8日の日曜日は久しぶりの横浜・FAROUTにてオーディオの数奇者が集合、総勢20名の参加者がちょうどよいまとまり具合で三時間ほどイベントを楽しませてもらった。
デジタルオーディオが常識の時代に半世紀以上前のオーディオ文化的にはヘレニズム期とも云うべきモノラル再生時代に拘る古典古代型人種のマイナー且つ真のお洒落ライフを自認する集まりだが、下は32歳、上は76歳とビンテージマニアに年令は関係ない。
持ち寄った機材は戦前のアメリカンオーディオを語るときには欠かすことが出来ないWEの小型モニタースピーカーが二種類、555ドライバーに通称「チリトリ」ホーンと仇名されるWE14Aと励磁型ドライバーWE555が当日の主役だがやや広めのお店にはその小体なチリトリホーンの容姿が心もとないくらいである。
この主役より20数年ほど時代が下がった時期の小さなランドセル箱に収まった30センチフルレンジスピーカーWE728Aが当日の準主役だ。こちらはこの会で真空管アンプを披瀝する機会が多かったKさんの愛蔵品でいつもご自宅で聴かせていただくキャピトルの45回転EPのペギー・リイが凄みで聴かせる「フィーバー」などは、このスピーカーやWE755といった優れた質量を誇る小型スピーカーの為にあるようなレコードで、何回感動させられたことだろう。
主役の14Aスピーカーはロンドンウエスタンの励磁電源を当日の為に奢ったせいか、時間が進む過程でエイジングが働いて見違えるほどジャズボーカルのモノラル再生のリアリズムはかくあるべしといったお手本を示してくれた。
私見では最初の方でドクター桜井さんが至宝品として隠匿していて当日の為に提供してくれたかの薄倖なジャズ的メランコリイを湛えるデッカレコードのビバリイ・ケニーが歌う「Like A Yesterday」の鼻声がかったコケトリイの彫りが意外と浅めで内心がっかりしたこと。
しかしこれは会も半ばで自分が提供した円熟期のドリス・デイが吹き込んだアンドレ・プレビントリオの絶妙な歌伴を得た「DUET」中の「目を閉じて」やジョニイ・ハートマンの「ヴァーモントの月」などを聞き及ぶ過程で誤解だったことに気がついた。やはりボーカルを堂々と鳴らすモノラルスピーカーであることを再認識する。
時間の関係でKさんのフルレンジ728Aは十分に鳴らすまでに至らなかった。これは当日の主装置だったマランツ7のコントロールアンプととても相性がよく作用しなかったことに原因があると思っている。この日はアナログターンテーブルが二台あってふだん接しているGEのバリレラ針以外にも一部ビンテージマニアの間で根強い支持がある大澤式カートリッジが登場した。これはバリレラより厚みの再生感は希薄ながら、高い音域への清涼感溢れる解像力を感じていつか欲しいモノラル針である。
久しぶりの「異口同音」会は皆な年を食って癇症や早とちり人種も散見するようになったが、こんなに優雅なイベントはめったにあるものではなく、古い萩茶碗で美味いお茶漬けをすするようなエレガンスな会としてぜひとも続けたいものだ。