内閣支持率の下落に歯止めがかからない。加計学園問題を巡る、安倍総理不在中の7月10日に行われた閉会中審査を境に内閣支持率は急落した。
内閣支持率が下がり始めたのは森友学園問題や加計学園問題が浮上した6月からで、例えばNHKの世論調査でも5月までは50%台をキープしていたが6月には48%(不支持率36%)と安保法制の強行採決以来久しぶりに50%を切り、さらに7月の調査では35%(不支持率48%)と支持・不支持が逆転した。
実は各メディアの世論調査の誤差は調査時期による要因を除けばかなり縮まって来ている。設問の内容によってばらつきが出るのはやむを得ないが、少なくとも内閣支持率調査は「いまの内閣を支持するか、しないか」の二者択一しかあり得ない。それでもメディアによって大きなばらつきが生じていたのはRDD方式[RDSとも言われる]の欠陥によるものだった。
この方式はコンピュータで無作為に数字を組み合わせて選んだ電話番号に電話をかけて調査するというやり方で、対象が固定電話に限られていた。しかし、いまの若い人たちは独身者はもとより、家庭を持った人たちの間でも固定電話離れが急速に進んでいる。携帯のかけ放題やラインが普及して、固定電話より利便性が高まったせいだ。私は長文のブログを書いていることもあってパソコンを手放せないが、若い人たちのパソコン離れも急速に進み、NTTも窮地に陥っている。
NTTが窮地に陥っているという意味が理解できない方のために説明しておくと、旧電電公社が民営化してNTTは固定電話専用の電話会社になり、携帯電話部門はNTTドコモに分離されたためだ。つまりNTTとNTTドコモは親子の関係にありながら食うか食われるかの競争関係になってしまった。固定と携帯は通信市場のパイが増え続けない限り、絶対に共存共栄はできない状態になってしまった。
NTTの戦略的ミスは光通信網を家庭にまで拡大しようと過大な設備投資を続けてきたことだ。通信網の光化は電電公社民営化直前の真藤総裁時代に着手された。その時の構想は日本列島を縦断する通信大回線を光化し、次の段階として各地の電話局を光通信網で結ぶというものだった。
光化を、その段階までで止めておけばよかったのだが、NTTの経営陣は調子に乗って家庭にまで光回線を敷設しようというばかげた計画を立てた。
いまの若い人たちは知らないだろうが、かつては固定電話を持つのは大変だった。まず電電公社から加入権を購入しなければならないのだが、購入するのに数か月かかるという状況が続き、加入権を売買する業者が数万を数えるほどだった。いまNTTは加入権購入など条件にしていないし、加入権売買業者も皆無になった。それどころか、人々の固定電話離れを何とか防ごうと、来年にはIP電話と同じく電話料金を全国一律3分8.4円にするらしい。
自分で自分の首を勝手にしめたNTT問題から離れる。私がこのブログで言いたかったことは固定電話の持ち主を対象にした世論調査では、本当の世論は分からないということだ。そのことはこれまでブログでも何度も指摘してきたし、NHKや読売、朝日などにも調査方法を見直すべきだと電話で申し入れてきた。ようやく今年に入ってから携帯にも電話するようになったが、各メディアによる調査誤差が縮小してきたのはそのせいだと思う。
ただ、どのメディアも固定と携帯の調査割合を公表していない。というのは、調査対象は各都道府県の人口に比例したサンプルを選ぶ必要があるが、携帯電話には固定電話のような地域別の局番がないからだ。固定電話にかける場合にはあらかじめ東京都23区なら03という局番の持ち主のサンプル数を人口比に応じて決めておけば、後はコンピュータが自動的に電話して自動音声による調査をすれば済むが、携帯の場合はどの地域に住んでいる人かがまったくわからない。住居を確認する方法は、どうやら人手に頼っているようだ。
そんなくらいなら、各メディアが共同出資して世論調査会社を作り、面談方式で調査すればメディアによる調査誤差もなくなるし、調査の信ぴょう性も高まると思うのだが…。
実は、そういう方法は私はすでにメディアに提案はしているのだが、メディアによって設問内容が違うから難しいという。ということは、あらかじめ調査対象をメディアの主張に近いように誘導する設問にしていることをメディア自身が認めていることを意味し、調査結果への信頼性が損なわれるのもやむを得ないだろう。
そういう世論調査の「信頼性」を前提にNHKが行った今年の内閣支持率と政党支持率の推移を見てみよう(出典はNHK放送文化研究所のホームページ)。なおNHKは4月の調査から固定電話だけでなく携帯電話の所有者も調査対象に加えている。
内閣:安倍内閣(%)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
支持する 55 58 51 53 51 48 35
支持しない 29 23 31 27 30 36 48
政党支持率
(%)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
自民党 38.3 38.2 36.9 38.1 37.5 36.4 30.7
民進党 8.7 6.4 7.6 6.7 7.3 7.9 5.8
公明党 3.5 2.8 4.1 3.8 3.8 4.2 4.1
共産党 3.2 4.4 2.8 3.2 2.7 2.7 3.3
日本維新の会 1.6 1.4 1.6 1.1 1.3 1.2 1.2
自由党 0.0 0.4 0.1 0.5 0.3 0.4 0.5
社民党 0.9 0.7 1.1 0.6 1.0 0.9 0.3
日本のこころ(※1) 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 0.0 0.2
その他の政治団体 0.3 0.3 0.4 0.2 0.1 0.3 1.0
支持なし 38.3 40.1 38.9 38.7 38.4 40.8 47.0
わからない、無回答 5.3 5.2 6.6 7.0 7.5 5.1 5.8
なおNHKの世論調査はだいたい10日前後の直近の金~日の3日間に行われており、7月の場合は7~9日に行っている。10日には閉会中審査が総理不在の中で行われており、もしNHKが10日以降に調査していれば内閣支持率は相当変動していた可能性がある。実際、閉会中審査後の22,23の2日に行った毎日新聞の世論調査(主要メディアの世論調査としては最新…8月1日現在)では、内閣支持率26%(不支持56%)という結果が出ている。毎日の世論調査の翌日24日から2日間にわたり安倍総理出席のもとで閉会中予算委員会が行われており、その後に調査をしていれば内閣支持率は20%割れになっていた可能性も否定できない。
調査日によってメディアの調査結果は多少異なるが、すでに述べたように内閣支持率に関しては設問内容に意図的な作為はほとんど不可能で、もし作為をするとすれば各地域における人口比を正確に反映したサンプリングをしているか否かくらいであろう。自民党や公明党は地方に大きな票田を持っており、意図的に地方のサンプリングを多くすれば内閣支持率は高くなる。メディアがそんな汚いことをやるか、と思われる方もおられるだろうが、はっきり言って日本のメディアはそういう作為を平気でやりかねない。
そのことはともかく、NHKに限らず5月までは内閣支持率と自民党支持率はほぼパラレルな関係にあった。内閣支持率も自民党支持率も大きく変動はしていない。が、6・7月はその関係が大きく崩れている。NHKに限って言えば、6月の内閣支持率は前月比-3ポイント(不支持は+6ポイント)である。さらに7月は加計学園疑惑が沸騰したこともあり、内閣支持率は前月比-7ポイント(不支持は+12ポイント)と大きく変動している。
ではこの間自民党支持率の変動はどうだったか。6月は前月比-1.1%だったが、7月には-5.7%と大きく下げた。が、下げ幅は内閣支持率ほどではない。6月はそれほど支持率が下がっていないのに7月大きく下げたのはNHKが世論調査を行う前の週2日の東京都議選の結果が大きく反映したと考えられる。この選挙での「防衛相、自衛隊が…」との自民候補応援演説で非難を浴びた稲田防衛相、「こんな人たちに負けるわけにいかない」と秋葉原で街頭演説を行った安倍総理に対する怒りが自民党支持層にも広まったためと言われている。この暴言がなければ、自民党支持率はそれほど大きく下落はしていなかったと思われる。
そう言い切れるのは無党派層の、この間の増加である。5月までの5か月間はほぼ38%台で大きな変動がなかったが、6月には前月比で+2.4ポイント、7月には+6.2ポイントと大きく増えているのだ。つまり自民党支持層の自民離れが無党派層の拡大につながったといっていいだろう。
最近の選挙は無党派層が大きなカギを握っているといわれる。都議選で既成政党が共産党と都民フと協定を結んだ公明党を除いて軒並み惨敗したのも、自民に愛想尽かしをした元自民支持層を含む無党派層の動向が大きく作用したと考えてよいだろう。その証拠に、都議選を含む最近の地方選挙の投票率は、すべて前回を大幅に上回っている。前回の衆院選について私は憲政史上空前の低投票率になると予測してブログにも書いた。メディアは軒並み、その前の投票率程度と予測していたが、結果は私の予測のほうが当たった。
前回の衆院選は、争点がまったくなかった。安倍総理は消費税増税の延期を争点にしようとしたのだが、民主党がのってこなかった。やむを得ず安倍総理は「アベノミクスの是非を国民に問う」という、争点になりえない争点をでっち上げて解散総選挙に打って出た。当時民主党は別にアベノミクスを批判していたわけではないので、有権者がしらけるのは当たり前だった。
ただ、選挙直前になってメディアが一斉に「自民300を超す勢い」という調査報道をしたため、冗談じゃないと怒った無党派層の一部が投票所に足を運んだ。その無党派層が消去法で投票したのが共産党だった。そのため投票率は私が予想したより上回ったが、憲政史上最低の投票率は記録した。
この傾向は前回の衆院選以降、ずっと続いている。別に日本国民が左傾化しているわけではないのだが、自民党には票を入れたくない、かといって民主党も当てにできない。公明党もバックが創価学会だからいやだ。となると、そういう無党派層の受け皿は共産党しか残らない。消去法の選択肢で共産党が伸びているのは、そういう理由でしかない。現に、NHKの政党支持率の推移を見れば一目瞭然である。NHKの調査では2月の共産党支持率が4.4%と、この月だけ公明党の支持率を上回っているが、同じ月の内閣支持率は今年に入って最高の58%を記録している。おそらくコンピュータが無差別に選んだサンプルが結果的に偏ったものになったのではないかと思う。だから2月を除けば共産党の支持者が増えだしたとは言えないことがわかる。
問題は2大政党による政権交代を可能にするために行われた小選挙区制導入が、結果的には失敗だったということだ。小選挙区制導入後、政権交代は2回あった。最初は細川内閣の誕生であり、2度目は民主党政権だった。そういう意味では小選挙区制導入によって政権交代が可能になったとは言える。
だが、細川内閣は野合政権であり、民主党政権は野合政党政権だった。そのため政権内で総理の求心力が最初からなく、足の引っ張り合いで何も決められない政権でしかなかった。細川内閣と民主党政権を生んだ無党派層が、何も決められない野合勢力にそっぽを向いたのは当然と言えば当然すぎる結果である。
無党派層によって308という空前の衆議院の議席を与えられた旧民主党が、なぜその後無党派層からそっぽを向かれたのか…その総括なしに数の論理に血道をあげて江田グループと再び野合した民進党に対する期待感を、無党派層は今ほとんど持っていない。その証拠に、民進党への支持率は今年に入って低迷の一途をたどっている。安倍内閣が誕生以来最低の支持率を記録した7月ですら民進党の支持率は前月より2.1ポイントも下落している。もはや民進党は政権を狙える政党の体をなしていないと言わざるを得ない。
もちろん自民党も一枚岩ではない。だが、55年体制が続く中で党内の主導権争いは続いたが、いったん総裁が決まれば足の引っ張り合いはとりあえず影をひそめる。その結果、政権の担い手として決めることができる政党として、常に政局の中心にいた。そういう「大人の政党」には、いまの民進党はなりえない。蓮舫氏の「二重国籍」問題といった基本的人権にかかわるような足の引っ張り合いをやっているうちは、無党派層から振り向いてはもらえない。
蓮舫氏が代表を辞任した以上、早急に次の代表を決めなければならないが、いま立候補者として取りざたされている前原・枝野・玉木氏のだれが代表選に勝利するかはわからないが、だれが勝つにせよ決まったら足の引っ張り合いはしないという紳士協定を選挙の前に結んだほうがいいだろう。
内閣支持率が下がり始めたのは森友学園問題や加計学園問題が浮上した6月からで、例えばNHKの世論調査でも5月までは50%台をキープしていたが6月には48%(不支持率36%)と安保法制の強行採決以来久しぶりに50%を切り、さらに7月の調査では35%(不支持率48%)と支持・不支持が逆転した。
実は各メディアの世論調査の誤差は調査時期による要因を除けばかなり縮まって来ている。設問の内容によってばらつきが出るのはやむを得ないが、少なくとも内閣支持率調査は「いまの内閣を支持するか、しないか」の二者択一しかあり得ない。それでもメディアによって大きなばらつきが生じていたのはRDD方式[RDSとも言われる]の欠陥によるものだった。
この方式はコンピュータで無作為に数字を組み合わせて選んだ電話番号に電話をかけて調査するというやり方で、対象が固定電話に限られていた。しかし、いまの若い人たちは独身者はもとより、家庭を持った人たちの間でも固定電話離れが急速に進んでいる。携帯のかけ放題やラインが普及して、固定電話より利便性が高まったせいだ。私は長文のブログを書いていることもあってパソコンを手放せないが、若い人たちのパソコン離れも急速に進み、NTTも窮地に陥っている。
NTTが窮地に陥っているという意味が理解できない方のために説明しておくと、旧電電公社が民営化してNTTは固定電話専用の電話会社になり、携帯電話部門はNTTドコモに分離されたためだ。つまりNTTとNTTドコモは親子の関係にありながら食うか食われるかの競争関係になってしまった。固定と携帯は通信市場のパイが増え続けない限り、絶対に共存共栄はできない状態になってしまった。
NTTの戦略的ミスは光通信網を家庭にまで拡大しようと過大な設備投資を続けてきたことだ。通信網の光化は電電公社民営化直前の真藤総裁時代に着手された。その時の構想は日本列島を縦断する通信大回線を光化し、次の段階として各地の電話局を光通信網で結ぶというものだった。
光化を、その段階までで止めておけばよかったのだが、NTTの経営陣は調子に乗って家庭にまで光回線を敷設しようというばかげた計画を立てた。
いまの若い人たちは知らないだろうが、かつては固定電話を持つのは大変だった。まず電電公社から加入権を購入しなければならないのだが、購入するのに数か月かかるという状況が続き、加入権を売買する業者が数万を数えるほどだった。いまNTTは加入権購入など条件にしていないし、加入権売買業者も皆無になった。それどころか、人々の固定電話離れを何とか防ごうと、来年にはIP電話と同じく電話料金を全国一律3分8.4円にするらしい。
自分で自分の首を勝手にしめたNTT問題から離れる。私がこのブログで言いたかったことは固定電話の持ち主を対象にした世論調査では、本当の世論は分からないということだ。そのことはこれまでブログでも何度も指摘してきたし、NHKや読売、朝日などにも調査方法を見直すべきだと電話で申し入れてきた。ようやく今年に入ってから携帯にも電話するようになったが、各メディアによる調査誤差が縮小してきたのはそのせいだと思う。
ただ、どのメディアも固定と携帯の調査割合を公表していない。というのは、調査対象は各都道府県の人口に比例したサンプルを選ぶ必要があるが、携帯電話には固定電話のような地域別の局番がないからだ。固定電話にかける場合にはあらかじめ東京都23区なら03という局番の持ち主のサンプル数を人口比に応じて決めておけば、後はコンピュータが自動的に電話して自動音声による調査をすれば済むが、携帯の場合はどの地域に住んでいる人かがまったくわからない。住居を確認する方法は、どうやら人手に頼っているようだ。
そんなくらいなら、各メディアが共同出資して世論調査会社を作り、面談方式で調査すればメディアによる調査誤差もなくなるし、調査の信ぴょう性も高まると思うのだが…。
実は、そういう方法は私はすでにメディアに提案はしているのだが、メディアによって設問内容が違うから難しいという。ということは、あらかじめ調査対象をメディアの主張に近いように誘導する設問にしていることをメディア自身が認めていることを意味し、調査結果への信頼性が損なわれるのもやむを得ないだろう。
そういう世論調査の「信頼性」を前提にNHKが行った今年の内閣支持率と政党支持率の推移を見てみよう(出典はNHK放送文化研究所のホームページ)。なおNHKは4月の調査から固定電話だけでなく携帯電話の所有者も調査対象に加えている。
内閣:安倍内閣(%)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
支持する 55 58 51 53 51 48 35
支持しない 29 23 31 27 30 36 48
政党支持率
(%)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
自民党 38.3 38.2 36.9 38.1 37.5 36.4 30.7
民進党 8.7 6.4 7.6 6.7 7.3 7.9 5.8
公明党 3.5 2.8 4.1 3.8 3.8 4.2 4.1
共産党 3.2 4.4 2.8 3.2 2.7 2.7 3.3
日本維新の会 1.6 1.4 1.6 1.1 1.3 1.2 1.2
自由党 0.0 0.4 0.1 0.5 0.3 0.4 0.5
社民党 0.9 0.7 1.1 0.6 1.0 0.9 0.3
日本のこころ(※1) 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 0.0 0.2
その他の政治団体 0.3 0.3 0.4 0.2 0.1 0.3 1.0
支持なし 38.3 40.1 38.9 38.7 38.4 40.8 47.0
わからない、無回答 5.3 5.2 6.6 7.0 7.5 5.1 5.8
なおNHKの世論調査はだいたい10日前後の直近の金~日の3日間に行われており、7月の場合は7~9日に行っている。10日には閉会中審査が総理不在の中で行われており、もしNHKが10日以降に調査していれば内閣支持率は相当変動していた可能性がある。実際、閉会中審査後の22,23の2日に行った毎日新聞の世論調査(主要メディアの世論調査としては最新…8月1日現在)では、内閣支持率26%(不支持56%)という結果が出ている。毎日の世論調査の翌日24日から2日間にわたり安倍総理出席のもとで閉会中予算委員会が行われており、その後に調査をしていれば内閣支持率は20%割れになっていた可能性も否定できない。
調査日によってメディアの調査結果は多少異なるが、すでに述べたように内閣支持率に関しては設問内容に意図的な作為はほとんど不可能で、もし作為をするとすれば各地域における人口比を正確に反映したサンプリングをしているか否かくらいであろう。自民党や公明党は地方に大きな票田を持っており、意図的に地方のサンプリングを多くすれば内閣支持率は高くなる。メディアがそんな汚いことをやるか、と思われる方もおられるだろうが、はっきり言って日本のメディアはそういう作為を平気でやりかねない。
そのことはともかく、NHKに限らず5月までは内閣支持率と自民党支持率はほぼパラレルな関係にあった。内閣支持率も自民党支持率も大きく変動はしていない。が、6・7月はその関係が大きく崩れている。NHKに限って言えば、6月の内閣支持率は前月比-3ポイント(不支持は+6ポイント)である。さらに7月は加計学園疑惑が沸騰したこともあり、内閣支持率は前月比-7ポイント(不支持は+12ポイント)と大きく変動している。
ではこの間自民党支持率の変動はどうだったか。6月は前月比-1.1%だったが、7月には-5.7%と大きく下げた。が、下げ幅は内閣支持率ほどではない。6月はそれほど支持率が下がっていないのに7月大きく下げたのはNHKが世論調査を行う前の週2日の東京都議選の結果が大きく反映したと考えられる。この選挙での「防衛相、自衛隊が…」との自民候補応援演説で非難を浴びた稲田防衛相、「こんな人たちに負けるわけにいかない」と秋葉原で街頭演説を行った安倍総理に対する怒りが自民党支持層にも広まったためと言われている。この暴言がなければ、自民党支持率はそれほど大きく下落はしていなかったと思われる。
そう言い切れるのは無党派層の、この間の増加である。5月までの5か月間はほぼ38%台で大きな変動がなかったが、6月には前月比で+2.4ポイント、7月には+6.2ポイントと大きく増えているのだ。つまり自民党支持層の自民離れが無党派層の拡大につながったといっていいだろう。
最近の選挙は無党派層が大きなカギを握っているといわれる。都議選で既成政党が共産党と都民フと協定を結んだ公明党を除いて軒並み惨敗したのも、自民に愛想尽かしをした元自民支持層を含む無党派層の動向が大きく作用したと考えてよいだろう。その証拠に、都議選を含む最近の地方選挙の投票率は、すべて前回を大幅に上回っている。前回の衆院選について私は憲政史上空前の低投票率になると予測してブログにも書いた。メディアは軒並み、その前の投票率程度と予測していたが、結果は私の予測のほうが当たった。
前回の衆院選は、争点がまったくなかった。安倍総理は消費税増税の延期を争点にしようとしたのだが、民主党がのってこなかった。やむを得ず安倍総理は「アベノミクスの是非を国民に問う」という、争点になりえない争点をでっち上げて解散総選挙に打って出た。当時民主党は別にアベノミクスを批判していたわけではないので、有権者がしらけるのは当たり前だった。
ただ、選挙直前になってメディアが一斉に「自民300を超す勢い」という調査報道をしたため、冗談じゃないと怒った無党派層の一部が投票所に足を運んだ。その無党派層が消去法で投票したのが共産党だった。そのため投票率は私が予想したより上回ったが、憲政史上最低の投票率は記録した。
この傾向は前回の衆院選以降、ずっと続いている。別に日本国民が左傾化しているわけではないのだが、自民党には票を入れたくない、かといって民主党も当てにできない。公明党もバックが創価学会だからいやだ。となると、そういう無党派層の受け皿は共産党しか残らない。消去法の選択肢で共産党が伸びているのは、そういう理由でしかない。現に、NHKの政党支持率の推移を見れば一目瞭然である。NHKの調査では2月の共産党支持率が4.4%と、この月だけ公明党の支持率を上回っているが、同じ月の内閣支持率は今年に入って最高の58%を記録している。おそらくコンピュータが無差別に選んだサンプルが結果的に偏ったものになったのではないかと思う。だから2月を除けば共産党の支持者が増えだしたとは言えないことがわかる。
問題は2大政党による政権交代を可能にするために行われた小選挙区制導入が、結果的には失敗だったということだ。小選挙区制導入後、政権交代は2回あった。最初は細川内閣の誕生であり、2度目は民主党政権だった。そういう意味では小選挙区制導入によって政権交代が可能になったとは言える。
だが、細川内閣は野合政権であり、民主党政権は野合政党政権だった。そのため政権内で総理の求心力が最初からなく、足の引っ張り合いで何も決められない政権でしかなかった。細川内閣と民主党政権を生んだ無党派層が、何も決められない野合勢力にそっぽを向いたのは当然と言えば当然すぎる結果である。
無党派層によって308という空前の衆議院の議席を与えられた旧民主党が、なぜその後無党派層からそっぽを向かれたのか…その総括なしに数の論理に血道をあげて江田グループと再び野合した民進党に対する期待感を、無党派層は今ほとんど持っていない。その証拠に、民進党への支持率は今年に入って低迷の一途をたどっている。安倍内閣が誕生以来最低の支持率を記録した7月ですら民進党の支持率は前月より2.1ポイントも下落している。もはや民進党は政権を狙える政党の体をなしていないと言わざるを得ない。
もちろん自民党も一枚岩ではない。だが、55年体制が続く中で党内の主導権争いは続いたが、いったん総裁が決まれば足の引っ張り合いはとりあえず影をひそめる。その結果、政権の担い手として決めることができる政党として、常に政局の中心にいた。そういう「大人の政党」には、いまの民進党はなりえない。蓮舫氏の「二重国籍」問題といった基本的人権にかかわるような足の引っ張り合いをやっているうちは、無党派層から振り向いてはもらえない。
蓮舫氏が代表を辞任した以上、早急に次の代表を決めなければならないが、いま立候補者として取りざたされている前原・枝野・玉木氏のだれが代表選に勝利するかはわからないが、だれが勝つにせよ決まったら足の引っ張り合いはしないという紳士協定を選挙の前に結んだほうがいいだろう。
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