5月3日に『東京オリンピック――開催か、中止か? いやそもそも開催できるのか』と題したブログをアップしたが、開催・中止を巡ってメディアや世論がにわかにかまびすしくなってきた。
きっかけになったのは、血液の癌と言われる白血病に侵されながら、闘病生活を経て復活した水泳選手・池江璃花子選手が、7日、会員制交流サイトを通じてオリンピック辞退や反対を求めるメッセージが少なからず寄せられていることをツイッターで明かし、メディアが大きく取り上げたことによる。
●「内定」「最有力候補」の選手たちが苦しい胸の内を表明
池江選手はツイッターで、こう苦しい胸の内を訴えた。
「この暗い世の中をいち早く変えたい。そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです」「オリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然のことだと思っています」「持病を持っている私も、開催されなくても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活を送っています。私に反対の声を求めても、私は何も変えることはできません」「私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています」
池江選手のこの心の叫びは多くの国民の心に響いたようだ。池江選手には「頑張れ」「屈するな」といった励ましのメッセージが多く届いたようだ。それでも「オリンピック中止」を求める声は日増しに強くなっている。政府や組織委の度重なる失態や海外メディアからの強行開催姿勢に対する厳しい批判が寄せられるようになったからでもある。
池江選手はまだ若いから病を克服すれば次のパリ大会出場チャンスはあるが、年齢的に最後のチャンスになるだろう内村航平選手にとっては辛い状況だ。16日のNHK杯で鉄棒代表の座を確定したい内村選手は取材に応じて「まだ僕は東京五輪の代表でもないので、あるかないかを議論する立場でもない。選手で決められることでもない」「僕は体操選手なので体操をすること、練習すること、試合があれば試合をすることが仕事。それができなければ、そもそもそこに立つこともできない。議論をしている暇があったら練習しようと日々過ごしていたら、勝手にその立場になった」(中日スポーツ)と、胸の内を語った(※これはNHK杯直前のコメント)。
こうした状況の中で、男子テニス代表選手で、自身もコロナに感染した錦織圭選手が10日、海外の試合の後「死者がこれだけ出ているということを考えれば、死者が出てまでも行われることではない」とコメント、波紋を呼んだ。
この錦織発言に噛み付いたのが、もはや作家生命を失ったと同然の元都知事・猪瀬直樹氏だ。11日、ツイッターで錦織氏の発言を取り上げ、「僕は錦織選手のファンだが、テニスにはウインブルドンなど四大大会があって、五輪は昔から重要視されていない、という事情が背景にあってのこの発言は、五輪にすべてをかけている他のスポーツ選手に対してフェアとは言えないと思う」と批判したのだ。
私は先述のブログだけでなく、東京オリンピック開催について何度も書いてきた。今年に入ってからも、2月22日には『東京オリンピック――やるべきか、やらざるべきか』を、3月22日にも『緊急事態宣言解除の目的は東京オリンピックのためか?』を書き、「オリンピックありき」の政治を批判してきた。
猪瀬氏の主張に百歩譲っても、錦織選手が「俺にはオリンピックよりカネが稼げる大会がいっぱいある。だから生命の危険を冒してまで出場するつもりはない」と言ったのであれば、錦織発言の無神経さを批判してもいいだろう。が、錦織選手はそうしたエゴで物申したわけでは、多分ない。少なくとも錦織選手の発言から、そういう感じは受け取れない。
そもそも猪瀬氏は日本人についての鋭い考察を、様々な事柄を題材にしながら書いてきたノンフィクション作家だった。東京オリンピック招致を、石原慎太郎都知事時代の副知事として一緒に進めてきた人物でもあり、2013年9月8日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されたIOC総会で2020年のオリンピック開催都市が東京に決まったときの都知事でもある。このIOC総会で最後のプレゼンテーションを行った滝川クリステル氏の「お・も・て・な・し」発言はその年の流行語大賞に選ばれた。このときの東京都知事は猪瀬氏である。
さて今年東京オリンピックを強行開催する場合、海外観光客は「お・こ・と・わ・り」するにしても、海外選手団を「新型コロナウイルス東京型」で「おもてなし」するつもりなのか。もっとも、猪瀬氏は2013年12月、「収賄or借金」問題で都知事職を辞任しているが…。
●コロナ禍は予想できなかっただろうが、死者が出かねない真夏の開催条件を猪瀬都知事(当時)が知らないわけがない
そもそも、2020年の東京オリンピック開催が決まったときの猪瀬氏が、都知事として真夏の7月下旬から8月にかけて開催することが最初からエントリーする際の条件だったことを知らなかったわけがない。IOCが多額の放映権目当てに、米テレビ局のNBCの「真夏開催」条件を丸呑みしてエントリー条件にしていたことは、立場上、確実に知っていたはずだ。
猪瀬氏がついていたのは、真夏開催が明らかになって「死人がでるぞ」と反発の声が国内に巻き起こったのは、彼が都知事を辞任した後だったことだ。小池都知事の時、築地市場の豊洲移転問題で大騒ぎになっていた時期、実は東京都庁に殺到した苦情の電話はオリンピックの開催時期についてだった。石原氏と二人三脚でオリンピック招致運動を繰り広げてきた猪瀬氏が、オリンピックがアスリート・ファーストの大会ではなく、商業主義・カネまみれの「IOCの、IOCによる、IOCのための」大会に変貌していたことに気が付いていなかったわけがない。言うなら、バッハの掌の上で「詐欺」の片棒を担いできたのが猪瀬氏。自分のカネにまつわる疑惑で辞職に追い込まれていなかったら、東京オリンピック利権にありついていたかもしれない人物だ。
はっきり言って、テニスはサッカーとともに、世界中で最も盛んなプロスポーツ。だから錦織選手ではなくても、ジェコビッチなど一流選手はコロナ・リスクまで冒してまでは絶対に日本には来ない。オリンピックの金メダルに異常なほどの名誉心を抱いているのは日本人くらいで、それが証拠に国際サッカー連盟(FIFA)は明らかにオリンピックよりワールド・カップのほうを上位に位置付けている。FIFAがオリンピックのサッカー試合の出場者に年齢制限を課していることを、猪瀬氏も知らないはずはないだろう。
バスケットボールでも、アメリカで活躍している八村塁、渡邊雄大、馬場雄太選手などの候補選手は内定が出れば日本チームの一員として出場する可能性が高いとみられているが、プロバスケット・リーグが人気のアメリカの一流選手はまず来ない。野球も同様。日本にオリンピックのために来る海外の一流アスリートは、プロ化されていない陸上や水泳などの選手だけだ。また日本人選手が活躍しそうな競技には日本人も関心を持つが、有力な選手がいない競技には関係者を除いてほとんどの国民はそっぽを向く。
実際、オリンピック開催について声をあげだしたアスリートが続々現れ始めた。たとえばラクビー7人制の女子代表候補の中村知春選手は4月23日、ツイッターで「東京オリンピック・パラリンピックをやりたい、と声を大にして言えないのは、それはアスリートのエゴだとわかっているから」と、忸怩たる思いを吐露している。
五輪に向けてのテストイベントが国立競技場で行われた5月9日、会場外からオリンピック中止を求めるシュプレヒコールが巻き起こったとき、女子1万メートル代表に内定している新谷仁美選手は報道陣に感想を聞かれ、「彼らも国民。私たちアスリートは国民の理解と応援、サポートがあって成り立つ職業だと思う。無視して競技するだけなら、それはアスリートではない。応援してくれる方たちとだけ向き合うのでは、胸を張って日本代表とは言えない」と答えた。重ねて報道陣から池江選手に対するバッシングについて聞かれ、「いや、苦しいですよ。正直、今年に入ってからはやっぱり振る舞い方を考えています。五輪開催に関して、命より大事なことはないので、命を優先して考えてほしいという思いもあります。ただアスリートとしてどういう答えが望ましいのかというのはわからない」と、戸惑いを隠さなかった。
女子テニス代表が決定している大阪なおみ選手も「オリンピックは開催してほしいとは思っている」としたうえで、「もしオリンピックが人々を危険にさらすのであれば、そして人々が開催を居心地悪く感じているのであれば、私たちは今すぐ議論すべきです」と語った。
いみじくも猪瀬氏が錦織選手の発言にクレームを付けた理由を改めてこうしたアスリートたちのオリンピックへの向き合い方と突き合わせて考察すると、自らの仕事への向き合い方を反映しているとしか思えない。ま、真夏の東京にオリンピックを招致した人らしい感覚だということが分かるエピソードだ。
●一見、感染者数が少ない日本で、なぜ緊急事態宣言拡大や医療崩壊状況が生じているのか
これまでも何度も述べてきたように、日本人はなぜかオリンピックに特別な感情を抱いている。「世界が一つになる大会」でもないし、「平和の祭典」でもないし、まして「スポーツの世界最高の大会」でもない。プロ化されていない競技にとっては「世界選手権」より上位に位置するが、プロスポーツが盛んな競技にとっては、「優勝したところで、懐が豊かになるわけじゃない」お祭りでしかない。とはいえ、日本人にとっては、なぜか特別のイベントなのだ。
1940年にオリンピック開催を返上した日本が、戦後再び招致活動に乗り出したのは連合軍による占領状態から脱して2年後の1954年で、1960年の開催を目指した。が、このときは翌55年のIOC総会の投票でローマに敗れる。が、ローマに継ぐ大会にも立候補、59年5月26日に行われたIOC総会で64年の東京オリンピック開催が決定した。その間、56年の『経済白書』は「もはや戦後ではない」と、日本経済の復興を高らかに宣言した。
実際、64年東京オリンピックは日本の経済復興のシンボルとなった。新幹線開通、東名高速道路開通、首都高速道路開通、東京の道路網整備などが、急ピッチで進められ、ホテル建設ラッシュなど東京中心部の近代化が急速に進んだ。大会自体もオリンピック史上最大の参加国数を記録、日本が近代国家として生まれ変わった印象を世界中に与え、日本の高度経済成長に大きく寄与したオリンピックでもあった。
それから半世紀余。真夏の東京でオリンピックを開催する意義がどこにあるのか。私はずっと、その疑問を抱いてきた。とくに「オリンピックの華」と言われるマラソンが、東京ではなく札幌で開催されるということになると、果たしてオリンピックによるインバウンド効果は期待できるのかという強い不信感すら持った。
そうした状況の中で、世界を襲ったのがコロナ・パンデミックである。が、なぜか、特別な対策を講じたわけでもないのに、日本ではコロナ患者の発生が海外に比べて異常に少なかった。実際には発生が少なかったのではなく、PCR検査のハードルが高く、その結果、感染者数が少なく見えていただけではないかと私は思っている。多くの医者もそういう疑いを持っているようだ。現に、緊急事態宣言発令中にもかかわらず直近1週間(5月7~13日)のPCR検査実施数(全国)はたった659,387件(人)にすぎず、1日当たりの平均検査数は94,198件でしかない。1年前の今頃に比べて、せいぜい2倍程度の検査数だ。
いまインドの感染者急増が日本でも大きな話題になっているが、人口100万人当たりの直近1週間の新規感染者数のランキングは(5月14日現在)、アルゼンチン3348.4人と断トツに多く、次いでブラジル2056.3人、インドはその次で1561.0人である。その後はヨーロッパ諸国が続き、フランス1546.8人、トルコ1153.7人、イタリア892.7人、ドイツ844.3人だ。またコロナ禍を克服したとして規制をほぼ撤廃したアメリカは731.5人、イギリスは233.5人、韓国も84.7人である。なお日本は357.5人となっている。人口当たりの感染者数はイギリスよりは多いが、アメリカの半分である。
米バイデン大統領は4月28日の施政方針演説で自身のコロナ対策について「我が国が成し遂げた史上最大の成果だ」と勝利宣言をぶった。バイデン氏は就任後100日で1億回分のワクチン接種を目標にしたが、「(それをはるかに上回る)2億2000万回分を接種することになる」と、ワクチンに懐疑的な国民に協力を呼び掛けた。
ワクチン接種にコロナ対策の重点を置いたバイデン政策は確かに効果を上げている。1月20日の就任日には19万人強だった新規感染者数は、この時点で約5万4000人と7割も減った。現在はさらに減少している。そのアメリカに比べ人口当たりの新規感染者数が約半分の日本が、いまなぜ緊急事態宣言地域を拡大し、医療崩壊状態に陥っているのか。それはすでに述べたPCR検査の体制による。一見、日本は感染の抑え込みに成功したかのような数字のカラクリに気づかない、大バカ者がいる。「さざ波」「笑笑」ツイートを発し、メディアや識者から手厳しい批判を浴びた高橋洋一・内閣官房参与である。
●インチキ学者のインチキ「コロナ説」は数学を知らない人の暴論
高橋氏は世界的な数学者になることを夢見て東大理学部で数学を専攻、卒業後、東大経済学部経済学科に学士入学し、卒業して大蔵省(現・財務省)に入省した異色の経済学者である。経済学に数学的思考を持ち込むことは確かに重要だが、中途半端に数学的思考を持ち込むと、操作された数字にとらわれ、おかしな論理を展開してしまいかねないことになる。
そのことはあとで証明するとして、高橋氏はのちに小泉内閣の経済財政政策担当相の竹中平蔵氏の補佐官に就任、現在は嘉悦大学教授を務めながら菅内閣の内閣官房参与として経済政策のアドバイザーの任についている。
高橋氏はいろいろな意味で知る人ぞ知る、ある意味では有名人である。その彼が一躍知らない人も知る存在になったのは、やんごとなき人に頼まれたのかどうかは知る由もないが、オリンピック開催の応援団長を買って出たことによる。具体的には5月9日、各国感染者数と比較して「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止かというと笑笑」とツイートしたのである。このツイートに対して野党やメディア、評論家たちが一斉に反発、「不謹慎」「人命軽視」といった批判が渦巻いたのだ。
高橋氏はよほど自分の「日本コロナ禍観」に自信があったのだろう。今度はユーチューブで猛反論を展開した。「私はいつもマスゴミと言っているんだけど、毎日朝から追いかけられている。だけど取材には応じない。切り取られるだけだから」と前口上を述べたうえで「さざ波」と「笑笑」についての説明を始めた。まず「さざ波」という表現については「(元厚労省技官で医師の)木村盛世さんの言葉なので、だから私はカギかっこを付けた。日本の感染者数は大幅に減らしたイギリスと同程度で、いま騒いでいる人たちの方がおかしい」と反論した。また「笑笑」表現については、「この程度の感染状況でオリンピックを中止すると言ったら、世界中から日本が笑いものになるという意味」と、自らが使った用語について説明した。
なるほど、よーく分かった。つまり高橋氏の「コロナ認識」は現在のコロナ禍は大騒ぎするような状況ではないということらしい。
だったら、高橋クンよ。キミは内閣官房参与として菅総理にアドバイスする権利と責任がある。だとしたら、キミは菅総理にこうアドバイスすべきではないか。
「日本の感染状況なんか大したことないですよ。感染者を大幅に減らしたイギリスと同程度なんですから(※これは大ウソ。人口当たりの感染者数は日本はイギリスの1.5倍強。小学生にでも出来る簡単な計算ができない人がよく東大の数学科を卒業できたね)。あんたが緊急事態宣言を出したりするから、日本のマスゴミが感染拡大、医療崩壊などと騒いだり、オリンピック中止を叫ぶ国民が増えたりするんです。すぐ、緊急事態宣言やまん延防止措置を解除して、三蜜OK。Go Toイベント倍増で景気を回復させましょう」と。
ねえ、高橋クン。キミは内閣官房の参与なんだから、総理が政策を間違えて、あたかもコロナ感染が拡大しているかのような政策を打ち出すから、マスゴミやマスゴミに踊らされた国民が不安を持つのだと、総理を諫めるべきではないかね。だって、それがキミに与えられた任務でしょ。
「オリンピックも、予定通り堂々とやるべきだ。IOCのバッハ会長がファイザー社から提供されるワクチンを全世界の選手団に接種するなんて言ってるけど、日本は安心安全、そんな必要はないとバッハに一言あってしかるべきです」と。
「第一、組織委会長の橋本氏がオリンピック期間中、ボランティアでコロナ感染者対策に当たってくれる看護師を1日当たり500人集めてくれなどと日本看護協会に要請したりするから、肝心の看護師たちから総スカンを食らい、そのうえ、国民も国内の患者より海外のオリンピック選手を優先するのかと怒りを爆発させる。日本は安心安全の国だから、選手の怪我対策のためにスポーツドクターは用意するけど、コロナ対策なんかする必要がありません、と橋本氏に言わせるべきだ」とも。
どうした、高橋クン。キミは数学者でもあるのだから、この数理的解釈は理解できるよね。ゴミは、マスコミかキミか、日本中からキミは(笑笑)の対象になっているんだよ。わかっているのかね。
●日本でオリンピックを開催できる唯一の方法
高橋氏の妄想的「コロナ感染論」は置いておくとして、高橋氏よりもう少し頭がいい私なら、イギリスではなくバイデン大統領が勝利宣言を発したアメリカと比較する。
直近の感染者数はすでに書いたように、人口当たりで日本はアメリカの約半分である。そういう意味では日本はコロナ・パンデミック状態ではないと言えなくはない。などと書くと、高橋氏がぬか喜びしそうだが、アメリカはバイデン大統領のワクチン接種大作戦でコロナの抑え込みに成功した結果だ。実際、バイデン氏が勝利宣言を打った4月28日の感染者数は5万4000人だったが、いまはさらに減少して13日38,087人、14日42,298人を数える状況だ。
ただ、これもすでに書いたが、バイデンが大統領に就任したときの感染者は1日当たり19万人を数えていた。人口比ではアメリカは日本の2.6倍だから、もし当時のアメリカの感染者数を日本人口比に換算すると7万3000人の感染者を出していたことになる。
なぜこんな計算をしたかというと、仮に陽性率を6%として感染者を明らかにするためには、PCR検査を約120万人に実施する必要がある。つまりアメリカ人の人口が日本並みだとしてそれだけのPCR検査の能力を持ち、そして検査していたということを意味する(実際の検査数はその2.6倍)。一方日本は感染が拡大しているなかにあっても、PCR検査数はすでに書いたように1日平均9万4000人でしかない。つまりバイデン大統領が就任した1月20日ごろ、アメリカは日本の13倍近い(人口比で)PCR検査を行っていたということを意味する。一見、感染者数だけみると日本はコロナ優等生の国に見えるが、背景にはこうした「感染者をあぶりださないため」のカラクリがあったのだ。
とくにオリンピック主催都市である東京の場合、感染者としてあぶりだされたのは15日までの7日間の平均で876.4人、前週の112.9%と増え続けている。
そうした状況を反映してか、直近の世論調査でも、NHKの調査では【中止49%、開催44%】、読売新聞の調査でも【中止59%、開催39%】と、いずれも中止派が開催派を上回っている。さらに海外メディアもアメリカやイギリスなどで中止論を主張し始めている。まさに四面楚歌状態になってきた東京オリンピックだが、政府や組織委が開催理由の最後のよりどころとして強気の姿勢を崩していないのは「日本側が中止を決めたら莫大なペナルティをIOCに支払わなければならなくなる」という空理空論だ。
先に「日本のコロナ感染なんかたいしたことがない」と言ってのけた高橋氏も「日本が中止したら数千億円のペナルティをIOCに支払わなければならなくなる」と、根拠を示さず主張しているが、ペナルティ条項がどうなっているか調べるまでもなく、ほぼ日本国民の大半が納得できる「開催可能」方法が、実はある。そのことに、政府も組織委も気づいていないだけの話だ。
実は無傷で東京オリンピックを開催するためには、たった一つ方法がある。
その方法とは、PCR検査をどんどん実施して隠れ感染者をあぶりだし、日本の感染状態を世界各国に正確に伝えること。そのうえで、「我が国自体が医療ひっ迫状態にあり、オリンピック・パラリンピック開催に当たり参加各国の選手団および関係者等に対するコロナ対策は取ることができません。従ってコロナ感染対策のための医療団を必ず同行させてください。なお、選手以外の関係者についてはコロナ抗体ができている免疫者以外の入国は禁止します」という趣旨の通達をIOCを通じて各国に行えばいい。それだけのことだ。
なお「選手以外」としたのは、選手は全員、IOCがワクチン接種を義務付けるという前提である。
日本国民もオリンピックが見たくないわけではない。私自身も、池江選手や内村選手たちには、何が何でもひのき舞台でこれまでの努力の積み重ねの結果を実らせてもらいたいと願っている。多くの国民も、「国内の感染対策よりオリンピック優先」に、少なくとも見える政府や組織委の姿勢に対する反発から、中止論に傾いているだけだと思う。もし、私が提案したような方針を政府、組織委、東京都が明確に打ち出せば、おそらく中止論はほぼなくなる。
後は日本選手の「自分たちだけがワクチンを優先接種してもらうことへの忸怩たる思い」だが、選手に対するワクチン接種はIOCが行うことであり、とくにサッカーとかラクビー、バスケット、柔道やボクシング、水球など外国人選手との格闘競技でコロナ感染リスクを負う選手たちの安全確保のためにIOCが行う当然の措置であり、選手たちがそのことを負い目に感じる必要はまったくないし、それは国民も理解してくれると思う。
こうして完全武装した選手団や関係者が海外から大挙して日本にやってきてくれれば、オリンピック・パラリンピックが日本の中心部の集団免疫環境を作り出してくれるかもしれない。また、もしそんなにリスクが大きいなら、日本に行くのはやめようと参加を取り消す国が増えれば、それはそれで日本選手のメダル獲得数が増えるだけだから、言うことなし。またそういう事態が雪崩現象を生じて参加国が急減してIOCが「今回のオリンピックはやめよう」と言い出したら、日本が巨額の賠償金をIOCに請求すればいい(※契約上、IOCに賠償義務はない)。
なお、医療団を結成できない小国については、すでにコロナ禍を克服して医療体制に余裕がある国に対して、IOCが協力を呼び掛けてほしい。日本はOICに対して東京オリンピック・パラリンピックを成功させるために絶対必要な措置として、強く要請すべきである。
ただし、日本としてやるべきこともある。万一コロナ患者が出た場合に備えて、患者と医療団を完全隔離するため、現在運航停止中の観光クルーズ船をオリンピック期間中借り切って、感染の拡大を完全防止すること。そこまで日本がやれば、「コロナ禍に打ち勝ったオリ・パラを成功させた人類の証として歴史に名を留めることができる。
きっかけになったのは、血液の癌と言われる白血病に侵されながら、闘病生活を経て復活した水泳選手・池江璃花子選手が、7日、会員制交流サイトを通じてオリンピック辞退や反対を求めるメッセージが少なからず寄せられていることをツイッターで明かし、メディアが大きく取り上げたことによる。
●「内定」「最有力候補」の選手たちが苦しい胸の内を表明
池江選手はツイッターで、こう苦しい胸の内を訴えた。
「この暗い世の中をいち早く変えたい。そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです」「オリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然のことだと思っています」「持病を持っている私も、開催されなくても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活を送っています。私に反対の声を求めても、私は何も変えることはできません」「私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています」
池江選手のこの心の叫びは多くの国民の心に響いたようだ。池江選手には「頑張れ」「屈するな」といった励ましのメッセージが多く届いたようだ。それでも「オリンピック中止」を求める声は日増しに強くなっている。政府や組織委の度重なる失態や海外メディアからの強行開催姿勢に対する厳しい批判が寄せられるようになったからでもある。
池江選手はまだ若いから病を克服すれば次のパリ大会出場チャンスはあるが、年齢的に最後のチャンスになるだろう内村航平選手にとっては辛い状況だ。16日のNHK杯で鉄棒代表の座を確定したい内村選手は取材に応じて「まだ僕は東京五輪の代表でもないので、あるかないかを議論する立場でもない。選手で決められることでもない」「僕は体操選手なので体操をすること、練習すること、試合があれば試合をすることが仕事。それができなければ、そもそもそこに立つこともできない。議論をしている暇があったら練習しようと日々過ごしていたら、勝手にその立場になった」(中日スポーツ)と、胸の内を語った(※これはNHK杯直前のコメント)。
こうした状況の中で、男子テニス代表選手で、自身もコロナに感染した錦織圭選手が10日、海外の試合の後「死者がこれだけ出ているということを考えれば、死者が出てまでも行われることではない」とコメント、波紋を呼んだ。
この錦織発言に噛み付いたのが、もはや作家生命を失ったと同然の元都知事・猪瀬直樹氏だ。11日、ツイッターで錦織氏の発言を取り上げ、「僕は錦織選手のファンだが、テニスにはウインブルドンなど四大大会があって、五輪は昔から重要視されていない、という事情が背景にあってのこの発言は、五輪にすべてをかけている他のスポーツ選手に対してフェアとは言えないと思う」と批判したのだ。
私は先述のブログだけでなく、東京オリンピック開催について何度も書いてきた。今年に入ってからも、2月22日には『東京オリンピック――やるべきか、やらざるべきか』を、3月22日にも『緊急事態宣言解除の目的は東京オリンピックのためか?』を書き、「オリンピックありき」の政治を批判してきた。
猪瀬氏の主張に百歩譲っても、錦織選手が「俺にはオリンピックよりカネが稼げる大会がいっぱいある。だから生命の危険を冒してまで出場するつもりはない」と言ったのであれば、錦織発言の無神経さを批判してもいいだろう。が、錦織選手はそうしたエゴで物申したわけでは、多分ない。少なくとも錦織選手の発言から、そういう感じは受け取れない。
そもそも猪瀬氏は日本人についての鋭い考察を、様々な事柄を題材にしながら書いてきたノンフィクション作家だった。東京オリンピック招致を、石原慎太郎都知事時代の副知事として一緒に進めてきた人物でもあり、2013年9月8日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されたIOC総会で2020年のオリンピック開催都市が東京に決まったときの都知事でもある。このIOC総会で最後のプレゼンテーションを行った滝川クリステル氏の「お・も・て・な・し」発言はその年の流行語大賞に選ばれた。このときの東京都知事は猪瀬氏である。
さて今年東京オリンピックを強行開催する場合、海外観光客は「お・こ・と・わ・り」するにしても、海外選手団を「新型コロナウイルス東京型」で「おもてなし」するつもりなのか。もっとも、猪瀬氏は2013年12月、「収賄or借金」問題で都知事職を辞任しているが…。
●コロナ禍は予想できなかっただろうが、死者が出かねない真夏の開催条件を猪瀬都知事(当時)が知らないわけがない
そもそも、2020年の東京オリンピック開催が決まったときの猪瀬氏が、都知事として真夏の7月下旬から8月にかけて開催することが最初からエントリーする際の条件だったことを知らなかったわけがない。IOCが多額の放映権目当てに、米テレビ局のNBCの「真夏開催」条件を丸呑みしてエントリー条件にしていたことは、立場上、確実に知っていたはずだ。
猪瀬氏がついていたのは、真夏開催が明らかになって「死人がでるぞ」と反発の声が国内に巻き起こったのは、彼が都知事を辞任した後だったことだ。小池都知事の時、築地市場の豊洲移転問題で大騒ぎになっていた時期、実は東京都庁に殺到した苦情の電話はオリンピックの開催時期についてだった。石原氏と二人三脚でオリンピック招致運動を繰り広げてきた猪瀬氏が、オリンピックがアスリート・ファーストの大会ではなく、商業主義・カネまみれの「IOCの、IOCによる、IOCのための」大会に変貌していたことに気が付いていなかったわけがない。言うなら、バッハの掌の上で「詐欺」の片棒を担いできたのが猪瀬氏。自分のカネにまつわる疑惑で辞職に追い込まれていなかったら、東京オリンピック利権にありついていたかもしれない人物だ。
はっきり言って、テニスはサッカーとともに、世界中で最も盛んなプロスポーツ。だから錦織選手ではなくても、ジェコビッチなど一流選手はコロナ・リスクまで冒してまでは絶対に日本には来ない。オリンピックの金メダルに異常なほどの名誉心を抱いているのは日本人くらいで、それが証拠に国際サッカー連盟(FIFA)は明らかにオリンピックよりワールド・カップのほうを上位に位置付けている。FIFAがオリンピックのサッカー試合の出場者に年齢制限を課していることを、猪瀬氏も知らないはずはないだろう。
バスケットボールでも、アメリカで活躍している八村塁、渡邊雄大、馬場雄太選手などの候補選手は内定が出れば日本チームの一員として出場する可能性が高いとみられているが、プロバスケット・リーグが人気のアメリカの一流選手はまず来ない。野球も同様。日本にオリンピックのために来る海外の一流アスリートは、プロ化されていない陸上や水泳などの選手だけだ。また日本人選手が活躍しそうな競技には日本人も関心を持つが、有力な選手がいない競技には関係者を除いてほとんどの国民はそっぽを向く。
実際、オリンピック開催について声をあげだしたアスリートが続々現れ始めた。たとえばラクビー7人制の女子代表候補の中村知春選手は4月23日、ツイッターで「東京オリンピック・パラリンピックをやりたい、と声を大にして言えないのは、それはアスリートのエゴだとわかっているから」と、忸怩たる思いを吐露している。
五輪に向けてのテストイベントが国立競技場で行われた5月9日、会場外からオリンピック中止を求めるシュプレヒコールが巻き起こったとき、女子1万メートル代表に内定している新谷仁美選手は報道陣に感想を聞かれ、「彼らも国民。私たちアスリートは国民の理解と応援、サポートがあって成り立つ職業だと思う。無視して競技するだけなら、それはアスリートではない。応援してくれる方たちとだけ向き合うのでは、胸を張って日本代表とは言えない」と答えた。重ねて報道陣から池江選手に対するバッシングについて聞かれ、「いや、苦しいですよ。正直、今年に入ってからはやっぱり振る舞い方を考えています。五輪開催に関して、命より大事なことはないので、命を優先して考えてほしいという思いもあります。ただアスリートとしてどういう答えが望ましいのかというのはわからない」と、戸惑いを隠さなかった。
女子テニス代表が決定している大阪なおみ選手も「オリンピックは開催してほしいとは思っている」としたうえで、「もしオリンピックが人々を危険にさらすのであれば、そして人々が開催を居心地悪く感じているのであれば、私たちは今すぐ議論すべきです」と語った。
いみじくも猪瀬氏が錦織選手の発言にクレームを付けた理由を改めてこうしたアスリートたちのオリンピックへの向き合い方と突き合わせて考察すると、自らの仕事への向き合い方を反映しているとしか思えない。ま、真夏の東京にオリンピックを招致した人らしい感覚だということが分かるエピソードだ。
●一見、感染者数が少ない日本で、なぜ緊急事態宣言拡大や医療崩壊状況が生じているのか
これまでも何度も述べてきたように、日本人はなぜかオリンピックに特別な感情を抱いている。「世界が一つになる大会」でもないし、「平和の祭典」でもないし、まして「スポーツの世界最高の大会」でもない。プロ化されていない競技にとっては「世界選手権」より上位に位置するが、プロスポーツが盛んな競技にとっては、「優勝したところで、懐が豊かになるわけじゃない」お祭りでしかない。とはいえ、日本人にとっては、なぜか特別のイベントなのだ。
1940年にオリンピック開催を返上した日本が、戦後再び招致活動に乗り出したのは連合軍による占領状態から脱して2年後の1954年で、1960年の開催を目指した。が、このときは翌55年のIOC総会の投票でローマに敗れる。が、ローマに継ぐ大会にも立候補、59年5月26日に行われたIOC総会で64年の東京オリンピック開催が決定した。その間、56年の『経済白書』は「もはや戦後ではない」と、日本経済の復興を高らかに宣言した。
実際、64年東京オリンピックは日本の経済復興のシンボルとなった。新幹線開通、東名高速道路開通、首都高速道路開通、東京の道路網整備などが、急ピッチで進められ、ホテル建設ラッシュなど東京中心部の近代化が急速に進んだ。大会自体もオリンピック史上最大の参加国数を記録、日本が近代国家として生まれ変わった印象を世界中に与え、日本の高度経済成長に大きく寄与したオリンピックでもあった。
それから半世紀余。真夏の東京でオリンピックを開催する意義がどこにあるのか。私はずっと、その疑問を抱いてきた。とくに「オリンピックの華」と言われるマラソンが、東京ではなく札幌で開催されるということになると、果たしてオリンピックによるインバウンド効果は期待できるのかという強い不信感すら持った。
そうした状況の中で、世界を襲ったのがコロナ・パンデミックである。が、なぜか、特別な対策を講じたわけでもないのに、日本ではコロナ患者の発生が海外に比べて異常に少なかった。実際には発生が少なかったのではなく、PCR検査のハードルが高く、その結果、感染者数が少なく見えていただけではないかと私は思っている。多くの医者もそういう疑いを持っているようだ。現に、緊急事態宣言発令中にもかかわらず直近1週間(5月7~13日)のPCR検査実施数(全国)はたった659,387件(人)にすぎず、1日当たりの平均検査数は94,198件でしかない。1年前の今頃に比べて、せいぜい2倍程度の検査数だ。
いまインドの感染者急増が日本でも大きな話題になっているが、人口100万人当たりの直近1週間の新規感染者数のランキングは(5月14日現在)、アルゼンチン3348.4人と断トツに多く、次いでブラジル2056.3人、インドはその次で1561.0人である。その後はヨーロッパ諸国が続き、フランス1546.8人、トルコ1153.7人、イタリア892.7人、ドイツ844.3人だ。またコロナ禍を克服したとして規制をほぼ撤廃したアメリカは731.5人、イギリスは233.5人、韓国も84.7人である。なお日本は357.5人となっている。人口当たりの感染者数はイギリスよりは多いが、アメリカの半分である。
米バイデン大統領は4月28日の施政方針演説で自身のコロナ対策について「我が国が成し遂げた史上最大の成果だ」と勝利宣言をぶった。バイデン氏は就任後100日で1億回分のワクチン接種を目標にしたが、「(それをはるかに上回る)2億2000万回分を接種することになる」と、ワクチンに懐疑的な国民に協力を呼び掛けた。
ワクチン接種にコロナ対策の重点を置いたバイデン政策は確かに効果を上げている。1月20日の就任日には19万人強だった新規感染者数は、この時点で約5万4000人と7割も減った。現在はさらに減少している。そのアメリカに比べ人口当たりの新規感染者数が約半分の日本が、いまなぜ緊急事態宣言地域を拡大し、医療崩壊状態に陥っているのか。それはすでに述べたPCR検査の体制による。一見、日本は感染の抑え込みに成功したかのような数字のカラクリに気づかない、大バカ者がいる。「さざ波」「笑笑」ツイートを発し、メディアや識者から手厳しい批判を浴びた高橋洋一・内閣官房参与である。
●インチキ学者のインチキ「コロナ説」は数学を知らない人の暴論
高橋氏は世界的な数学者になることを夢見て東大理学部で数学を専攻、卒業後、東大経済学部経済学科に学士入学し、卒業して大蔵省(現・財務省)に入省した異色の経済学者である。経済学に数学的思考を持ち込むことは確かに重要だが、中途半端に数学的思考を持ち込むと、操作された数字にとらわれ、おかしな論理を展開してしまいかねないことになる。
そのことはあとで証明するとして、高橋氏はのちに小泉内閣の経済財政政策担当相の竹中平蔵氏の補佐官に就任、現在は嘉悦大学教授を務めながら菅内閣の内閣官房参与として経済政策のアドバイザーの任についている。
高橋氏はいろいろな意味で知る人ぞ知る、ある意味では有名人である。その彼が一躍知らない人も知る存在になったのは、やんごとなき人に頼まれたのかどうかは知る由もないが、オリンピック開催の応援団長を買って出たことによる。具体的には5月9日、各国感染者数と比較して「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止かというと笑笑」とツイートしたのである。このツイートに対して野党やメディア、評論家たちが一斉に反発、「不謹慎」「人命軽視」といった批判が渦巻いたのだ。
高橋氏はよほど自分の「日本コロナ禍観」に自信があったのだろう。今度はユーチューブで猛反論を展開した。「私はいつもマスゴミと言っているんだけど、毎日朝から追いかけられている。だけど取材には応じない。切り取られるだけだから」と前口上を述べたうえで「さざ波」と「笑笑」についての説明を始めた。まず「さざ波」という表現については「(元厚労省技官で医師の)木村盛世さんの言葉なので、だから私はカギかっこを付けた。日本の感染者数は大幅に減らしたイギリスと同程度で、いま騒いでいる人たちの方がおかしい」と反論した。また「笑笑」表現については、「この程度の感染状況でオリンピックを中止すると言ったら、世界中から日本が笑いものになるという意味」と、自らが使った用語について説明した。
なるほど、よーく分かった。つまり高橋氏の「コロナ認識」は現在のコロナ禍は大騒ぎするような状況ではないということらしい。
だったら、高橋クンよ。キミは内閣官房参与として菅総理にアドバイスする権利と責任がある。だとしたら、キミは菅総理にこうアドバイスすべきではないか。
「日本の感染状況なんか大したことないですよ。感染者を大幅に減らしたイギリスと同程度なんですから(※これは大ウソ。人口当たりの感染者数は日本はイギリスの1.5倍強。小学生にでも出来る簡単な計算ができない人がよく東大の数学科を卒業できたね)。あんたが緊急事態宣言を出したりするから、日本のマスゴミが感染拡大、医療崩壊などと騒いだり、オリンピック中止を叫ぶ国民が増えたりするんです。すぐ、緊急事態宣言やまん延防止措置を解除して、三蜜OK。Go Toイベント倍増で景気を回復させましょう」と。
ねえ、高橋クン。キミは内閣官房の参与なんだから、総理が政策を間違えて、あたかもコロナ感染が拡大しているかのような政策を打ち出すから、マスゴミやマスゴミに踊らされた国民が不安を持つのだと、総理を諫めるべきではないかね。だって、それがキミに与えられた任務でしょ。
「オリンピックも、予定通り堂々とやるべきだ。IOCのバッハ会長がファイザー社から提供されるワクチンを全世界の選手団に接種するなんて言ってるけど、日本は安心安全、そんな必要はないとバッハに一言あってしかるべきです」と。
「第一、組織委会長の橋本氏がオリンピック期間中、ボランティアでコロナ感染者対策に当たってくれる看護師を1日当たり500人集めてくれなどと日本看護協会に要請したりするから、肝心の看護師たちから総スカンを食らい、そのうえ、国民も国内の患者より海外のオリンピック選手を優先するのかと怒りを爆発させる。日本は安心安全の国だから、選手の怪我対策のためにスポーツドクターは用意するけど、コロナ対策なんかする必要がありません、と橋本氏に言わせるべきだ」とも。
どうした、高橋クン。キミは数学者でもあるのだから、この数理的解釈は理解できるよね。ゴミは、マスコミかキミか、日本中からキミは(笑笑)の対象になっているんだよ。わかっているのかね。
●日本でオリンピックを開催できる唯一の方法
高橋氏の妄想的「コロナ感染論」は置いておくとして、高橋氏よりもう少し頭がいい私なら、イギリスではなくバイデン大統領が勝利宣言を発したアメリカと比較する。
直近の感染者数はすでに書いたように、人口当たりで日本はアメリカの約半分である。そういう意味では日本はコロナ・パンデミック状態ではないと言えなくはない。などと書くと、高橋氏がぬか喜びしそうだが、アメリカはバイデン大統領のワクチン接種大作戦でコロナの抑え込みに成功した結果だ。実際、バイデン氏が勝利宣言を打った4月28日の感染者数は5万4000人だったが、いまはさらに減少して13日38,087人、14日42,298人を数える状況だ。
ただ、これもすでに書いたが、バイデンが大統領に就任したときの感染者は1日当たり19万人を数えていた。人口比ではアメリカは日本の2.6倍だから、もし当時のアメリカの感染者数を日本人口比に換算すると7万3000人の感染者を出していたことになる。
なぜこんな計算をしたかというと、仮に陽性率を6%として感染者を明らかにするためには、PCR検査を約120万人に実施する必要がある。つまりアメリカ人の人口が日本並みだとしてそれだけのPCR検査の能力を持ち、そして検査していたということを意味する(実際の検査数はその2.6倍)。一方日本は感染が拡大しているなかにあっても、PCR検査数はすでに書いたように1日平均9万4000人でしかない。つまりバイデン大統領が就任した1月20日ごろ、アメリカは日本の13倍近い(人口比で)PCR検査を行っていたということを意味する。一見、感染者数だけみると日本はコロナ優等生の国に見えるが、背景にはこうした「感染者をあぶりださないため」のカラクリがあったのだ。
とくにオリンピック主催都市である東京の場合、感染者としてあぶりだされたのは15日までの7日間の平均で876.4人、前週の112.9%と増え続けている。
そうした状況を反映してか、直近の世論調査でも、NHKの調査では【中止49%、開催44%】、読売新聞の調査でも【中止59%、開催39%】と、いずれも中止派が開催派を上回っている。さらに海外メディアもアメリカやイギリスなどで中止論を主張し始めている。まさに四面楚歌状態になってきた東京オリンピックだが、政府や組織委が開催理由の最後のよりどころとして強気の姿勢を崩していないのは「日本側が中止を決めたら莫大なペナルティをIOCに支払わなければならなくなる」という空理空論だ。
先に「日本のコロナ感染なんかたいしたことがない」と言ってのけた高橋氏も「日本が中止したら数千億円のペナルティをIOCに支払わなければならなくなる」と、根拠を示さず主張しているが、ペナルティ条項がどうなっているか調べるまでもなく、ほぼ日本国民の大半が納得できる「開催可能」方法が、実はある。そのことに、政府も組織委も気づいていないだけの話だ。
実は無傷で東京オリンピックを開催するためには、たった一つ方法がある。
その方法とは、PCR検査をどんどん実施して隠れ感染者をあぶりだし、日本の感染状態を世界各国に正確に伝えること。そのうえで、「我が国自体が医療ひっ迫状態にあり、オリンピック・パラリンピック開催に当たり参加各国の選手団および関係者等に対するコロナ対策は取ることができません。従ってコロナ感染対策のための医療団を必ず同行させてください。なお、選手以外の関係者についてはコロナ抗体ができている免疫者以外の入国は禁止します」という趣旨の通達をIOCを通じて各国に行えばいい。それだけのことだ。
なお「選手以外」としたのは、選手は全員、IOCがワクチン接種を義務付けるという前提である。
日本国民もオリンピックが見たくないわけではない。私自身も、池江選手や内村選手たちには、何が何でもひのき舞台でこれまでの努力の積み重ねの結果を実らせてもらいたいと願っている。多くの国民も、「国内の感染対策よりオリンピック優先」に、少なくとも見える政府や組織委の姿勢に対する反発から、中止論に傾いているだけだと思う。もし、私が提案したような方針を政府、組織委、東京都が明確に打ち出せば、おそらく中止論はほぼなくなる。
後は日本選手の「自分たちだけがワクチンを優先接種してもらうことへの忸怩たる思い」だが、選手に対するワクチン接種はIOCが行うことであり、とくにサッカーとかラクビー、バスケット、柔道やボクシング、水球など外国人選手との格闘競技でコロナ感染リスクを負う選手たちの安全確保のためにIOCが行う当然の措置であり、選手たちがそのことを負い目に感じる必要はまったくないし、それは国民も理解してくれると思う。
こうして完全武装した選手団や関係者が海外から大挙して日本にやってきてくれれば、オリンピック・パラリンピックが日本の中心部の集団免疫環境を作り出してくれるかもしれない。また、もしそんなにリスクが大きいなら、日本に行くのはやめようと参加を取り消す国が増えれば、それはそれで日本選手のメダル獲得数が増えるだけだから、言うことなし。またそういう事態が雪崩現象を生じて参加国が急減してIOCが「今回のオリンピックはやめよう」と言い出したら、日本が巨額の賠償金をIOCに請求すればいい(※契約上、IOCに賠償義務はない)。
なお、医療団を結成できない小国については、すでにコロナ禍を克服して医療体制に余裕がある国に対して、IOCが協力を呼び掛けてほしい。日本はOICに対して東京オリンピック・パラリンピックを成功させるために絶対必要な措置として、強く要請すべきである。
ただし、日本としてやるべきこともある。万一コロナ患者が出た場合に備えて、患者と医療団を完全隔離するため、現在運航停止中の観光クルーズ船をオリンピック期間中借り切って、感染の拡大を完全防止すること。そこまで日本がやれば、「コロナ禍に打ち勝ったオリ・パラを成功させた人類の証として歴史に名を留めることができる。
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