兵藤恵昭の日記 田舎町の歴史談義

博徒史、博徒の墓巡りに興味があります。博徒、アウトローの本を拾い読みした内容を書いています。

アウトロー・ヤクザ滅亡の時代到来か?

2020年05月25日 | 歴史
「山口組の平成史」山之内幸夫著・ちくま新書を読んだ。「ヤクザにとって平成の時代は天国で始まり、地獄で終わった」と言う。著者は山口組の元顧問弁護士であり、建造物損壊教唆の罪で弁護士資格を失った。一種のヤクザに殉教した弁護士である

60歳の老組員が郵便局のアルバイトをしたら「暴力団組員である身分を隠して働いた」のが詐欺罪にあたるとして逮捕された。家族のため、40年加入した生命保険の契約見直しを担当者に勧められ、応じたら「暴力団構成員であることを申告しなかった」として逮捕された。

ある暴力団専門のフリー記者がヤクザに実施したアンケート結果が出ている。アンケートとは「あなたは年金保険料を払っていますか?」である。

それによると「①払っていない 71% ②以前は払っていた 20% ③払っている 9%」である。70%が年金保険料を払っていない。保険料支払期間は短縮され10年になった。10年間保険料を払っていなければ年金も受給されない。

年金は反社でも受給されるべき権利。日本国民であれば当然の権利。保険料を払っていないのは無収入、無職等による貧困がその原因にある。国民年金は前年度所得が単身で57万円以下なら保険料全額免除申請ができる。支払期間短縮化によって年金支給の可能性は従来より拡大された。

ヤクザは銀行口座の開設ができない。よって受給方法も課題となる。しかし郵便局での直接受給の方法もある。更に全額免除申請なら保険料納付ゼロでも受給は可能。しかし暴力団構成員は生活保護申請しても反社勢力として拒絶される。構成員の貧困化は大きな問題である。

バブルで大儲けしたのは一部のトップのみ。下部の組員は奉納金を納入する被搾取者である。暴力団も正規(エリート)と非正規(非エリート)の階級社会がある。バブル期から経済ヤクザとして生き残ったのは一部分のみ、六代目山口組くらいである。

高齢化は暴力団社会でも進んでいる。構成員の年齢別割合は、昭和59年当時、50歳未満は89.5%を占めた。30年後の平成26年には、50歳未満は59.5%に減少。若年層の半グレ化も影響している。

50歳以上は、昭和59年当時10.5%、平成26年には40.5%に増加した。50歳以上の内訳は、50歳台18.5%、60歳台15.8%、70歳以上6.2%と高齢化が進む。平均年齢は50歳以上で、持病持ちも多い。

神戸山口組員殺害の容疑者・丸山俊夫弘道会組員は68歳、人口透析治療中という。無期刑は避けられず、刑務所で一生を終える可能性も高い。暴力団社会の高齢者問題である。釈放された高山清若頭は72歳、山口組篠田組長は77歳、対立する神戸山口組井上組長は71歳。後期高齢者目前の世代。

構成員数減少も大きい。構成員は、平成20年に40,400人から平成29年には16,800人まで減少した。警察の取り締まり強化で、構成員の生活維持ができないためだ。

暴力行為がなくなることは良いことだ。しかし善悪は別として、社会の多様性、アウトローの存在を認める余裕もない。少数化した暴力団は先鋭化し、抗争も激化する。暴力団社会も定年なしの人生100年時代だろうか?

山口組は六代目山口組、神戸山口組、任侠山口組の三つに分離した。現状、表立った抗争はできない。三つが共存することもできない。結局、六代目山口組に統合される形で残り二つが自己消滅する道しかない。その中で六代目山口組も徐々に衰退していくだろう。


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次郎長妻・三代目お蝶の仲人・西尾の治助


愛知県蒲郡市にある尾崎士郎の筆による形原一家の碑。形原一家は清水次郎長の兄弟分・形原の斧八が初代。初代お蝶が旅の途中、尾張で療養中、よく支援したことで知られている。


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