あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 2015年の初旅は、公共交通機関で行く俵山温泉・連泊湯治(テキスト+写真版)

2015年01月04日 | 旅するシーカヤック
*** ブログに於ける写真有無による印象の差異を確認する実験として、昨日のテキスト版に続き、これはテキスト+写真版で ***

2015年1月2日(金) 今年最初の『一人旅』の目的地は、俵山温泉。

昨年痛めた肘を、お気に入りの温泉でゆっくりと癒し、今年の初漕ぎに備えようという訳。
今回は、俵山温泉を訪れたときにはいつもお世話になるお気に入りの宿、『たまや』さんに泊まり、久々となる一泊二日の連泊湯治。
強風や雨、雪などなど、荒れた天候の多い今回の冬休みの後半をゆっくり過ごすには、最適のプラン。

***

朝5時起きで支度し、玄関まで見送ってくれた妻に、『じゃあ行ってくるよ』 『はい、気をつけて』

徒歩で駅まで行き、小月駅までの切符を買う。
今日乗る列車は下関行きなので、乗り換えなしで小月まで行けるというわけ。
新幹線を使わないので5時間弱を要するが、本を読んだり音楽を聴いたり、景色を眺めていれば、充実した時間が過ごせるはず。

まだ今年二日目の早朝の列車とあって、乗客はまばらである。

夜明け前のまだ暗い中、呉線は海沿いを走る。
広島を越え、宮島口の手前で日の出の時刻。

今日持参した本は、まだ読み終わっていなかった『海賊と呼ばれた男(下)』

岩国、

大畠、

そして徳山。

『海賊と呼ばれた男』の後半には、徳山の製油所建設の話が出てくる。

***

以下、引用。

『製油所は徳山の美しい街の景観を壊すような施設では駄目だという信念を持っていた。 山陽本線から見える姿も美しくあってほしいとUOPに注文をつけていた。 山陽本線沿いに長い緑地帯を作り、樹木や花を植えて、市民が散策できるように遊歩道をこしらえた。 こんな工場は日本で始めてであった』

『製油所内には、来賓用あるいは店員たちの宿泊施設やクラブ、販売店などはいっさい作らせなかった。 そうした施設は徳山の街のものを利用すべきで、製油所が発展すれば、徳山の街も栄えるというのが鐵造の考えだった』

引用終わり。

***

いやあ、本当にすばらしい!
鈍行の山陽本線で旅をしながら、ちょうど徳山あたりでこの下りを読むなんて、これは偶然を装った必然に違いない。

新山口、厚狭。 そして10時53分に、ようやく小月に到着。 長時間ではあるが、充実した読書で、あっという間の旅であった。

小月に着く前頃から、急に雪が降り始めた。 小月駅では、まるで吹雪のような状態に。

12時03分のバスまで1時間ちょっとあるので、昼飯でも食おうかと、吹雪の中、駅の周辺をチェックしてみる。
しかしながら、元々店が少ないのに加え、まだ正月休みの店ばかりで、結局昼食はあきらめ、駅で待つことにする。

いざというときのため、家から持参したドーナツをバックパックから取り出し、駅のベンチに座って食べる。
『うーん、美味い』 甘くておいしいドーナツを食べると、冷えきった体の中で、『ポッ』と胃に微かな炎が灯ったように感じられる。

***

12時03分ちょっと前。 時刻通りバスが到着。

ここから俵山温泉まで、約1時間のバス旅である。

バスの乗客は、10人足らず。

途中で一人降り、二人降りと、途中からは俺だけが乗客という貸し切り状態。

俵山温泉に到着すると、『ありがとうございました』と運転手さんに挨拶し、料金を支払ってバスを降りた。

チェックインにはまだ時間があるのだが、いったん宿へ。

『すみません。 今日から二泊で予約しているんですが、荷物を預かっていただけませんか?』
荷物を預け、一日入り放題の温泉入浴手形を購入し、まずは『白猿の湯』へ。

今日はお客さんが多いようで、浴槽も混雑している。
久しぶりの俵山温泉。

日本最高レベルのPH9.8を誇るという一号湯にザブリ。
『あー。 うう。 おー』いやあ、気持ちええなあ! 思わずうなってしまう。
温めのお湯に浸かり、特に腕と肘をストレッチしながら、ヌルリとした当たりの柔らかいお湯を堪能する。

***

初回は少し短めに30分程度であがった。
まだ、お昼ご飯を食べていないのだ。
食事は、白猿の湯に併設されている『涼風亭』 ここの食事もお気に入り。


『今日のさかなランチ』と生ビール大を注文。

『いただきます』
魚料理を一口食べると、これがなんとも絶品!
皮はパリパリ、身はホクホク。 これに甘辛い絶妙なソースが掛かって、ビールにもご飯にもあうのである。

魚料理をパクリ。 ビールをゴクリ。
再び魚をパクリ。 ご飯をワシワシ。
最高のランチである。 ここまで我慢した甲斐があったというものだ。

『ごちそうさまでした』


料金を支払うとき、『あの魚料理、本当においしかったです』
『ありがとうございます!』 『あの魚は何ですか?』すると、『金目鯛のポワレです』との事。

ポワレって聞いても料理に疎い俺はよく知らないが、れきしのある俵山温泉の湯治場で、ランチに金目鯛のポワレとは、これまた一興ではある。

***

食事を終えると宿に戻り、チェックイン。
ジャージに着替え、こたつに入り、今日一日の日記をつける。

お茶を飲んでしばらく休憩し、夕方にもう一風呂。
今度は露天風呂へも。
雪が落ちる空を見上げ、暖かいお湯に浸かる。 顔と頭が空冷されているので、のんびりまったり、しっかりとお湯を楽しむことができた。

***

午後6時。 食事の時間である。
今回もお世話になっている『たまや』さんは、リーズナブルな料金でおいしい料理が楽しめるの。

部屋に運ばれてきた食事は、正月の雰囲気を味わえるメニューとなっている。
『生ビールありますか?』 『はい、ありますよ』
『サイズは?』 『うちは中だけなんです』
『じゃあ、生中を!』

ビールが運ばれてくると、『いただきます』で食事開始。

刺身をパクリ。 生ビールをグビリ。 『おー、美味い』
ご飯が入った小さなお櫃の蓋を開けると、そこには美しい白米が。

一粒一粒がしっかりと粒感を主張し、ピカピカ、キラキラと美しく輝く、美味そうなご飯。

これぞ、日本のお米!

刺身をパクリ。 そしてご飯をパクパク。 お吸い物をズイズイ、ズルリ。
このお吸い物も、絶妙の味付け。 具沢山とか豪華な具材が入っているわけではなくシンプルなのだが、なんともいえない旨味と、ほのかな柚の香りがたまらない。

俺は、美味い味噌汁でもビールが飲めるので、このお吸い物も十分一品のつまみになる。

『あー、最高や!』

その後も生ビールを飲みながら、おいしいおかずを堪能した。
『ごちそうさまでした』 大満足の夕食である。

たっぷりとヌルヌル温泉を楽しみ、ビールを飲みながら旨い金目鯛のポワレランチをいただき、これまた美味い夕食で生ビールをゴクリ。

食後は、iphoneで音楽を楽しみながらしばし休憩し、再び温泉へ。

喧噪の浮き世を離れ、歴史ある湯治場の静かな俵山温泉で、のんびりまったりと過ごす一日は、こうして過ぎていく。

***

2015年1月3日(土) 朝、目が覚める。 時計をみると、6時03分。
11時に寝て、朝6時まで目が覚めることなく熟睡できた。
温泉で体を癒し、おいしい食事をいただき、適度なお酒を飲んで、ぐっすり眠ることができたのである。
なんと爽快な朝であろうか。

6時半になると浴衣に着替え、お風呂へ。
昨日は白猿の湯ばかりだったが、今朝は6時から開いている町の湯へ。
雪こそないが、シンシンと冷えこむ早朝の通りを歩く。早く、暖かいお湯に浸かりたい。

入り口でスタンプを押してもらい、飲泉してお風呂へ。 体を流してから浴槽へザブリ!
『おお』 何も言うことはない。 至福のひととき。

***

8時からは朝食。
今日もピカピカつやつやの、おいしいご飯と味噌汁、イカの入った卵料理にメザシ、漬け物、その他諸々。

朝からたっぷり。

このおいしいご飯が、なによりのごちそう。

この銀シャリと味噌汁、漬け物だけでも十分なくらいである。

うちの家では、南部鉄器製羽釜仕様の高級炊飯器を使っており、外でご飯を食べておいしいと思うことは少ない。
せっかくおかずが美味しくても、肝心のご飯がベタベタだったり、パサパサだったりすることがほとんどなのだが、ここのご飯は本当に美味い。

最後にお茶を飲み、『ごちそうさまでした』

食後は食器を片づけ、炬燵に入り、コーヒーを飲みながら、マーラーの交響曲第5番を聴く。
『いい朝じゃあないか!』

***

今日は晴れて気持ちの良い朝。 ちょっと散策してみるか。

通りには、数少ないが売家の札も。

下道を歩くと、三猿まんじゅうのお店、『松永松琴堂』 朝の6時から開いているというお店である。

『ばら売りありますか?』 『はい、ありますよ。 3つで100円』 『じゃあ、それ下さい』

店の外にでると、さっそく袋から焼きたての三猿まんじゅうを取り出し、パクリ。

まだホカホカ、ぬくぬくであり、寒い朝のおやつとしては嬉しい温もりである。
『うん。 温かい饅頭って、しみじみ美味いなあ』

ちいさな温泉町を散策し、所々で写真を撮り、宿に戻る。

タオルを手に、朝の散策で冷えた体を温めるため温泉へ。

本当に今回は温泉三昧である。

***

宿に戻るとコーヒーをいれ、炬燵で本を開く。
昨日の夜から、『絶叫(葉真中顕)』

お昼ご飯は宿の喫茶店で軽くビールとカレー。
食後は1時間弱ほど散歩して腹ごなし。

そして再び温泉へ。

まさにこの旅は湯治目的の温泉三昧。
この旅の間だけは、世俗のニュースから離れ、頭を空っぽにして、痛んだ肘をアルカリ温泉漬けにし、そしてビールを飲んで飲泉して体の中もリフレッシュ。

その後も、温泉、酒、散歩。。。 『いやあ、ええなあ』

まさに、究極の”のんびりまったり”。

***

二日目の夕食も、刺身に天麩羅、一人用の小鍋、ふくの入ったこれまた美味しい吸い物など充実の献立。

生ビールを飲み、美味しい料理を堪能し、『ごちそうさまでした』

食後は再び本を開く。 『絶叫』
この本を読んでいると、人生なんて本当にその時には気付かないようなほんの些細なキッカケで、大きく変わってしまうのだということを、改めて思い知らさせる。

人生には様々なターニングポイントやジャッジポイントがあり、その時のちょっとした判断や、自分ではどうしようもない状況によって、後の人生に大きな影響を及ぼすものなのだ。

50年以上生きていると、そんなストーリーがとてもリアルなものに感じられる。

人生は一本道。 そこに道は二つない。
"if(もしあの時。。。)"なんて妄想であり、辛いことも嬉しいことも、全てが偶然を装った必然なのである。

***

思いも掛けなかった驚きの結末。
読み終わった本を閉じ、しばし静かな時を過ごす。

その後は、もちろん温泉。
夜になり、人通りも少なくなった道を歩いていく。
今回、散歩も含めてなんどこの通りを歩いただろうか。
そんな二泊三日の湯治も、明日の朝まで。

***

2015年1月4日(日) 朝方、雨の音で目を覚ますが、再び眠りに落ちた。
6時半に起きだし、今回最後のお風呂へ。 これで9回目の入浴である。

普段の温泉なら、一回に1時間弱程度入るのだが、今回は温泉手形があり入浴回数に制限はないので、一回当たり20分程度とし、3ー4時間程度の時間間隔をあけて、ゆったりと温泉を楽しむことができた。

***

これまでの俵山温泉旅は、日帰りか一泊二日であったが、今回は初の二泊三日の逗留。
温泉に入り、本を読む。 温泉に入り、音楽を聴く。 温泉に入り、ビールを飲む。 温泉に入り、散歩を楽しむ。
ただただ、この繰り返し。

本当にゆっくりすることができた。

朝のお風呂に入り、おいしい朝食をいただき、休憩して帰る準備。
明日からは仕事である。 そろそろ浮き世に戻るとするか。

帰りは厚狭駅から新幹線。


***

やはり俵山温泉は良い湯治場である。
『本当にお世話になりました。 また来ます!』

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瀬戸内シーカヤック日記: 2015年の初旅は、公共交通機関で行く俵山温泉・連泊湯治(テキスト版)

2015年01月04日 | 旅するシーカヤック
2015年1月2日(金) 今年最初の『一人旅』の目的地は、俵山温泉。

昨年痛めた肘を、お気に入りの温泉でゆっくりと癒し、今年の初漕ぎに備えようという訳。
今回は、俵山温泉を訪れたときにはいつもお世話になるお気に入りの宿、『たまや』さんに泊まり、久々となる一泊二日の連泊湯治。
強風や雨、雪などなど、荒れた天候の多い今回の冬休みの後半をゆっくり過ごすには、最適のプラン。

*** 今回、ブログに於ける写真有無による印象の差異を確認する実験として、まずはテキストのみ版で ***

朝5時起きで支度し、玄関まで見送ってくれた妻に、『じゃあ行ってくるよ』 『はい、気をつけて』

徒歩で駅まで行き、小月駅までの切符を買う。
今日乗る列車は下関行きなので、乗り換えなしで小月まで行けるというわけ。
新幹線を使わないので5時間弱を要するが、本を読んだり音楽を聴いたり、景色を眺めていれば、充実した時間が過ごせるはず。

まだ今年二日目の早朝の列車とあって、乗客はまばらである。
夜明け前のまだ暗い中、呉線は海沿いを走る。
広島を越え、宮島口の手前で日の出の時刻。
今日持参した本は、まだ読み終わっていなかった『海賊と呼ばれた男(下)』
岩国、そして徳山。
『海賊と呼ばれた男』の後半には、徳山の製油所建設の話が出てくる。

***

以下、引用。

『製油所は徳山の美しい街の景観を壊すような施設では駄目だという信念を持っていた。 山陽本線から見える姿も美しくあってほしいとUOPに注文をつけていた。 山陽本線沿いに長い緑地帯を作り、樹木や花を植えて、市民が散策できるように遊歩道をこしらえた。 こんな工場は日本で始めてであった』

『製油所内には、来賓用あるいは店員たちの宿泊施設やクラブ、販売店などはいっさい作らせなかった。 そうした施設は徳山の街のものを利用すべきで、製油所が発展すれば、徳山の街も栄えるというのが鐵造の考えだった』

引用終わり。

***

いやあ、本当にすばらしい!
鈍行の山陽本線で旅をしながら、ちょうど徳山あたりでこの下りを読むなんて、これは偶然を装った必然に違いない。

新山口、厚狭。 そして10時53分に、ようやく小月に到着。 長時間ではあるが、充実した読書で、あっという間の旅であった。
小月に着く前頃から、急に雪が降り始めた。 小月駅では、まるで吹雪のような状態に。

12時03分のバスまで1時間ちょっとあるので、昼飯でも食おうかと、吹雪の中、駅の周辺をチェックしてみる。
しかしながら、元々店が少ないのに加え、まだ正月休みの店ばかりで、結局昼食はあきらめ、駅で待つことにする。

いざというときのため、家から持参したドーナツをバックパックから取り出し、駅のベンチに座って食べる。
『うーん、美味い』 甘くておいしいドーナツを食べると、冷えきった体の中で、『ポッ』と胃に微かな炎が灯ったように感じられる。

***

12時03分ちょっと前。 時刻通りバスが到着。
ここから俵山温泉まで、約1時間のバス旅である。

バスの乗客は、10人足らず。
途中で一人降り、二人降りと、途中からは俺だけが乗客という貸し切り状態。

俵山温泉に到着すると、『ありがとうございました』と運転手さんに挨拶し、料金を支払ってバスを降りた。

チェックインにはまだ時間があるのだが、いったん宿へ。
『すみません。 今日から二泊で予約しているんですが、荷物を預かっていただけませんか?』
荷物を預け、一日入り放題の温泉入浴手形を購入し、まずは『白猿の湯』へ。

今日はお客さんが多いようで、浴槽も混雑している。
久しぶりの俵山温泉。

日本最高レベルのPH9.8を誇るという一号湯にザブリ。
『あー。 うう。 おー』いやあ、気持ちええなあ! 思わずうなってしまう。
温めのお湯に浸かり、特に腕と肘をストレッチしながら、ヌルリとした当たりの柔らかいお湯を堪能する。

***

初回は少し短めに30分程度であがった。
まだ、お昼ご飯を食べていないのだ。
食事は、白猿の湯に併設されている『涼風亭』 ここの食事もお気に入り。

『今日のさかなランチ』と生ビール大を注文。

『いただきます』
魚料理を一口食べると、これがなんとも絶品!
皮はパリパリ、身はホクホク。 これに甘辛い絶妙なソースが掛かって、ビールにもご飯にもあうのである。

魚をパクリ。 ビールをゴクリ。
再び魚料理をパクリ。 ご飯をワシワシ。
最高のランチである。 ここまで我慢した甲斐があったというものだ。

『ごちそうさまでした』

料金を支払うとき、『あの魚料理、本当においしかったです』
『ありがとうございます!』 『あの魚は何ですか?』すると、『金目鯛のポワレです』との事。

ポワレって聞いても料理に疎い俺はよく知らないが、れきしのある俵山温泉の湯治場で、ランチに金目鯛のポワレとは、これまた一興ではある。

***

食事を終えると宿に戻り、チェックイン。
ジャージに着替え、こたつに入り、今日一日の日記をつける。

お茶を飲んでしばらく休憩し、夕方にもう一風呂。
今度は露天風呂へも。
雪が落ちる空を見上げ、暖かいお湯に浸かる。 顔と頭が空冷されているので、のんびりまったり、しっかりとお湯を楽しむことができた。

***

午後6時。 食事の時間である。
今回もお世話になっている『たまや』さんは、リーズナブルな料金でおいしい料理が楽しめるの。

部屋に運ばれてきた食事は、正月の雰囲気を味わえるメニューとなっている。
『生ビールありますか?』 『はい、ありますよ』
『サイズは?』 『うちは中だけなんです』
『じゃあ、生中を!』

ビールが運ばれてくると、『いただきます』で食事開始。

刺身をパクリ。 生ビールをグビリ。 『おー、美味い』
ご飯が入った小さなお櫃の蓋を開けると、そこには美しい白米が。

一粒一粒がしっかりと粒感を主張し、ピカピカ、キラキラと美しく輝く、美味そうなご飯。
これぞ、日本のお米!

刺身をパクリ。 そしてご飯をパクパク。 お吸い物をズイズイ、ズルリ。
このお吸い物も、絶妙の味付け。 具沢山とか豪華な具材が入っているわけではなくシンプルなのだが、なんともいえない旨味と、ほのかな柚の香りがたまらない。

俺は、美味い味噌汁でもビールが飲めるので、このお吸い物も十分一品のつまみになる。

『あー、最高や!』

その後も生ビールを飲みながら、おいしいおかずを堪能した。
『ごちそうさまでした』 大満足の夕食である。

たっぷりとヌルヌル温泉を楽しみ、ビールを飲みながら旨い金目鯛のポワレランチをいただき、これまた美味い夕食で生ビールをゴクリ。

食後は、iphoneで音楽を楽しみながらしばし休憩し、再び温泉へ。

喧噪の浮き世を離れ、歴史ある湯治場の静かな俵山温泉で、のんびりまったりと過ごす一日は、こうして過ぎていく。

***

2015年1月3日(土) 朝、目が覚める。 時計をみると、6時03分。
11時に寝て、朝6時まで目が覚めることなく熟睡できた。
温泉で体を癒し、おいしい食事をいただき、適度なお酒を飲んで、ぐっすり眠ることができたのである。
なんと爽快な朝であろうか。

6時半になると浴衣に着替え、お風呂へ。
昨日は白猿の湯ばかりだったが、今朝は6時から開いている町の湯へ。
雪こそないが、シンシンと冷えこむ早朝の通りを歩く。早く、暖かいお湯に浸かりたい。

入り口でスタンプを押してもらい、飲泉してお風呂へ。 体を流してから浴槽へザブリ!
『おお』 何も言うことはない。 至福のひととき。

***

8時からは朝食。
今日もピカピカつやつやの、おいしいご飯と味噌汁、イカの入った卵料理にメザシ、漬け物、その他諸々。
朝からたっぷり。

このおいしいご飯が、なによりのごちそう。
この銀シャリと味噌汁、漬け物だけでも十分なくらいである。

うちの家では、南部鉄器製羽釜仕様の高級炊飯器を使っており、外でご飯を食べておいしいと思うことは少ない。
せっかくおかずが美味しくても、肝心のご飯がベタベタだったり、パサパサだったりすることがほとんどなのだが、ここのご飯は本当に美味い。

最後にお茶を飲み、『ごちそうさまでした』

食後は食器を片づけ、炬燵に入り、コーヒーを飲みながら、マーラーの交響曲第5番を聴く。
『いい朝じゃあないか!』

***

今日は晴れて気持ちの良い朝。 ちょっと散策してみるか。
下道を歩くと、三猿まんじゅうのお店、『松永松琴堂』 朝の6時から開いているというお店である。
『ばら売りありますか?』 『はい、ありますよ。 3つで100円』 『じゃあ、それ下さい』

店の外にでると、さっそく袋から焼きたての三猿まんじゅうを取り出し、パクリ。
まだホカホカ、ぬくぬくであり、寒い朝のおやつとしては嬉しい温もりである。
『うん。 温かい饅頭って、しみじみ美味いなあ』

ちいさな温泉町を散策し、所々で写真を撮り、宿に戻る。
タオルを手に、朝の散策で冷えた体を温めるため温泉へ。

本当に今回は温泉三昧である。

***

宿に戻るとコーヒーをいれ、炬燵で本を開く。
昨日の夜から、『絶叫(葉真中顕)』

お昼ご飯は宿の喫茶店で軽くビールとカレー。
食後は1時間弱ほど散歩して腹ごなし。

そして再び温泉へ。

まさにこの旅は湯治目的の温泉三昧。
この旅の間だけは、世俗のニュースから離れ、頭を空っぽにして、痛んだ肘をアルカリ温泉漬けにし、そしてビールを飲んで飲泉して体の中もリフレッシュ。

その後も、温泉、酒、散歩。。。 『いやあ、ええなあ』

まさに、究極の”のんびりまったり”。

***

二日目の夕食も、刺身に天麩羅、一人用の小鍋、ふくの入ったこれまた美味しい吸い物など充実の献立。
生ビールを飲み、美味しい料理を堪能し、『ごちそうさまでした』

食後は再び本を開く。 『絶叫』
この本を読んでいると、人生なんて本当にその時には気付かないようなほんの些細なキッカケで、大きく変わってしまうのだということを、改めて思い知らさせる。

人生には様々なターニングポイントやジャッジポイントがあり、その時のちょっとした判断や、自分ではどうしようもない状況によって、後の人生に大きな影響を及ぼすものなのだ。

50年以上生きていると、そんなストーリーがとてもリアルなものに感じられる。

人生は一本道。 そこに道は二つない。
"if(もしあの時。。。)"なんて妄想であり、辛いことも嬉しいことも、全てが偶然を装った必然なのである。

***

思いも掛けなかった驚きの結末。
読み終わった本を閉じ、しばし静かな時を過ごす。

その後は、もちろん温泉。
夜になり、人通りも少なくなった道を歩いていく。
今回、散歩も含めてなんどこの通りを歩いただろうか。
そんな二泊三日の湯治も、明日の朝まで。

***

2015年1月4日(日) 朝方、雨の音で目を覚ますが、再び眠りに落ちた。
6時半に起きだし、今回最後のお風呂へ。 これで9回目の入浴である。

普段の温泉なら、一回に1時間弱程度入るのだが、今回は温泉手形があり入浴回数に制限はないので、一回当たり20分程度とし、3ー4時間程度の時間間隔をあけて、ゆったりと温泉を楽しむことができた。

***

これまでの俵山温泉旅は、日帰りか一泊二日であったが、今回は初の二泊三日の逗留。
温泉に入り、本を読む。 温泉に入り、音楽を聴く。 温泉に入り、ビールを飲む。 温泉に入り、散歩を楽しむ。
ただただ、この繰り返し。

本当にゆっくりすることができた。

朝のお風呂に入り、おいしい朝食をいただき、休憩して帰る準備。
明日からは仕事である。 そろそろ浮き世に戻るとするか。

『本当にお世話になりました。 また来ます!』

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