名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(522);向い飛車に棒銀(加藤一二三)

2017-05-17 | 大山将棋研究
☆ 昨日の復習

後手番大山先生の次の手は?


☆ 今日の棋譜
昭和55年2月、加藤一二三先生と第29期王将戦第3局です。


大山先生の向い飛車で

57銀型。加藤先生は棒銀です。

46銀から固められるので、36歩は形ではあるのですが、後で問題になりました。

大山先生は対棒銀で75同歩と取ることも多いです。

端に角を出るのは少し強引なさばき方です。居飛車としては76歩に66銀と出られる形なら、74飛や71飛もありますが、66には金銀が利いているので

94歩。73歩同桂75飛で銀と角の取り合いです。

大山先生は銀を手放して桂馬をとれるからよし、という読みでした。

ところが65歩と突かれ、王手飛車があります。36歩がたたりました。

65同歩から香と飛の取り合いですが、駒得で良し、ではありません。

桂を取られ、73の桂にも逃げられ(65同飛は62香)

24桂を利かされ

やっと65桂を取ったら角を打たれます。よいことがないですね。

85飛に47角成でも悪いですが、94角もあります。飛をつないで受けますが、あとは加藤先生がどう寄せるかだけです。

普通に飛を取って8段目から寄せます。

端に手をつければ攻め駒は十分。

大山先生は端を謝らずに、半分形作りで攻めを見せます。

加藤先生は馬を切って寄せに出ました。

11角成を催促して竜を使い

詰めろがかかるようになればもう少し。

一度31金と手を戻し

詰み筋です。

投了図。

大山先生でもタイトル戦で王手飛車の筋をうっかりするのですから、我々が両取りを食らっても仕方ないですね、となぐさめられるような将棋でした。棒銀に75同歩と取るのは、一気に良くなるかもしれませんが、失敗するとひどいのです。本譜は棒銀が角と交換できたということになるのですから、ちょっと振り飛車が無理をしている感じです。
形勢が良くなると好手が生じやすくなるわけで、加藤先生の寄せを学びましょう。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山十五世名人
後手:加藤一二三王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 5六歩(57)
4 8五歩(84)
5 7七角(88)
6 5四歩(53)
7 8八飛(28)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 3四歩(33)
11 6六歩(67)
12 6四歩(63)
13 4八玉(59)
14 4二玉(51)
15 3八玉(48)
16 3二玉(42)
17 2八玉(38)
18 5二金(61)
19 3八銀(39)
20 7四歩(73)
21 5八金(69)
22 4二銀(31)
23 5七銀(68)
24 7三銀(62)
25 6七金(58)
26 8四銀(73)
27 1六歩(17)
28 1四歩(13)
29 3六歩(37)
30 7二飛(82)
31 7八飛(88)
32 7五歩(74)
33 同 歩(76)
34 同 銀(84)
35 9五角(77)
36 9四歩(93)
37 7三歩打
38 同 桂(81)
39 7五飛(78)
40 9五歩(94)
41 8三銀打
42 7一飛(72)
43 8二銀(83)
44 6五歩(64)
45 同 歩(66)
46 9九角成(22)
47 7一銀成(82)
48 8九馬(99)
49 7八歩打
50 6五桂(73)
51 4六銀(57)
52 8八馬(89)
53 5五歩(56)
54 2四桂打
55 3七銀(38)
56 4四香打
57 6五飛(75)
58 8三角打
59 8五飛(65)
60 9四角(83)
61 8一飛打
62 4六香(44)
63 同 歩(47)
64 7八馬(88)
65 5七金(67)
66 8五角(94)
67 同 飛成(81)
68 9八飛打
69 4八桂打
70 6八馬(78)
71 5九香打
72 1五歩(14)
73 5四歩(55)
74 1六歩(15)
75 6六角打
76 1七歩成(16)
77 同 桂(29)
78 5七馬(68)
79 同 香(59)
80 4七金打
81 2六歩(27)
82 6八飛成(98)
83 1一角成(66)
84 5七龍(68)
85 3八香打
86 1六銀打
87 3九玉(28)
88 3一金(41)
89 7四角打
90 3七金(47)
91 同 香(38)
92 2七銀成(16)
93 3八金(49)
94 2八銀打
95 同 金(38)
96 同 成銀(27)
97 同 玉(39)
98 4八龍(57)
99 投了
まで98手で後手の勝ち



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20170517今日の一手(その509);受けのテクニック

2017-05-17 | 今日の一手

20170517今日の一手

4月22日の名南将棋大会から、MさんとNさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
金と角銀の交換で、竜馬と金vs成桂を作りあっています。ほぼ角得なわけで、先手のおおきな駒得です。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は33竜と持ち駒銀で2枚。(54と や34馬や64歩が成れることもあって、将来の攻め駒には困りませんが、現状は2枚です。)
後手の攻め駒は67成桂と78金で2枚。

総合すればやや先手有利です。

☆ 大局観として
先手有利と言ってもその差は小さいです。終盤では駒の損得の効果が薄れますから、玉の堅さのほうが大きいのです。
ここから寄せ合いに行って勝ち、とは言えません。穴熊を攻略するにはかなり手数がかかりますし、駒を渡せない制約があります。
つまり問題図では受けるのが正しいわけです。後手の攻め駒をなくす、まではいかなくても、攻めの継続が難しい状態にする(先手玉に寄せが見えない状態にする)形を作りたいです。後手の攻め駒を減らすとか、囲いを再構築するとか、玉を逃げ出すとか(入玉できれば最高)、できるとよいですね。

まず先に受けるほうが易しいということがあります。問題図の少し前に

こういう図で、64歩77歩成同桂76歩同銀78金と進んだわけですが、上の図では76同銀あるいは78歩と受ければ簡単だったのです。45馬や56銀でも構いません。なにか受けの手を指しておけば十分すぎました。


× 実戦では64歩と垂らした手の継続で63歩成としたのですが

88金同玉に75歩

というのが急所です。どう応じるのもまずくなっていて、75同角78金87玉77成桂96玉76成桂

後手の攻め駒が増えて受けは全くなくなりました。


△ 先ほどは75歩が厳しかったので、75歩と受けておいても74歩

と合わせられたらあまり効果はありません。87銀88金同玉75歩

76歩や76金があり、65銀と受けても73桂で効果なし。これは失敗です。

ただし75歩74歩を入れておけば、他の変化に合流することはできます。(問題図で何か受けて、後手は75歩にほぼ限定して1歩損したことになる。)


○ 素直に78同金は

相手の攻め駒を呼ぶわけで、良くない手のようなのですが、78同成桂に87金

と受けておくのが良い形です。後手は67歩成を実現させたいのですが、57金には45馬

で大丈夫。47銀は取らせてもよいのです。

戻って75歩同角67金と打ち込めば、88銀と受けるか


あるいは65桂と逃げ出して

77成桂63歩成87成桂同玉77金打86玉74歩53角成

と上にかわしていくこともできます。


× 45馬はよい受けの手に見えますが

やはり88金同玉に75歩が急所です。

67銀同歩成同馬76金

後手の攻め駒はまだ2枚ですが、角を渡すことになると受けきりが難しくなります。


× 56銀のほうが良さそうなのですが

75歩に67銀左

と成桂を取り、88金同玉67歩成同銀66歩

これが受かりそうで受からないのです。銀を捨ててでも玉を右に逃げて・・・でも45の歩が働いているので逃げきれません。


持ち駒を打つのはよい受けで87銀打

は有力です。88金同玉に57成桂

というのはありがたく、45馬47成桂63歩成

は優勢です。

87銀打にも75歩はぎりぎりで入りそう。

75同銀88金同玉74歩同銀76歩では

74の銀に受けの効果がないです。

75歩には65銀

とかわして、88金同玉73桂に63歩成

このあたりで寄せ合いに出るしかないです。といっても一直線ではなく、後手の攻めをかわしつつ、駒を渡さないように穴熊を寄せます。あるいは先手玉が上に逃げ出して入玉というのも考えます。


× 桂頭を狙われているので、65桂と逃げ出すのも受けの手で

75歩87銀88金同玉76金

76同銀同歩78歩74銀

桂が居なければ受けやすくなっているのですが、最後の74銀打がしぶとい手で桂取りと角を追う手をみて、かなり受けにくいです。(59角に58歩が利くため。これがなければ先手有望ですが。)


× 87金とかわしておく手もありそうなのですが

実は前にやった78金同成桂87金の形のほうが受けやすいのです。比較してみると不思議に思いますが。
75歩同銀(65銀には73桂)74歩同銀76歩同金75歩

後手は7筋に歩を打っていくだけです。これで77桂を取れます。


△ 79歩も受けの手筋。

小さい駒で受ければ、相手に渡す駒の価値が下がります。75歩に78歩76歩65桂

はまあまあです。

79歩には77金

が難しく、77同金同成桂同角75歩

は受けが無くなっていきます。

角よりも金を残すのは受けのテクニック。77同角と取って

77同成桂同金75歩87銀65桂

78金57桂成45馬

ここも47成桂ならありがたいです。67歩成同金同成桂同馬65角

56銀87角成同玉76銀同馬同歩66銀

こういう進行が一例で、手順を尽くせば先手有利、とはいえここからでも長いです。


☆ まとめ
受けのテクニックというのもいろいろあるのですが
先に受けておくほうが易しい
持ち駒は自陣に打っておくほうが手堅い
狙われている駒は逃げる(特に玉の早逃げが有効)
弱点は補強しておく
小駒で効率よく受ける
大駒を渡して金銀を残すほうが良い時もある
馬や竜で受ける

というのは覚えておきたいです。

心がけとしては
ある程度受けてから攻め合いに持ち込む
受けに回るなら駒得は必要だが、危険を伴う

というのを意識しておきます。


角得くらいになると気が緩むもので、寄せ合って簡単に勝てそうだ、と思いこむとひどい目に合うこともあります。駒得なのですから自玉の安全が第一。問題図の前に7筋を受けておけば簡単でした。(先に受けておくほうが易しい)

75歩は弱点を補強しておくテクニック。問題図の場合はそれでも74歩と合わせてこじ開けられてしまうのですが。

87銀打が無難な手のはずで、持ち駒は自玉のまわりに打っておくのです。駒台の上にあるよりも守りには働いています。

56銀や45馬は番上の駒を活用するわけですからよい手のことが多いです。ただしこの場合は47の銀は取ってもらった方が働いたということになりそうですし、馬を引き付けると馬取りに攻められて厄介でした。

78金と打たれたのですから、狙われているのは88金と77桂です。65桂とかわしておく手、87金とかわしておく手もよい受けになる可能性があります。

78同金同成桂87金というのは、普通は単にかわしておくよりも損なのですが、この場合は77桂に対する利きが後手よりも多くなっています。そこで67金と打たれたら、87金の一手を儲けたようなものです。(後手の金と成桂の位置が変わっただけ)喜んで88銀と受けるスペースができました。
(これは特殊な成功例でしょう。)

小駒で受けるなら79歩です。二歩でなければ68歩と打ちたいです。桂馬があれば79桂とか、小駒で補強できれば相手の攻めが細くなることがあります。



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