あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 海と夕日と岩ガキと_秋の『しまなみ』キャンプツーリング

2010年11月07日 | 旅するシーカヤック
2010年11月6日(土) 朝起きると、いつもの様にMacBookで天気予報をチェック。 『えー、マジ! 日曜日は雨じゃん』 水曜、木曜と続いていた、抜ける様な秋の青空は、残念ながら長続きしないようだ。

この週末は、ニヤックにキャンプ道具一式を積み込み、島に漕ぎ渡って一泊二日の海旅を楽しもうと思っていたが、日曜日に雨の中を漕ぎ戻るのは気がすすまない。

俺にとってシーカヤックとは、生活道具一式を積み込んで海を歩き、誰もいない静かな浜で、独り静かに充実した時間を過ごすための道具。 そして時には偶然出会った地元の漁師さんやおじいちゃん・おばあちゃんから貴重なお話を伺うため、自分の力で島を訪問する道具。 決して修行や鍛錬の道具でも、ましてや争うための道具でもないから、基本的に天気が良く楽しめる日しか海には出ない。
そんな気持ちの良い日だけを選んでも、年間40日から50日は海旅を楽しむことができるのである。
***
この週末は、土曜日は晴天でバッチリ漕げるが、日曜日の朝は雨を覚悟しなければならない。 でも、せっかくだからキャンプツーリングにしたい。 そう、日帰りツーリングとキャンプツーリングは全く別物。 その楽しさは10倍以上差があると思っている。

漕いだ後、温泉でサッパリと潮抜きをし、浜辺に座って海と夕日を眺めながら飲むビール。 日が沈んだ後は、ヘッドランプの明かりで簡単な食事を摂り、時には焚き火を眺めつつ独り静かに物想いながら、チビリチビリと飲るお酒。 これなくして何が人生かっていうくらい、海辺で過ごす一夜は、私にとって、とても大切な時間なのだ。

うーん、そうなると。。。
あそこはどうだ? うん、こっちがいいかな。 いやあ、やっぱりここだ! 『日曜日は雨だっていうから、予定を変えてあそこに行ってくるよ』
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今日の目的地は大三島。 秋の海は人気もなく静かである。 出艇の準備をしていると、バケツやザルを持った方がやってこられた。 スロープに座り、なにやら準備されている。
 
『こんにちは。 あ、こりゃあ岩ガキですね。 今日採られたんですか』 『ほうよ。 潮が引いた時にあっちの方に行ってみんさい。 あるよ』

『もう食べられるんですか?』 『そうじゃね。 11月になったら大丈夫。 でも今年は夏が暑かったからか、少ないのお』 『ほんま夏は暑かったですね。 8月にここに来た時、海に入ったら温泉か思うくらいでしたよ』 『ほうじゃろう』

『これは、どがあにして食べられるんですか?』 『牡蠣飯にしてもええし、味噌汁にいれても美味いよ』 『なるほど。 わしも後で採ってみます。 ありがとうございました』

その後、畑の肥料にするため、流れ着いた藻を拾いに来られた方ともお話しし、海へ。
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明日が雨とは信じられないくらい良い天気で、穏やかな海。 目指す大横島までは、片道30分ほどだ。
 
穏やかな秋の瀬戸内海を、のたりのたりと漕ぎ進む。 『あー、ええ気分や!』
 
大横島に到着すると、島の紅葉を眺めながら、大横島を時計回りに一周し、その後は小横島を半時計回りに一周してみる。
 
一回りした後、小さな浜へとシーカヤックを引き揚げた。 『さて、昼ご飯にしようか。 あー、腹減った』
浜に落ちていたプラスチックのミカン箱を洗って椅子にし、途中で買い込んで来たお弁当を食べ、家でポットに詰めてきた温かいお茶を飲む。

なんちゃってプライベートビーチで過ごす、楽しい一時。 『ごちそうさまでした』
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お昼ご飯を食べている間に潮が引き、岩場を散策すると『岩ガキ』が!
数は多くなく、サイズも小さめだが、一人が夜のおつまみにするには充分だ。 レスキューナイフを使って、少しだけ海の幸をいただいた。 『夜が楽しみだなあ』
 
***
浜に漕ぎ戻り、シーカヤックの潮抜きをして道具を洗って片付ける。 今日は、結局2時間半のツーリング。 その後はマーレグラッシアへ行き、自分自身の潮抜きをしてサッパリ。
『さて、なかなか良い時間じゃないか。 じゃあ行ってみようかな』 そう、今日ここ大三島に来た目的はもう一つあるのだ。
 
『鷲ヶ頭山』 ここからの瀬戸内の眺望がお気に入りなのだ。 いつか、ここから夕日を眺めてみたいと思っていたのである。
 
少し靄がかかっているが、やはりここからの眺めは最高である。
 
日が沈むまでの約1時間。 誰も来ない山の中腹で、次第に傾いていく夕日を静かに眺める。
 
金色に輝く瀬戸内の海。 なんて美しいのだろう。

『ああ、やはり今日は大三島にして正解だった!』 え? 男一人で夕日を眺めて楽しいかって? そりゃあ楽しいに決まっているじゃないか!
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日が沈むと、再び浜へ。 まだ明るさが残る中、テントを張り、炭火を熾して夕食の準備に取り掛かる。 今日は、『里山コンロ』で獅子唐と茄子、ピーマンを炭火焼。
 
昼間に小横島で採取してきた『岩ガキ』 半分は、オリーブオイルで炒め、クレージーソルトをパラリと振る。 さて、どんなお味かな?
『パクリ』 うーん、これは旨い! 小さな岩ガキの、濃厚な味と海の香り。 これはオリーブオイル&ソルトと相性ピッタリだ。 これは堪らんと、ビールを『グビリ』

残りの岩ガキは、水から茹でて味噌汁に。 これまた、口の中に瀬戸内海が広がっていく。 いやあ、岩ガキ最高!
 
里山コンロの残り火で暖をとりつつ、ビールをグビリ、焼酎をチビリ。 『やはり、俺にはこんな時間が必要だ』
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2010年11月7日(日) まだ暗い中、テントの中で目を覚ますと、雨の音が聞こえてきた。 いやあ、天気予報って、ほんとよく当たるよなあ。
でも雨が降るという予報だったからこそ、ここを選んだのだ。 ショパンの調べの様な雨音を聞きながら、快適なテントの中でiPodを取り出し、目覚めの落語。

6時にはテントから這い出して、朝食の準備。 今朝は、昨日買っておいたかき揚げを入れた天婦羅うどん。
さすがに晩秋の朝は冷える。 今朝は雨なので放射冷却がなく、冷え込みは和らいだ方だが、それでも温かいうどんが体を中から暖めてくれる。
 
『ごちそうさまでした』 食事を終え、道具を片付け、お湯を沸かしてコーヒーを楽しむ。 キャンプの朝、海を眺めながら飲むコーヒーは、俺にとってキャンプツーリングの楽しみの一つ。

クルマに荷物を積み込んでいると、船で釣りに出ると言う方が二人来られた。
『これから出られるんですか?』 『うん、出ようかどうしようか考えよるんよ』 『今は、何が釣れるんですか?』 『アジとハゲ』
『ハゲ、良いですね! 肝は?』 『おお、もうだいぶおおきゅうなっとるで』 『そりゃあ、堪らんですね』
もう一人の方は、昨日の夕方お会いした方。
『お、昨日はあれからまた漕ぎに出たんか?』 『いいえ、あれからはご飯をつくって、ビールを飲みよりました』 『ほうか、一人で?』 『ええ、一人です。 独り静かに浜で飲む酒が美味いんですよ』
『寒うなかったんか』 『大丈夫。 冬用のシュラフを持ってきましたからねえ』
***
『じゃあ、失礼します』と、浜を後にした。 いつもならこのまま家路につくのだが、今日はちょっと寄り道してみよう。

生口島に立ち寄り、
 
一度行ってみたかった、クルマ一台がやっと通り抜けられる『素堀りのトンネル』を抜け、
  
お土産に、『玉木商店のチキン』と『ドルチェのジェラート』を購入した。

天気予報がバッチリ当たり、予報を見て急遽変更したキャンプのプランもピッタリと大正解。 今年45漕ぎ目となった『しまなみ』キャンプツーリングは、『海と夕日と岩ガキ』をたっぷりと堪能。 あー、またまた良い週末であった。

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