“さるかに合戦”  臼蔵 と 蜂助・栗坊 の呟き

震災や原発の情報が少なくなりつつあることを感じながら被災地東北から自分達が思っていることを発信していきます。

1兆ドル長者が25年に誕生か

2014年05月09日 17時48分53秒 | 臼蔵の呟き

貧富の格差が拡大し、これほどの富裕層が誕生する社会は、正当性があるのかを考えさせられます。

<エレコードチャイナ>1兆ドル長者が25年に誕生か

7日、富の二極分化がますます進むのにともない、富める者たちの資産が急速な勢いで増えている。資産が1兆ドルを超える世界初の「1兆ドル長者」が2039年にもインドや中国などの新興経済国で誕生することが予想される。

2014年5月7日、英メディアによると、富の二極分化がますます進むのにともない、富める者たちの資産が急速な勢いで増えている。資産額が1兆ドル(約100兆円)を超える世界初の「1兆ドル長者」が2039年にもインドや中国などの新興経済国で誕生することが予想される。

この予測は現在の世界の富豪たちの資産の増加ペースに基づいて打ち出されたもので、富豪には米経済誌フォーブスの長者番付に名前が載る人もいる。今日の物価で計算すると、1兆ドルの資産があればロンドンの中心部にある不動産をすべて買うことができる。世界中の人に分配すれば、1人当たり140ドル(約1万4000円)となる。

同誌の最新の世界長者番付によると、現在のトップはマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏で、資産は約760億ドル(約7兆7200億円)に上る。この数字で計算すると、1兆ドル富豪の資産はゲイツ氏の約13倍だ。

英国の資産コンサルティング機関によると、初の1兆ドル富豪はゲイツ氏のような発明家になるとみられ、世界の富が最も集中する米国から生まれる可能性が最も高い。だが別の分析によると、1兆ドル長者はインドや中国のような新興経済体で生まれる可能性があるという。

最新のフォーブス長者番付によると、ゲイツ氏はメキシコの電気通信王といわれるカルロス・スリム・ヘル氏から4年ぶりに王座を奪回したところだが、ゲイツ氏が4月30日に米国証券取引委員会に提出した文書によると、氏はマイクロソフト社の株式460万株を売却しており、時価総額は1億8600万ドル(約190億円)だ。現在保有するのは3億3000万株で、スティーブ・バルマー前最高経営責任者(CEO)より300万株少なく、ゲイツ氏はマイクロソフトの筆頭株主ではなくなった。ゲイツ氏の資産全体からみれば、今回売却した株式は小さな部分を占めるに過ぎないといえる。(提供/人民網日本語版)


中国、東シナ海で周辺国との利権争い

2014年05月09日 12時58分26秒 | 臼蔵の呟き

紛争を軍事衝突にしない。紛争を話し合いで解決する。領土問題は関係国できちんとした話し合いを行い、解決させる。場合によっては国連などが入り、話し合い、調停を行うことも必要かもしれません。

人口の増加、工業化などを進める中国、東南アジア各国はエネルギー資源の確保、食料、資源の確保をめぐって、それぞれの国が政策の重点とした取り組み、主張を行っています。したがって、このようなことが起こることは想定範囲であったはずです。いずれにしても関係国が武力を使って、相手国を威圧する、従わせるような対応は許すべきではありません。

ウクライナ問題、クリミア自治共和国の編入に端を発した、ロシアなどの領土割譲の動きも影響をしているように思います。領土問題は多くの国家、地域で軍事衝突に発展していますし、可能性があります。このような問題を軍事的な衝突とするのではなくて、話し合いによる外交で解決させることを基本とし、急ぐべきです。今回の中国、ベトナムの紛争も、当事国だけで解決できないのであれば、国連が仲介して、関係国、周辺国の協力も要請して話し合いを進めるべきです。また、中国は武力による威圧と一方的な主張、行動を慎むべきです。そのことが、将来的に中国にとっても政治経済によい結果をもたらすだろうことを理解すべきです。

<ベトナム報道記事>

ベトナム外務省は4日、中国海事局が南シナ海に設置した石油リグ「HD981」で掘削を開始すると通告したことに対し、この海域はベトナムの大陸棚と排他的経済水域(EEZ)に属しているとして断固反対するとの声明を発表した。EEZは国連海洋法条約に基づいて設定される水域で、自国の陸地から200カイリまでの領域。

 中国海事局の通告は、今月2日から8月15日までこの石油リグで掘削を行うため、全ての船舶にリグから半径1カイリ以内の海域に侵入しないよう求めている。問題の海域は、リーソン島(南中部沿岸地方クアンガイ省)から119カイリ、ベトナムが領有権を主張し中国が実効支配しているホアンサ諸島(英名:パラセル諸島、中国名:西沙諸島)のチートン島から18カイリの場所にある。

 ベトナム外務省のレ・ハイ・ビン報道官は「ベトナムの領海における外国のあらゆる活動は、ベトナムの許可のない限り不法で価値のないものだ。断固反対する」と強調した。

 この問題に関してペトロベトナムグループ(Vietnam National Oil and Gas Group=PVN)は4日、協力関係にある中国海洋石油に対し、協力の精神に反する行為だとし、直ちに不法な活動を中止するよう求める書簡を送った

<WSJ記事>中国、東シナ海で周辺国と米国の出方を探る

 中国がベトナム沖の紛争海域に巨大な石油リグを運び込んだことによって、米国や近隣諸国の政府が以前から恐れていたことが明らかになった。つまり、中国が領有権を主張する海域の防衛を大幅に強化し、周辺国と米国の出方を探ろうとしているのだ。

 今回、南シナ海での領有権の主張の中心となっているのは、中国の国営石油会社がパラセル(西沙)諸島近くに設けた最新式の石油リグ。ベトナムはこの設置に反対し、海上警察がこれを阻止しようとしていた。リグをめぐるにらみ合いは数日間続き、7日には大きな衝突が発生。ベトナムは、約80隻の中国船が紛争海域に入り、衝突の際にベトナム側の乗組員6人がけがをしたと発表した。海上警察のNgo Ngoc Thu副司令官は8日、現場には多くの船がとどまっており、緊張が続いていると述べた。

 両国の当局者はいずれも、相手の船が体当たりしてきたと主張している。中国外務省の当局者は、船を退去させるようベトナムに要求した。

 このリグはありきたりのリグではない。高さ138メートルのプラットフォームは中国初の深海リグで、水深3000メートルでの作業ができる。2年前に鳴り物入りで完成したこのリグは、中国石油業界にとっての「戦略兵器」と言われる。このリグは、石油開発の大幅な拡大という以前からの中国の目標を実現可能にすることで、石油開発をめぐる状況を一変させるものになる可能性がある。 シンガポール国立大学エネルギー研究所のフェロー、クリストファー・レン氏は南シナ海での中国の石油掘削について、「その意図は以前からあった」とし、「今やそれができるようになったということだ」と述べた。

 しかし、安保問題のアナリストは、紛争は石油リグ、それに南シナ海の天然資源の開発をめぐって起きているが、問題はこの対立がもたらす結果がどのような先例として残るかであり、中国の周辺国と米国が、中国に対し紛争海域の戦略資源をほしいままにすることを認めるかどうかだ。

 専門家らは、アジアの一部の同盟国がオバマ政権のアジアでの軸足がぐらついていると不安を抱いている時に、中国は、米国がこれらの同盟国に対する支援の約束を守るかどうかを試しているのだと指摘した。

 オバマ大統領は4月のアジア歴訪で、同盟国を安心させることに力を入れた。日本に対しては、中国も領有権を主張している東シナ海の諸島も安保条約のカバー範囲に入ると明言し、フィリピンでは、同国の南シナ海での領有権紛争まで支援するかどうかは明確にしなかったものの、米国の軍事支援は「鉄壁」だと強調した。ただ、かつての敵で、中国の台頭への懸念から安保、外交関係を強化してきたベトナムへの訪問は今回の旅程には入っていなかった。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)のアーネスト・バウワー、グレゴリー・ポーリングの両氏は、中国がオバマ大統領のアジア歴訪の直後にリグを設置したという事実は、ベトナム、(東南アジア諸国連合=ASEAN)諸国、それに米国の決意を試そうとするものだと書いている。

 中国はこの数十年間、南シナ海のほとんどについて領有権を主張している。アナリストらは、ここを掌握しようとする同国の意図は変わっていないとしている。さらに、習近平国家主席が誕生してからは、中国政府はより攻撃的にその能力を見せつけようとし、周辺国との紛争を激化させている。これは米政府の大きな懸念を招いている。

 シンガポール国立大のレン氏は「これは中国政府の新しいスタイルを示唆している。行動でその主張を実現しようとしている」と語った。

 ハノイを訪問した米国務省のラッセル次官補(東アジア・太平洋担当)は、米国は「いかなる危険性をも非常に懸念している」とし、領有権紛争の当事国に自制を求め、南シナ海については米国はいずれの側にもつかないと述べた。

 南シナ海では6カ国が一部またはほぼ全域に対し領有権を主張している。紛争海域であることから完全な探査はできていないが、エネルギーアナリストは海底には大量の石油・天然ガスがねむっていると見ている。

 中国外務省国境・海洋事務局の易先良副局長は8日、記者会見で、リグ設置の決定は数年前からの中国の通常の探査活動の一環だとし、「ベトナムの破壊的な行為に大きなショックを受けている」と述べた。

 同副局長は、3日から7日の間にベトナム船は171回衝突してきたと指摘。リグは中国海洋石油(CNOOC)が所有している。同副局長は、衝突で中国側に負傷者が出たかどうかや、何隻の中国の船がいるかは明らかにしなかった。ただ、中国海軍は関係していないという。


多国籍軍への自衛隊支援活動の拡大を検討

2014年05月09日 10時25分36秒 | 臼蔵の呟き

安倍、自民党極右政権の独裁、暴走は歯止めを失ったような政治状況にあります。昨日は、国民投票法が日本共産党以外の賛成で、委員会可決がされました。この法律は憲法の改正手続きに関する法律であり、憲法改正を前提としている点で、自民党、公明党、民主党、みんなの党、結いの党、維新の会、生活などは憲法の改正に賛成、賛同していることが分かります。この憲法改正は憲法9条の改定、国民主権を制限すること、基本的人権を骨抜きにし、自立自助を基本とする国にすることを目的としています。その点では、賛成している与党、民主党、維新の会などは現行憲法の改悪を通じて、戦争できる国への改悪、自衛隊の国軍化・海外派兵、そのために戦争への世論形勢に必要な体制作り、財政確保などを目的としています。

その改悪を前提として、前段階で自衛隊を海外派遣し、武器使用を可能にする策動を行っています。これらの動きは、一連の安倍、自民党政権の動きと連動をしています。このような憲法が禁じる行為を既成事実化し、憲法、法律の解釈を時の政権が勝手に行う政治を常態化しようとしています。このようなことが許されれば、憲法の憲法としての価値、法的な役割が完全に否定されます。また、憲法が権力者の行動を規定、規制していることも全く形骸化してしまいます。

このような蛮行を、一内閣が勝手に行うことを黙って見過ごすことは許されることではありません。その行動を容認し、支援する公明党、民主党、維新の会、みんなの党、結いの党、生活の政治責任は問われるべきだし、断罪されて当然です。国民多数は、憲法改正を望んでもいなければ、自衛隊の海外派兵、武器使用を要求しているわけでもありません。衆参選挙で議席数が多数になったと言うことと、何でも出来るとした傲慢な独裁政治を許容したわけでもないことをはっきりされることが必要です。その意味では、国政選挙を早急に行い、このような政権、政治に対する国民的な審判を突きつける必要があります。

<琉球新報社説>多国籍軍支援拡大 9条破壊は許されない

 またしても憲法9条が骨抜きにされようとしている。
 安倍政権は国連決議に基づく多国籍軍への自衛隊支援活動の拡大を検討している。憲法9条は海外での武力行使を禁じているが、従来の解釈を変更することで支援拡大を可能にするという。

 争への深い反省から日本国憲法は平和主義を基本原理に据えている。憲法9条の解釈は国会で議論を繰り返して定着した。国家の基本原理は、一内閣の解釈変更で覆せるほど軽くないはずだそもそも法の解釈権限は裁判所にある。自衛隊の海外展開に歯止めがきかなくなるような憲法「破壊」は許されない。

 これまで多国籍軍への燃料補給や輸送、医療行為など後方支援は、「武力行使との一体化」に当たると解釈され違憲としてきた。安倍政権は補給活動や医療支援は「一体化」に当たらないと解釈変更する考えだが、戦闘行為と後方支援が一体であることは常識だ
 事実上の戦地に初めて自衛隊を派遣したイラク戦争は、憲法9条に触れないよう「非戦闘地域」に限定したが、強引な論法だった。当時の小泉純一郎首相は「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域」と強弁したが、今回の解釈変更はそれ以上の強引さだ。まさに戦地への派遣となる。

 新解釈は安倍晋三首相の語る「積極的平和主義」なのだろうが、野田聖子自民党総務会長が指摘するように、「人を殺す、殺されるかもしれないというリアリズム」を語るべきだ。例えば70年前、沖縄近海で、兵士や補給物資を運んだ輸送船が米潜水艦に次々と撃沈された。その中に集団疎開学童を乗せた対馬丸も含まれる。「積極的平和主義」が何をもたらすのかは、沖縄の史実が物語っている。
 首相の政治手法は重大な問題をはらむ。憲法解釈を首相の私的懇談会で変更し閣議決定するやり方は、国会軽視であり立憲主義の否定である。
 政策決定過程から議会を排除する手法は、ファシズムの政治体制の典型的な特徴だ。ナチス・ドイツは全権授与法により政府が議会を無視して法律を制定した。かつて日本は国家総動員法により政府が必要と判断すれば議会を無視して人と物を総動員したその過ちを想起したい。
 主権者である国民が首相に白紙委任したわけではないことを、安倍氏は肝に銘じるべきだ。


核燃料サイクルのまやかしと過疎化問題

2014年05月09日 06時00分35秒 | 臼蔵の呟き

この記事が報告するように、過疎化する地域に、誰もが嫌がる原子力関連施設を立地させ、その受け入れ自治体に税金と原発マネーをジャブジャブつぎ込み、麻薬のごとく原子力関連資金漬けにされ、自治体、住民は心の中では事故がなければ、放射能の汚染、癌発生などのリスクに見舞われないことを願いながら、生活をすることに習慣化してゆきます。その結果、福島県、福島第一原発のように事故による放射能汚染、居住地を追われ、放射能による被爆を恐れ、全国に離散、避難を強いられました。このような危険性を福島第一原発以外でも、原子力関連施設立地地域は持っています。そのことを憂い地域住民は反対運動、自治体の中での議論がされてきました。

自民党政権、電力会社、原子力関連企業群は、投資による関連産業の雇用、自治体への資金支援、財政上の特例措置などを講じて、推進派を擁護し、反対派を封じ込めてきました。その結果、地域には賛成派(多くは利益享受者たち)、反対派の分断と対立が引き起こされました。このことは原子力関連施設立地地域ではほとんど同じ構図が展開されました。立地自治体に分断をもたらす政策提起をした自民党、自民党政権、電力関連産業は、その外側で高みの見物です。

一旦事故が起きれば、放射能被害は人間がコントロールできないくらい甚大な被害を周辺地域にもたらすことは福島第一原発事故であきらかになりました。しかし、受けいれた賛成派は、原子力関連施設、事業からもたらされる資金、税収、雇用をたてにその呪縛、麻薬から逃れることを嫌がります。その延長線上に、原子力関連産業という打ち出の小槌から離脱する地域産業、地域作りの志向、検討を全く諦めます。そのことは福島第一事故で被災した立地地域、立地自治体すべてに共通していました。中には、補助金、税収を確保するために原子力発電所を次々と建設する自治体もありました。

人間にとって、立地自治体以外の住民、自治体から反対されるような危険な原子力関連産業、核廃棄物再処理などが半永久的に稼動し続けることなどはありえるはずがありません。国、自治体の役割は、安心で、安全な環境、地域自治体が展望を持って、存続し続けられる政策提起をするのは当然のことです。危ないから、危険性があるから大都市から離れた地域に建設するなどは、過疎地域蔑視もはなはだしいことです。また、そのような危険な廃棄物処理をしなくても良いように原子力発電所の再稼動を止めるべきです。地域の分断をもたらす政策も止めるべきです。

核燃再考 変貌30年  六ヶ所村のいま 平穏、核と引き替え<河北記事>

 青森県下北半島には東通原発、建設中の大間原発、使用済み核燃料再処理工場など、全国に例のない数の原子力関連施設が集中立地する。核燃料サイクル施設の立地申請から30年たつ。40年前の原子力船「むつ」の歴史を起点に国のエネルギー政策に翻弄(ほんろう)されてきた青森で、核燃問題を考える。

◎人間関係 見えぬ壁なお

 青森県六ケ所村はヤマセの通り道だ。まさかり型の下北半島の柄の部分に位置し、夏に冷たく湿った風が吹く。かつては村民自身が「鳥も通わぬ」と呼ぶ荒涼な土地だった。そこに今、ショッピングモールやコンサートホールが立つ。
 平日の昼、幼子が母親と手をつなぎ、楽しそうに歩く姿があった。建設関連会社の社長種市治雄さん(47)は「核燃が来る前は、そういう平凡な風景も見られなかったんですよ」と話す。

<盆と正月だけ>
 人口は約1万1000人。数字は30年前とあまり変わらないが、昔は基幹産業がなく、子どもたちは中学を卒業すると集団就職で上京し、父親は出稼ぎに出た。一家全員がそろうのは盆と正月だけだった。
 今、村には使用済み核燃料再処理工場やウラン濃縮工場など、建設中も含め日本原燃の核燃料サイクル施設がひしめく。
 種市さんの会社は、再処理工場の保守管理などを手掛け、売上高4億円のうち約7割を原燃関連が占める。従業員は59人。種市さんは「将来も現状維持が目標。社員がいつまでも笑って暮らせれば、それでいい」と生活の安定を一番に考える。

<原燃城下町へ>
 1984年4月20日、電気事業連合会(電事連)が青森県に核燃サイクル施設の立地を申し入れた。その日を境に、村は原燃城下町へと変貌していく。激しい反対運動が起きたが立地は進み、県内で常に下位だった村民の所得水準は急上昇。2006年度には、雇用者所得や企業所得の合計を人口で割った1人当たりの村民所得が1558万円に達し、県内の過去最高を記録した。以来、県内1位を維持している。
 平穏に見える今の村の姿を、昔の闘争を知る泊地区の新聞販売店の松下志美雄さん(58)は、複雑な表情で眺める「人間関係の修復までに10年かかった。見えない壁は今もある。昔、怒鳴り合った者同士が会話すると、顔が引きつっている」
 漁業中心の泊地区は、核燃をめぐり賛否が真っ二つに割れた。親族、幼なじみ同士がいがみ合い、平穏だった漁師たちの人間関係は崩壊した。

<「想像できぬ」>
 それから30年。漁港で機動隊と激しく衝突した知人は、原燃の警備関係の仕事に就いた。その姿を見た松下さんに、知人は「過去のことは言うな」と、ばつが悪そうに語ったという。
 松下さんはしみじみと話す。「1年を通して、家族が一緒に生活できるということが当たり前になった。核燃に反対とか、賛成とか、そういう議論はもういい。核燃サイクル施設がなくなることは、今は想像できない」

使用済み核燃料再処理工場の中央制御室。着工から21年たつが、完成時期は不透明だ.

<地元採用7割>
 青森県六ケ所村の日本原燃本社で4月1日、入社式が開かれた。
 新入社員を前に、川井吉彦社長は「世界最高の技術に挑戦し、世界の六ケ所を目指そう」と熱っぽく語った。式後、弘前市出身の女性新入社員(28)は「青森に根差した企業で働きたかった。エネルギー関連の仕事はやりがいがある」と目を輝かせた。
 地元では「原燃に入れたらエリート」と言われる。ことしの新入社員75人のうち、49人が県出身だった。原燃の社員数は関連会社を含め5569人(昨年4月現在)。県出身は約7割を占める。
 雇用の受け皿となり、地域に多くの仕事をもたらす県内最有力企業の原燃。事業の軸となる核燃料サイクルについて、政府は4月に閣議決定したエネルギー基本計画で、政策の推進を明示した。
 脱原発の流れからは後退した。サイクル推進派は安堵(あんど)する内容となったが、「実は不安な文言がある」と青森県幹部は指摘する。
 核燃サイクル政策の項目の「対応の柔軟性を持たせる」というくだりだ。「柔軟性」には、使用済み核燃料を全て再処理せず、一部を地中に直接処分することが国の念頭にあるとも解釈できる。
 全量再処理という大原則が見直されれば、青森県が大量に抱える使用済み核燃料は「核のごみ」と化す。県幹部は「将来の再処理中止に含みを持たせたのではないか」と警戒する。

<完成20回延期>
 サイクルの要となる再処理工場はトラブルが続き、完成時期が20回延期された。稼働しても使用済み核燃料から抽出される年8トン(フル稼働時)のプルトニウムの使い道が、今はない。ウランと混ぜたMOX燃料を一般の原発で使うプルサーマルは、福島第1原発事故の影響で実施の見通しが全く立たない。
 使途の決まらないプルトニウムの増加について、核拡散を心配する米政府が強い懸念を示す。原燃の吉田薫報道部長は「原子力委員会で、電気事業連合会は再処理開始までにプルトニウムの利用計画を策定、公表すると報告している。利用目的のないプルトニウムが増えることにはならない」と話すが、国際的な理解を得られるか不透明だ。

<「県は撤退を」>
 原発の運転期間は原則40年。各地で老朽化が進み、新規建設は難しい。一方で、核燃料サイクル政策が見直される気配はない。舩橋晴俊法政大教授(環境社会学)は1998年の青森県と原燃、六ケ所村の覚書が、再処理路線継続の背後にあると指摘する。
 覚書は、再処理が困難になった場合、使用済み核燃料は県外に搬出するという内容。保管場所が限られた各原発に、燃料が送り返されることになれば混乱は免れない。
 舩橋教授は「青森は核燃のしがらみに取りつかれている。県は自然エネルギーの推進など、政策立案能力が求められる局面にあることを、もっと自覚する必要がある」と警告し、サイクル政策からの撤退を勧める。