Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

ジャズ的情景

2017-08-01 12:56:24 | ラジオ亭便り
スウェーデンのドラゴンというレコード会社から発売されているCDを数枚 持っていて時々聞いている。1953年にEPやLP収録された名バリトンサックス奏者ラース・ガリンの黄金期にふさわしい演奏の数々を再編集したものだ。タイトルは「LARS GULLN VOL1 2 Modern Sounds」と銘打ってあり2巻に分かれている。丁寧且つ誠実な造りのパンフをひっくり返しながら好きなジャズ曲をチョイスしながら聞くのが無人タイムの至福になっている。相変わらず来店客は少なく夏枯れは続きそうだ。主人だけの空間に色濃く流れる「ある夏の出来事」などという曲が2巻目に収録された好きな曲になっている。

これはトロンボーン奏者ベニー・グリーンの演奏が好きだが、繊細とラフを具有するラース・ガリンのアップテンポなバリトンのリリカルプレイも負けてないななどと内的につぶやいていると、近所に住むアナログ達人と散歩達人を兼備したIさんがやってきた。時間は夏の陽も傾きかけた午後4時に近い。Iさんはオーディオ機器、アンティック蒐集、アナログ盤蒐集に関しては荻窪に住むドクター櫻井さんと並ぶ我がラジオ亭の畏友的存在だ。そのIさんがビールを注文する。半端な気だるい時間に来てくれたことに感謝。少しづつ浸かってきたラッキョウはIさんの口に合っているようでこれをツマミとして出す。Iさん向きの曲が何かないかと瞬間に記憶センサーを働かせてみる。

そういえばこのラース・ガリン盤には躍進途上にあるオランダ の歌姫と称されたリタ・ライスが共演した数曲が入っている。丁寧なパンフの片隅写真にはストックホルムのスタジオで休憩時間に寛ぐラース・ガリン、ドラムのブラッシュワークに独自な味わいがある、ウエス・リッケン、若き日のリタ・ライスが笑顔で駄弁っているスナップショットが載っている。けっして美人範疇に属するシンガーではないけど、コクを感じさせる笑顔が素晴らしく若い。リタ・ライスには晩期にもジョニー・グリフィンのしみじみとしたテナーをたっぷりとフィーチャーした「ザッツ・オールド・フィーリン」みたいな情感溢れるスタンダード曲集の優れものがある。これは昔、Iさんにお聞かせしてお気に入りになっているはずである。

彼女の歌う「オーバー・ザ・レインボー」「ヒーズ・ファニー・ザッツ・ウエイ」このすがれた店舗の午後に流れる自信の選曲だ。ラース・ガリンは前者でアルトサックス、後者でバリトンを使い分けしている。ギュンナー・スベンソンのピアノは同じスウェーデンのベンクト・ハルベルグにも勝るリリカルなメロディーで花を添えている。「こましゃくれ」という比喩を思い起こす少しドライな声質と甘い情感がブレンドしてるところは彼女の若い時期からの持ち味で、案の定、ビールを飲みながら聞いているIさんは、店空間、時間帯、そこに流れる独自な全体的情感の三位一体を感じたようで、経験豊かなカフェ文化論見地からお褒めの言葉を頂くことになった。

8月第一週からの予定 平日原則閉店。不定期オープン時間もあります。 土日祝のみ開店。店舗前に予告掲示します。