Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

単線の駅舎

2013-07-10 21:28:53 | その他
神奈川県内でも未だ単線で運行されている鉄道路線がある。いずれもJRの経営で県の西側を走る御殿場線と県央を南北に走る相模線の二路線(全線が)である。自宅からの至近駅には相模線の入谷という小さな無人駅がある。本日は調布駅の北口で昔の上司だったKさんと会う約束をする。調布へ出るには、仕事をしていた田園都市沿線在住時代だったら溝口まで行ってそこで南武線に乗り換えるコースが定番だった。南武線は立川へ向かうJR路線だが、途中に稲田堤という駅がある。多摩川沿いに梨栽培園が広がる緑地帯だ。京王線にも稲田堤という駅があってJRと京王線の駅舎は離れているせいか徒歩で数分かかる。京王稲田堤駅から多摩川を渡って調布駅は駅で二つ目という近い距離にある。

その昔は調布付近にあったジャズ系の音楽学校の広告制作を引き受けていて、始終、月刊雑誌向けの版下デザインの校正やコピー文面の打ち合わせがあった。家から直行したり、帰宅途中にそこへ寄るというかなりの売上を占める大きな広告主だった。その学校もとうに消失してしまったが、その時分の縁で調布付近を交錯する品川道だとか、旧甲州街道、鶴川街道等の諸ルートをいやおう無く覚えてしまった。懐かしい調布だが、昔の上司と会う為のアクセスを考えた結果、不便なことこのうえない相模線の入谷駅をあえて利用することにした。

橋本駅で乗り換えて京王相模原線を利用するコースだ。めったに利用することもない無人駅である。電車の到着本数は都市部と比べたらかなり少ない。二十分に一本という橋本行きの平日ダイヤである。座間へ移住してきて相模線は数回利用したことがあった。いずれも夜ばかりだ。先日は入谷駅舎の廻りを囲んでいる闇夜の田圃で蛙の大合唱に包まれて歩いていたらうれしい気分に襲われた。


今日は猛烈な夏日で炎天下は35℃くらいはありそうな気温である。ホームでは電車待ちする女性客がたった一人だけ。脇の方に腰をかけて読書している様子が野原の中の単線駅らしい光景である。闇夜では覗けない相模川の迂回水路の並々とした水列もまじかに眺めることができた。青々と広がっている遠くの畑地に揺れる「カンナ」、路上との境目がない駅舎ホームを往来する黒揚羽蝶、ちいさな無人駅で昔風の夏景色を噛み締めながら上司との邂逅へ向かうのも面白いものだと思った。