【真人幼稚園の先生が選ぶ絵本・12月の絵本】
今年度も真人幼稚園の先生方による絵本の紹介をおこなっています。これは年間二冊の絵本をそれぞれが書店などで選び、教職員同士で読み聞かせをしたり、それぞれ絵本を選んだ理由や見どころなどを発表し合う、教員研修の一環としておこなっている取り組みです。そこで紹介された作品をぜひ皆様のご家庭にもお勧めしたいという願いから、毎年1・2学期末にこのような形で発表させていただいております。
さあ、今回はどんな絵本が選ばれたのでしょうか? それぞれ作品を選んだ先生がブック・レビューを書いていますので、それらを参考になさって、この冬はぜひ親子で絵本に親しんでみてはいかがでしょうか。なお、それぞれの作品は園の図書に収蔵され、さっそく貸し出しをおこなっています。
『つきのばんにん』 ゾシエンカ 作 あべ弘士 訳 小学館
(本間愛梨先生のレビュー)
日々の暮らしの中で、それまで気にしていなかった物にポイントをおいてみると意外な発見があったり、不思議さに気づいたり、それまでに感じたことがないほど物事に対する意識が生まれ、いつしか心の中や頭の中はひとつのことで一杯になったりしますよね!月がテーマのこの本から、月が欠けていく寂しさから月が満ちていく喜びまで、ひとつの物事への気持ちは大きくも小さくもなるというメッセージが伝わってくる絵本です。「ポッ」と温かくなる深い絵本です。ぜひ手に取って読んでみて下さい。
『せかいいちまじめなレストラン』 たしろちさと 作 ほるぷ出版
(佐藤美樹先生のレビュー)
とある街の一角で、小さなレストランを営むイタメーニョさん。イタメーニョさんはとにかく真面目で、お客様から注文を受けると、材料を調達することから料理を始めます。徹夜明けの猫さんも、優雅にティータイムを満喫していたワニさんも特別なお祝いをしにやって来たカワウソの大家族も、そんなイタメーニョさんの丁寧なおもてなしに大満足です。さて、この日最後のお客様は・・・? イタメーニョさんの人柄と、お料理がとにかく美味しそうに表現されている温かみのある絵のタッチが魅力的なこの一冊。読み終わった後はほっこり優しい気持ちになれますので、寒い季節にもぜひ楽しんで頂きたいと思います。
『デリバリーぶた』 加藤休ミ 作 偕成社
(池田 和先生のレビュー)
デリバリーぶたは、その名の通りどこへでも食べ物を届ける、配達ぶたです。ある日、海の上にいる漁師が、「この広い海で肉が食べたいな」と言うと、空からデリバリーぶたが来て焼きたての焼き鳥を届けに来てくれます。他にも山の上にいる登山家に、外国にいるお姫様に、場所を問わず配達してくれます。どこへでも、何でも届けてくれるデリバリーぶたが身近にいると嬉しいなと思いながら読んでいました。食べ物の絵も、見ていると思わず食べたくなってしまいます。ぜひ手に取ってご覧ください。
『ひとりぼっちのモンスター』 アンナ・ケンプ 作 たなかあきこ 訳 フレーベル館
(伊藤美希先生のレビュー)
むかし、エコーロックという寂しい場所にデイブという、ひとりぼっちのモンスターが住んでいました。ギターを弾いたり、お風呂でくつろいだり、気ままに暮らしていても、いつもひとり。そんな日々を送っていたけれど、ある日小さなお友達ができたのです。ひとりじゃなくなったデイブ。しかし、ある日退屈していた村人たちがモンスターを倒しにやって来たのです。そこで立ち上がった小さな騎士!!誰にだって感情がある。嫌なことをされたら嫌なんだ。そんな当たり前だけれど、とても大切なことを教えてくれる、ラブ&ピースなお話です。とても楽しく、心温まるお話なので、ぜひ一度手に取って読んでみて下さい!!
『おすしがすきすぎて』 サトシン 作 田中六大 絵 学研プラス
(猪俣 愛先生のレビュー)
みなさん、おすしは好きですか? 私は大好きです!この絵本はおすしが大好きな方にはピッタリの一冊です。主人公の男の子はとにかくおすしが大好き。好きすぎて頭の中はおすしだらけ。そんな男の子が考える夢や理想はどんどん膨らみます。子どもの想像力は無限大ですよね。くすっと笑ったり、いいなあと共感したりと、楽しいお話ですので、ぜひお手に取ってご覧ください。
『はらすきー』 あきやまただし 作・絵 講談社
(青木涼香先生のレビュー)
ケンというノラ犬が他のノラ犬たちと暮らす町に、‘はらすきー’という犬がやって来ます。ケンたちははらすきーにみんなで集めた食べ物がある、秘密の場所を教えますが、ある日食べ物が全てなくなっていました。犯人ははらすきーでした。悪いと分かっていても我慢できないはらすきー。そんなはらすきーを許せないノラ犬たち。はらすきーを気に掛けるケン。それぞれの視点から見てみると、それぞれの思いがわかります。可愛らしいタイトルや絵とは裏腹に、少し難しい話ですが、子どもから大人まで読んでほしい作品です。読み終わった後はぜひお子さんやご家族で意見を交わしてみて下さい。
『ほんやねこ』 石川えりこ 作 講談社
(鎌田千秋先生のレビュー)
本屋のオーナー「ほんやねこ」はいつものように仕事を終えるとお散歩に出かけます。ある日うっかり窓を閉め忘れてしまい、大変なことに・・・。強い風が吹き込み、棚の絵本がめくられて物語の人たちを窓の外へと連れて行ってしまったのです。さて、「ほんやねこ」は物語の人たちを無事に絵本の中に連れ帰ることができるのでしょうか? 絵本の色彩は落ち着いたモノトーンにほんの少し色が使われていて、より一層、物語の世界が懐かしく蘇ってくるような雰囲気を感じます。ぜひページをめくりながら「ほんやねこ」と一緒に物語の人たちを探してみて下さい。
『パンどろぼう』 柴田ケイコ 作 ㈱KADOKAWA
(川﨑里紗先生のレビュー)
パンが大好きなパンどろぼう。町のパン屋さんからパンを盗んでは隠れ家でパンを食べます。ある日、森にある世界一美味しいパン屋さんからパンを盗んだパンどろぼう。ワクワクしながらパンを一口・・・。なんとそのパンは美味しくなかったのです。カンカンに怒ったパンどろぼうは世界一美味しいパン屋さんへ乗り込みます。しかしパン屋のおじさんにパンを盗んだことがバレてしまい・・・?さあ、パンどろぼうはどうなってしまうのか。そしてパンどろぼうの正体も明らかに!?ドキドキハラハラと思いきや、最後はほっこりするお話となっております。ぜひお手に取ってご覧になってみて下さい。
『カサコソのかくれんぼ』 ザ・キャビンカンパニー 作 偕成社
(湯浅美咲先生のレビュー)
ごきぶりのカサコソは今日も山田さんとかくれんぼ!ぼくをみつけてね! カサコソカサコソカサコソドコ?多くの人が苦手としているごきぶり。そんなごきぶりが主人公の絵本です。作中でも山田さんはスリッパを持って追いかけて退治しようとしていたり、たくさんのごきぶりを見て絶叫して逃げて行ったりと、苦手としているようでした。しかし楽しくかくれんぼしていると思っている呑気なカサコソに笑ってしまいます。ページごとにカサコソだけでなく、他の虫も隠れているので、ぜひお子さんと探してみて下さい。
『そらまめくんのまいにちはたからもの』 なかやみわ 作 小学館
(鈴木有咲先生のレビュー)
面白いお話、楽しいお話が大好きなきいろ組の子ども達ですが、可愛い絵のお話も大好きです。真人幼稚園には「そらまめくん」シリーズの絵本が2冊ありますが、どれも「僕はピーナッツさんのベッドがいい!」、「私はそらまめくんのベッドがいい!」など各々話しながら楽しんで聞いています。このお話では、そらまめくんとその仲間たちが春夏秋冬の季節を感じながら過ごしていく日々が描かれています。あっという間に過ぎていく毎日ですが、二度とこない大切な毎日です。そんなことも、色鮮やかで可愛らしい絵と共に伝えてくれる絵本なのかな、と感じています。
『ハナはへびがすき』 蟹江 杏 作 福音館書店
(園長のレビュー)
ハナはヘビが好き。カエルも好き。トカゲも好き。ミミズも、コウモリも、コマルハナバチも好き。でもみんなはぜんぜん好きじゃないみたい。先生まで眉と眉の間を皺にして、「どこかにすててきなさい」って言う。でも、誰も好きじゃなくても、やっぱりハナはヘビが好き。そんなある日、ヘビって可愛いいねって言ってくれる友達が現れて…。ペットの子犬や子猫はかわいいけれど、爬虫類や両生類は気味が悪い、そう思ってしまう人は案外多いのかもしれませんが、そのような個人的な好き嫌いや、固定観念や、差別や偏見を乗り越えて、自分が本当に大切と思うものを大切にし続けるためにはどうすれば良いのか? 「みんなちがってみんないい」と口で言うのは簡単ですが、それをどうやって守ってあげれば良いのか? 幼稚園の園長として、また人の子の親として、とてもシンプルに考えさせられる一冊でありました。
『とりかえっこ とりかえっこ』 ふくだじゅんこ 作 大日本図書
(近藤欣位先生のレビュー)
かわいい かわいい くだものさんたちのおようふく とりかえっこが~はじまりま~す!かわいらしい題名だけ見ると、くだものたちがそれぞれの色をとりかえっこするのかな?と思いきや、まさかまさかの皮をぬぎぬぎぬぎ・・・くだものたちの脱ぎ方や着方もそれぞれユーモアたっぷりで、私もこの絵本を本屋さんで読んだとき、思わず声を出して笑ってしまいました。単純なお話ではありますが、表情、文字のデザイン、リズム感、すべてから絵本の面白さがあふれ出ています。お仕度を頑張り始めたわかば組さんから、文字が読めるようになった年長さんまで、みんなが楽しめる絵本だと思います。ぜひ皆さんも読んでみて下さい。
『ねこのようしょくやさん』 KORIRI 作・絵 金の星社
(藤井遥先生のレビュー)
ちょっぴり‘おでぶ’な猫が表紙のこの絵本ですが、初めて見た時からこの表情に引き込まれてしまいました。主人公はハルオとみかんという名前の猫。この二匹は作者が実際に飼っている猫だそうです。「猫が人間のように暮らす世界」をテーマにしているそうで、猫の気まぐれ感やマイペース感がよく表れています。人間のような生活の中にも猫特有の自由なところが描かれていて、とても癒される一冊です。そして、この猫たちの何とも言えない表情がたまりません。クセになること間違いなしです!ぜひお手に取って読んでみて下さい。
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さて、今回の先生方が選んだ絵本の紹介はいかがでしたか? 真人幼稚園の子ども達は本当に絵本が大好きです。元気いっぱい遊ぶときは遊び、思い切り体を動かす。一方で、集中して絵本を読んだり、何かを作ったり、友だちや先生の話に耳を傾けたり、そういったこともとても得意です。その静と動、集中と発散のバランスが子どもの成長にはとても重要なのだと思います。そのような意味においても、心と体を鍛えるために絵本はとても大切なツールです。そしてなにより、お気に入りの特別な一冊があるということは、子ども達にとって何物にも代えがたい宝物であり、生涯にわたりその子どもを支えてくれる(時に本当に勇気づけてくれる)、大切な財産になるはずです。ぜひこれらのレビューをご参考になさって、本屋さんに親子で足をお運び頂き、お子さんと自分だけのお気に入りの一冊を探してみてはいかがでしょう。書棚の片隅で絵本たちは皆さんに発見されるのを待っています。
それでは皆様、新年1月にまたお会いいたしましょう!