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早くもチームを変えた 松田浩 監督とそのサッカー▪明治安田生命J2リーグ 第13節 V·ファーレン長崎-ギラヴァンツ北九州

2021-05-12 12:00:00 | V・ファーレン/ヴィヴィくん
5/3。V·ファーレン長崎の監督が吉田孝行氏から松田浩氏に交代。


吉田さんには申し訳ないですが、監督交代はやむを得なかったと思います。ただ、後任が松田さんということに関してはこれからもアカデミーをプロデュースして欲しかったという気持ちがあるので、手放しで喜べない部分があります。しかし、トップチームを建て直してくれる期待は大きく持っています。



試合で指揮するのは13節·北九州戦からということですが、このインタビューを聞く限り、12節·秋田戦の前からチームには関わっていらしたのかなと。秋田戦までにはほとんど時間がなかったでしょうけれど。

やはり、メンタル面、戦術面、両方に対してわかりやすいアプローチがありそうだと感じます。どちらも必要なことです。




5/9。1-0。今季初の無失点と共に松田監督の初陣を飾りました。ちょっと出来すぎな展開なような気もしますが、松田監督の采配が目に見える形で変化を与え、それが結果として現れたと言って良いでしょう。


それを少し紐解いてみたいと思います。


·ゾーンディフェンス
松田監督の代名詞はゾーンディフェンス。これは欧州ではすでに浸透しているものなので、日本で特筆されるのはまだまだということで複雑な気持ちになりますが、とにかくアカデミーではすでに定着しているこの戦術がトップチームにも採り入れられるのは歓迎すべきことです(普通逆じゃない?)。


サッカーで重要なのはゴールを奪うことと同時に奪われないこと。奪われないために守備網を形成するわけですが、ゾーンディフェンスは4-4-2が基本。わかりやすく言うならば、松田監督のゾーンディフェンスは、この「4-4-2ブロックの中にボールを入れさせないことが第一」になります。そのために縦横にコンパクトであることが重要です。相手の配置は関係なく、「ボールの位置」「味方の位置」を基準に全体が連動して動きます。

2トップを軸に、ボールを中に入れさせないようにコースを塞ぎながら外に外に追い出していき、それでも中に入れられたときには素早く囲い込んで奪うか、追い出します。

また、コンパクトであるがゆえに、DFラインの裏が空いたり、ブロックが片方のサイドに寄るときに逆サイドが空いたりしますが、それに対してはボールに近い選手が寄せて蹴らせないようにしたり、DFラインの選手がボール保持者の蹴るタイミングやコースを予測してスライドして対応することが求められます。

これが基本です。松田監督はよく守備ブロックの動きを「イワシの群れのように」という例えを使われますね。



ですので、もし試合を見ていて、ブロックの中に縦パスを通されたり、裏や逆サイドへのロングボールを通される状況が何回も繰り返されるようなら、「上手くいっていないようだ」という指標になるでしょう。

ここで推し贔屓な発言をすれば、アカデミーで松田監督からゾーンディフェンスの指導を受け、もともと予測の鬼である江川湧清にとってはCBとして大きなアドバンテージかもしれませんね。



·松田流ボール保持はサイドハーフが鍵になる
次にボールを保持したときの話です。松田監督の組み立てはDFラインからサイドハーフ(サイドミッドフィルダー)、北九州戦で言えば、10ルアンと19澤田にボールを預けるところまでになります。それが前進のスイッチです。

吉田監督時代からの(もっと言えば手倉森監督時代からの)ように、秋野が2センターバックの間に落ちて両サイドバックが高い位置を取りサイドハーフが中に入ることはしません。そのまま4バックで組み立てます。


例えば、このように16毎熊から10ルアンに縦パスを付けるとします。このとき、10ルアンはワイドに開き、相手のサイドハーフとサイドバックのちょうど中間地点にポジションを取って受けることがポイント。これでボールをコントロールする時間が得られる上に、相手の左サイドバックが10ルアンに食いつけば勝ちです。その背後のスペースを2トップのどちらかか、サイドバックの16毎熊が突くことが出来ますし、実際北九州戦でもそういう場面が何度も見られました。

そうして裏を取る以外にも、サイドハーフが受けてから自身でドリブルで縦に仕掛けたり、2トップに楔のパスを入れてからまたサイドに展開してクロスというパターンもあります。いずれにせよ、ロングボールを放り込む場合を除き、「まずサイドハーフが受けてから」いうのが松田流です。




実はこのやり方は、U-18やU-15でやっている戦術そのものです。アカデミーは松田監督のゾーンディフェンスを落とし込んでいるという情報は得ていましたが、ボール保持もそうだとは知りませんでしたし、北九州戦を見て気づくことが出来ました。




·北九州戦の流れ

これらを踏まえて北九州戦の話をしますと、前半の長崎は北九州にブロックの中にボールを入れられたり、サイドチェンジで逆を取られたりする局面が見られ、ピンチを招いていたと思います。




北九州はボールを保持すると、このように3-5-2に変化し、長崎からすれば2トップに対しては3バックで数的優位を作られ、中盤4枚のところではマークしづらい位置を取られる北九州の配置です。

それでもゾーンディフェンスの基本をしっかりやっていればやられないことは後半を見ればわかります。前半やられる場面があったことの要因について松田監督が語っていました。

--前半はスライドの逆を突くようなサイドチェンジや後ろ3枚で回す相手の立ち位置に苦戦しましたが、後半はほぼ出させなかった。修正した部分は?
3バックでゲームを作る相手に対して、ちょっと食いつき過ぎたところがあったんじゃないかなと思いました。そして、全部が後手後手に回りながら、無理な片方へのスライドがあったときに逆を突かれてしまうというようなことが目についたので、そのあたりをどこからスイッチを入れるのかというところが一番の(修正)ポイントだったと思います。

「食いつき過ぎ」。これは私も吉田監督の間にずっと気になっていた部分なのですが、前を向いてボールを持っている相手に対してわーっと食いついてしまうと、かわされてスペースを与えてしまうリスクがあるんです。食いつき過ぎすにパスコースを切るような間合いやサイドに追い込むようなプレッシャーのかけ方をすることで、後半北九州に回されにくくなったのではないかと思います。


また、攻撃面の指摘も。

--攻撃面についてはどういう修正を?
ボールを失わないということをあまりにも大事にし過ぎることによってポゼッションプレーのみになっていました。ダイレクトプレー、ゴールに向かうプレーというのが点を取るためには必要。そのときにリズムの変化やワンタッチプレーもないと崩しにはなかなかならない。あとはサイドに2人いるシステムですから、サイドをうまく使ってクロスを上げていく。クロスはいつの時代もそこからの得点が多い。それはDFやGKにとって難しい状況だからだと思いますけど、そういうところを攻撃面では狙いとしてやっていました。

「失わないことを第一にするので相手の守備が整ってからでないと攻撃出来ない」。そして、「簡単にクロスを上げない。もしくは上げても合わない」。この点も吉田監督時代の遺産。

北九州戦は特に27都倉にクロスが集まり、後半はダイレクトプレーも増えました。
23米田の決勝点も16毎熊が9富樫とのワンツーで縦に抜けて、しっかりとクロスを合わせて生まれたものです。


就任から一週間も経過しないうちからここまで変われるとは予想外でした。試合中も前半の課題を後半に修正出来た。これだけでも松田監督の指導と采配、そして選手たちの適応力を信じても良いのではないかと思います。



·今後に向けて
あっという間にチームを変えてみせた松田監督ですが、この北九州戦をベースにコンビネーションを高めていけるかが一つの注目ポイント。
次は千葉。同じゾーンディフェンスのチーム。ボール保持する北九州とはまた違い、長崎が保持する時間も増える可能性があります。攻撃面の精度を上げられるか。

そして、チームの約束事とは別に、個でのプラスアルファを出せるか。「自分が正しいと信じたプレーはやり切ってくれ」と松田監督は言っていました。北九州戦では特に毎熊が積極的な突破を見せていましたが、あれは彼自身が信じたプレーに見えましたし、効果的でした。

また、今回メンバー入りしていない14名倉、20大竹がこのチームで力を発揮出来るのか。2人共サイドハーフ候補ですが、どちらかといえば中に入りたがるタイプ。サイドハーフがワイドに張り、縦に仕掛けてクロスを上げることを要求されるこのチームにどう組み込まれるのかも気になるところです。

それに、今回は攻守の切り替えの部分に触れなかったので、そこも掘り下げてみたいです。



松田監督よろしくお願いします!


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