小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

ギリシャはどこまで「ノー天気」なのか。財政立て直し策は一つしかない。

2015-07-02 08:15:21 | Weblog
 ギリシャ政府の「ノー天気」さには、呆れるしかない。すでにギリシャの富裕層は金融資産を海外に移転しているのに、やはり「ノー天気」な一般国民は銀行が封鎖されるまでギリシャの危機的状況に対応してこなかった。
 先月末が期限だったIMFへの返済ができなかった。ギリシャが発行している国債は紙切れになった。つまり企業で言えば「倒産」状態である。厳密に言えば企業が発行した小切手や手形が落とせなくなった場合、すぐ「倒産」というわけではない(※日本の場合)。だが続けて2回目も小切手や手形が落とせなかったら、銀行は当該企業との取引を一切停止する。つまり現金でしか当該企業は取引先との決済ができなくなる。その時点で「倒産」という事態になる。取引先企業との現金決済もできなくなるからだ。
 ギリシャが置かれていた状況とは、そういう事態だった。ギリシャのチプラス首相は、何とかユーロ諸国の支援を引き出すため、まったく無意味な「努力」を重ねてきた。だが、これまでユーロはギリシャの財政破たんを回避しようとギリギリまで支援を続けながら、その一方ギリシャ自身の自己努力を要請してきた。具体的には社会福祉の見直し(年金支給年齢の引き上げ・年金額の減少)、公務員(ギリシャ国民の2割が公務員だった)の削減と高賃金の見直しなどだった。これがギリシャに突き付けられていた「緊縮財政」の要求だった。他にも公共投資の削減なども求められていたが、公共事業をストップするとギリシャ経済が根本から崩壊しかねないので、ユーロ諸国はそこまでを絶対条件にするつもりはなかったと思う。
 が、ギリシャ国民は緊縮財政による財政立て直しより、「いざとなったら、ユーロ諸国が何とかしてくれるだろう」という、言うなら子供が親に対する「おんぶにだっこ」を期待していたようだ。が、ユーロ諸国も実はそんなゆとりはなくなっていた。リーマンショック以降の「失われた20年」は日本だけではなかったのだ。日本の場合は一時的にITバブルによって景気回復の兆しもあったが、ヨーロッパにはIT技術が育っていなかった。ユーロ圏ではITバブルは生じなかった。
 その理由について簡単に触れておきたい。産業革命の発祥の地はイギリスだった。きっかけはジェームス・ワットが発明した蒸気機関車だったとされている。蒸気機関車は確かに産業革命の主役にはなったが、はっきり言って蒸気機関車はヨーロッパには向いていなかった。そのことを歴史家たちはだれも指摘してこなかっただけだ。
 なぜか。ヨーロッパの水は石灰分を多量に含み、その水を石炭で沸騰させて蒸気をつくり機関車を動かす原動力にしようとしたのだが、水に含まれている多量の石灰分は残念ながら蒸発してくれない。だからヨーロッパではせっかくの蒸気エンジンがすぐボロボロになってしまうのだ。
 ヨーロッパの産業がIT革命の恩恵にあずかれなかったのは、同じ理由だ。IT技術の根幹をなすのは、言うまでもなく半導体技術だ。半導体を作るには純水が不可欠である。不純物を大量に含んだ水から純水を作るのは技術的にもコスト的にもきわめて不利になる。
 世界で最初に半導体技術が発達した米シリコンバレーはきれいな水に恵まれていた。半導体技術で一時は世界ナンバー1になった日本も純水を作るのに恵まれた国だった。いま日本を抜いて世界ナンバー1の半導体技術を誇る韓国も水に恵まれていた。そのことは、なぜ日本の米がおいしいのか、カリフォルニア米も日本米に匹敵するくらいおいしいのか、はその一点にある。韓国でコシヒカリを栽培したら、新潟産に匹敵するくらいのおいしい米が作れると思う。
 話がちょっと横道にそれたが、ヨーロッパでは絶対おいしい米は作れない。同様に半導体技術も育たない宿命にあった。イギリスの食事がまずいというのも、ドイツやフランスは水の代わりにビールやワインを飲む習慣が生まれたのも水質のためだ。
 現代の産業は基幹部分を半導体技術に頼っている。ヨーロッパが世界の産業発展から遅れだしたのは「水」という天然資源に恵まれなかったためだ。韓国の朴政権が反日感情を煽りだしたのは、自国の半導体技術が世界の産業発展を担っているという自負の表れでもある。そのことはすでに何度もブログで書いてきたので、これ以上は繰り返さない。ギリシャの問題に戻る。
 ギリシャの国内総生産(GDP)は日本の神奈川県1県だけの総生産にも劣る。主な産業は観光と農業だ。資源はない。農業もオリーブや綿、葉タバコなど世界の主要農産物とは言えない。ただ世界でもまれな立地国ではある。ギリシャは地中海と黒海につながるエーゲ海に面し、海を挟んで西欧、東欧諸国、さらに中東諸国とも面している。いうなら世界最大といってもいいほどの軍事的要衝地域にある。その利点をギリシャ政府はなぜ活かそうとしないのか。
 はっきり言えば、アメリカにとってはのどから手を出したいほどのおいしい国なのだ。現代世界で最強の同盟関係にあるのは言うまでもなく米英だ。アメリカにとってイギリスに次いで大切な国はイスラエルだ。イスラエルがすでに核を保有しているのは世界の常識だが、アメリカもイギリスもイスラエルの核は不問に付してイランの核疑惑や北朝鮮の核だけを非難している。フェアなやり方とは言えまい。
 アメリカがそういうスタンスをとるなら、ギリシャにとっては「タナボタ」的チャンスがある。ユーロ諸国がギリシャを見捨てるというなら、アメリカと同盟関係を結べば問題は一気に解決する。はっきり言ってしまえば、ギリシャがアメリカの準州になればいい。アメリカがギリシャに軍事拠点を自由に作ることができれば、その経済効果だけでもギリシャの財政破たんは一気に解決す
る。一方アメリカにとっては頭痛の種であるイスラム国の反米活動に大きなにらみを利かせることができる。その代償として米産業界がギリシャの産業復興に協力してやれば、ギリシャは「観光・農業」立国から工業立国に脱皮できる可能性も生じる。しょせん世界を動かしている「パワー・ポリティクス」とはそういうものだ。
 少なくとも、ギリシャが「ヨーロッパがギリシャを見捨てるなら、アメリカと同盟関係を結ぶぞ」と言えば、ギリシャを取り巻く経済環境は一変する。「緊縮財政」一本槍でギリシャを責め立てるのではなく、ギリシャの経済復興のために、金融支援だけでなくあらゆる技術的、あるいは産業進出などの支援に本格的に乗り出さざるを得なくなる。ヨーロッパ諸国も一枚岩ではない。イギリスとドイツを除けば、反米感情を濃厚に残している国が少なくない。イギリス人でさえアメリカ文化に汚染されることを嫌い、テレビ放送方式もアメリカが開発したPAL方式を採用せず、娯楽番組も一切拒否してきた。マードックが衛星放送でエンターテイメント番組をばらまきだすまでは…。
 よく知られている話だが、フランス人の反米感情は並々ならないものがある。フランスをドイツの占領下から救ってくれたのはアメリカを中心とする連合国軍だが、なぜかフランス国民はアメリカを嫌う。「自由の女神」を贈ったのはフランスだったのだが…。
 そうしたヨーロッパ諸国のそれぞれの国民感情を利用すれば、ギリシャは最後の切り札を持っているはずなのだ。が、その切り札を使わなければ、ギリシャはデフォルトへの道を進まざるを得なくなる。ギリシャ問題について、日本のジャーナリストはどうしてそういう発想で分析できないのか。何のために「言論と報道」の自由を持っているのか、私には想定外である。




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