小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

橋下氏は出直し再選挙で大勝しても、大阪都構想が前進するわけではない。政治家としての資質が問われる。

2014-03-10 06:48:55 | Weblog
 大阪市長選が「火を噴いた」と思っているのは、前市長の橋下徹氏だけかもしれない。昨日(9日)、市長選が告示され、橋下氏を含む4人が立候補したが、肝心の大阪市民はしらけきっているようだ。朝日新聞と朝日放送が大阪市民を対象に世論調査した結果を見れば、一目瞭然としか言いようがない。市長選に賛成しているのは34%にすぎず、56%は反対だという。他のメディアの世論調査も似たり寄ったりの結果だろう。そのうえ橋下氏自身への支持率も支持が46%、不支持が41%と「橋下人気」はまだ完全に衰えたとは言えないが、橋下氏の支持率が50%を切ったのは初めてという。
 自民、民主、公明の各党は「大義のない選挙」として立候補を立てない方針を決めているが、事実上対立候補がいない選挙で橋下氏が大勝したとしても、おそらく投票率は市長選(大阪市だけでなく、全国すべての政令都市での)における史上空前の最低を記録するだろう。それで市長に再選されたからといって、橋下氏の「大阪都構想」が大阪市民の支持を得たことになるのだろうか。
 そもそも「大阪都構想」は橋本氏のオリジナルな構想ではない。すでに1953年(昭和28年)に大阪府議会が「大阪産業都建設に関する決議」を賛成多数で可決したのが発端である。このとき大阪府・市を廃止して大阪都を設置し、市内に都市区を設置するとされた。
 また2000年(平成12年)には太田房江大阪府知事(当時)が大阪府と大阪市を統合する大阪新都構想を唱えたが、実現に至らなかったという経緯もあった。
 これに対し、橋下氏の大阪都構想は、大阪市、堺市、周辺市を廃止して、公選制の区長を置く特別区を設置し、東京都(23区)に対抗できる大規模自治体を作ろうというものである。そもそも、その発想の原点は氏が大阪市長に当選したのち、大阪府と大阪市の二重行政の無駄に気付いたことであった。橋下氏は非常に分かりやすい例として、近接した場所に大阪府と大阪市の公立図書館があるなど、二重行政の無駄が多すぎると主張した。その主張には大阪府民も大阪市民も多数が支持し、「大阪維新の会」発足の原点になったという経緯がある。
 それならそれで、まず府知事の権限で二重行政を解消すればよかった。ところが、橋下氏は府知事の椅子を任期半ばで投げ出し、大阪市長選に立候補して大勝し、市長になった。二重行政を解消するには、たとえば橋下氏が例に挙げた公立図書館でいえば、大阪府立の図書館を廃止して、大阪市に移管すればそれで済んだ話である。ところが府議や府庁の職員が「うん」と言わない。自分たちの仕事がなくなり、クビになるからである。そんなことは、やろうとする前から分かり切った話であろう。
 で、大阪府知事の椅子を大阪維新の会の松井一郎幹事長に禅譲して、橋下氏
自身は格下の大阪市長に就任することにした。そこで橋下氏は今度は逆に大阪市立の図書館を廃止して大阪府立図書館に統合しようとしたかというと、それもやらない。
 大阪市職員組合といえば、全国の政令都市でも名うての「市税つまみ食い」労組である。「仕事が増えるのもいや、減るのもいや(仕事がなくなれば居場所がなくなるため)」を権利と心得ているような連中である。しかも市議たちは多かれ少なかれ、職員の既得権益を保護することで市議の椅子を確保してきた連中でもある。そういう大阪市の現状を理解せずに大阪市長になって、大阪府長としては実現困難だった「大阪都構想」に弾みをつけようとしたのが、そもそもの間違いだった。
 こういった大規模構想を実現するには、橋下氏は絶対に大阪府知事の椅子を手放すべきではなかったのだ。そして大阪市の市長選に松井氏を立て、さらに堺市や周辺都市の市長選に大阪維新の会の立候補者を立て、大阪府民の理解を得ながらことを進めるべきだった。堺市の住民が「堺」の歴史的地名に誇りを持っているのであれば、堺中央区、堺東区、堺西区、堺南区、堺北区などと堺の地名を残した特別区にすれば堺市民も納得したであろう。そうした大阪都構想を大阪府民にわかりやすい形で説明し、「大阪都」に組み入れるべき市の市長選に大阪維新の会から立候補者を立てて、それぞれの市民の理解を得ながら都構想を進めていくのが政治の王道というべきものである。 
 橋下氏は健康上の理由から(とてもそうは見えないが)、何が何でも大阪市議会で都構想の支持を取り付けて一気に都構想を実現しようとしたのかもしれないが、こうしたやり方は例えば会社組織で言えば部長会議の決議をもってして役員会の決議にしてしまおうというような類で、そんなことは子供にも「無理だ」ということがわかりそうなものだが。
 橋下氏の「大阪都構想」は、はっきり言って先走りしすぎている。まず二重行政の無駄を省くために、大阪府の権限と特別区の権限を明確に定め、二重行政の無駄を徹底的に排除する仕組みを提案すべきであった。その議論の結論を1年や2年で出そうとしたところにそもそも無理があったと言えよう。 第一、議論すべき場所が間違えている。まず府議会で徹底的に議論し、府民の意識を図りながら府内各市議会の理解を得ていくというのが道筋というものである。
 橋下氏は大阪市議会で何を決めようというのか。大阪都構想を実現するには大元の大阪府、横並びの府内各市町村の、すべてとまでは言わないが大半の同意を取り付ける必要がある。大阪市だけが先走りしても、現に堺市などがソッポを向いている状況では動きが取れないではないか。たとえば伊丹市の市長選挙では大阪維新の会から出馬した新人が負けており、二重行政の無駄をなくすということと都構想がイコールだとは、多くの大阪府民が思っていないことを図らずも証明してしまった。
 まず大阪市が抱えている諸問題を解決すること、とくに府との二重行政による無駄を排除し、余った職員は大阪市が未解決の問題(たとえば防災対策や子育て環境の整備など)の抜本的解決に当たらせることを優先すべきだろう。
 橋下氏が横山ノック氏のような単純なタレント出身者とまでは決めつけないが、タレント業はテレビの視聴率を最優先しなければ成功しない職業。同じ手法で市民に都構想の是非を問うとして辞職したうえで、再選挙に臨んだ以上、投票率が史上最低を記録したら、我が構想は市民から受け入れられなかったと判断し、潔く政界から退くのが筋だ。選挙における投票率は、テレビの視聴率と同じくらいの重い意味を持つのだから。

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