものだと書いている。
中国はこの数十年間、南シナ海のほとんどについて領有権を主張している。アナリストらは、ここを掌握しようとする同国の意図は変わっていないとしている。さらに、習近平国家主席が誕生してからは、中国政府はより攻撃的にその能力を見せつけようとし、周辺国との紛争を激化させている。これは米政府の大きな懸念を招いている。
シンガポール国立大のレン氏は「これは中国政府の新しいスタイルを示唆している。行動でその主張を実現しようとしている」と語った。
ハノイを訪問した米国務省のラッセル次官補(東アジア・太平洋担当)は、米国は「いかなる危険性をも非常に懸念している」とし、領有権紛争の当事国に自制を求め、南シナ海については米国はいずれの側にもつかないと述べた。
南シナ海では6カ国が一部またはほぼ全域に対し領有権を主張している。紛争海域であることから完全な探査はできていないが、エネルギーアナリストは海底には大量の石油・天然ガスがねむっていると見ている。
中国外務省国境・海洋事務局の易先良副局長は8日、記者会見で、リグ設置の決定は数年前からの中国の通常の探査活動の一環だとし、「ベトナムの破壊的な行為に大きなショックを受けている」と述べた。
同副局長は、3日から7日の間にベトナム船は171回衝突してきたと指摘。リグは中国海洋石油(CNOOC)が所有している。同副局長は、衝突で中国側に負傷者が出たかどうかや、何隻の中国の船がいるかは明らかにしなかった。ただ、中国海軍は関係していないという。