https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190905-00213727-diamond-bus_all
● 相手の話しかたや状態、呼吸などに合わせるのが基本
クレームのなかでも、特に苦手としている人が多いのは、対応にあたった途端、怒鳴りつけてくるお客さまではないでしょうか。理由もわからずに怒鳴りつけられ、恐怖で声が震えたり、思わず涙ぐんだ経験のある人もいると思います。
こんなとき、多くの人がお客さまの興奮を鎮めようとして、落ち着いたトーンで話すなど冷静な対処を心がけますが、じつはそのことがお客さまの怒りを余計に増幅させます。なぜならば、お客さまの目には慇懃無礼な態度に映ってしまい、「自分がSOSを発しているのに、まるで状況がわかっていない!」と感じるからです。
では、どうすればいいのでしょうか。相手がまくし立ててくるならこちらも早口で、大声で恫喝してくるなら、声の大きさも遠慮なく合わせてください。ひと言で言えば、お客さまに合わせて、「怒鳴り返すように謝る」のです。
そんな対応をして、本当に大丈夫ですか……とよく聞かれますが、ご安心ください。今まで失敗した例はありません。「ウマが合う」「波長が合う」といった言い方をするように、そもそも人は、声の大きさや話のテンポ、しぐさなど、自分と似た相手に無意識に好感を持ちます。このことは心理学的な実験でも確かめられていることです。それゆえ、怒鳴り返すのは、理にかなった対処なのです。
また、怒鳴るお客さまのほとんどが、意識的にせよ無意識にせよ、こちらを萎縮させて交渉の優位に立つことを、心のどこかで期待しています。「怒鳴れば、相手は引いて謝ってくるだろう」と思っているのです。
ところが、そうした期待を裏切って怒鳴り返すように謝ると、お客さまは虚をつかれ、一瞬、怒りを忘れます。後述するように、その一瞬がお客さまを落ち着かせるアクションに移るチャンスです。
なお、謝るといっても、こちらの非を認めるわけではありません。「わざわざご足労いただいて申し訳ありません!」といったように、謝る対象を限定する言葉(この例では「ご足労いただいて」)をつけて、クレームの本題とは別のことで謝ります。状況もよくわからないうちに、本題について謝って、非を認めた事実を作らないように注意してください。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190905-00213727-diamond-bus_all&p=2
● 大きな声で謝ったら、落ち着ける場所に移動すべし!
お客さまが立っている状態であれば、怒鳴るように謝ってたじろいだ瞬間、「どうぞこちらにおかけください!」と声をかけます。その場に椅子がなければ、「こちらでゆっくりお話をお聞かせください」と、バックヤードやカウンターの角に移動してもらい、とにかく座ってもらうようにします。
というのも、人間は怒鳴っているときは血圧が上がり、心拍数も一般に100を超えます。とても論理的な会話をできる状態ではありません。ですから、血圧や心拍数を下げるためにまずは座ってもらい、冷静になってもらうのです。
できれば、お互いに真正面に座るのは避け、斜めの位置に座るようにします。斜めの一に座ったほうが目線を外しやすくなり、対決モードにならずに済みます。ここまでで、お客さまはかなり落ち着きを取り戻し、怒鳴るのをやめるケースがほとんどです。
では、「おかけください」とは言えない、電話越しに怒鳴りつけてくるお客さまには、どう対処すればいいでしょうか。
怒鳴る勢いで謝ることの効果は同じです。特に注意したいのは、電話を受けるときにハキハキとした口調で語尾を上げるように習慣づけておくことです。
なぜなら、語尾を下げて静かな口調で受けてしまうと、お客さまに怒鳴られたときに、怒鳴り返すように謝るには、一瞬でテンションを上げなければならなくなり、難易度が非常に高くなってしまうからです。
いずれにしても、お客さまの声の大きさやトーンに合わせて対応しながら、怒鳴り声の背後にある原因や感情を探ってください。そして、頃合いを見計らって、お客さまの気持ちを代弁する言葉を投げてみてください。
お客さまから怒り口調ながらも「そうよ」「そうだよ」というYES言葉が返ってくるようであれば、「この人はわかってくれている」と認識してくれた証拠です。それを機にお客さまの怒りは一気にトーンダウンするので、こちらもそれにあわせて声の大きさやテンポを合わせて、本題の解決に向けて話を進めていきます。
https://diamond.jp/articles/-/180806 クレーマーの餌食になる人はみな 「この言葉」を使ってしまう
お客様は、なぜキレたのか?
クレーマーは、表情に出すか出さないかは別にして、たいてい怒りの感情を抱いています。したがって、クレームを円満に解決するには、まず何よりも先に相手をクールダウンさせることが前提になります。
ところが、不用意な一言で相手をヒートアップさせてしまうケースが後を絶ちません。
その代表的なフレーズが、「ですから」「だって」「でも」の3つです。
私は、これらを「D言葉」と名づけ、クレーム対応では絶対に封印するように、クライアント企業の方々にお伝えしています。
1つ、事例をご紹介します。
-------役所の事例--------
役所の住民窓口で、年配の女性がイライラしている。
「さっきも言ったでしょ。私は証明書がほしいの!」
担当者は、困惑しながら「はい、それはよくわかりました。そのためには必要書類を揃えてお持ちくださらないと手続きができないんです」と答える。すると、女性が言った。
「ここにあるじゃない!」
女性は1枚の紙片を担当者の目の前に突き出した。 今度は担当者が言い返した。
「ですから、何度も申し上げますが、これだけではダメなんですよ」
「その言い方は何?バカにしてんの!」
このケースでは、「ですから」というワンフレーズで、相手がキレてしまったわけです。
これは、単に「言葉づかい」の問題として片付けられることではありません。「『だから』ではなく、『ですから』と丁寧語を使っているじゃないか」と思われるかもしれませんが、担当者の「意識」が言葉にはっきりあらわれているのです。
「D言葉」は、相手にとって、次のように伝わるのです。
•「ですから」……〈そんなこともわからないの?〉という「上から目線」
•「だって」………〈そんなことを言われても困る〉という「逃げ腰」
•「でも」…………〈それは違うんじゃないの?〉という「反抗的な態度」
そこで、D言葉を封印する簡単な方法があります。
それは、D言葉を「S言葉」に変換することです。つまり、次のように「サ行」で始まる言葉に言い換えるのです。
「ですから」→「失礼いたしました」
「だって」→「承知いたしました」
「でも」→「すみません」
たとえば、冒頭の役所の例でいえば「ここにあるじゃない!」と言われたら、「ですから」に代えて「失礼いたしました」と応じれば、余計な怒りを買うことはなかったはずです。その後で「私の説明不足でした。もう一度、ご説明いたします」とつなげばいいのです。また、相手の怒りを鎮め、解決の糸口を見つけるには「あいづち」で共感を示すことも重要です。基本的には、次のように3つのパターンのあいづちをマスターします。
(1)「はい」「さようでございますか」 ストレートに相手の話に同調するときに使います。あいづちの基本形といってもいいでしょう。声のトーンによって、さまざまなニュアンスを伝えることができます。
(2)「ごもっともです」「おっしゃるとおりです」 やや強めに相手の意見に同調するときに使います。ただし、あまり頻発すると嫌味に聞こえることがあるので注意します。
(3)「そうなんですか」「そんなことがあったんですか」 感嘆を込めて相手の話に同調するときに使います。ただし、これも過剰に使うと、かえって不快感を与えることがあるので注意します。
あいづちを打ちながら傾聴している間、相手の理不尽な要求に思わずD言葉が口から出そうになったら、頭の中でS言葉に置き換えます。あいづちからS言葉につないでいけば、相手の興奮は徐々に収まり、会話がスムーズに流れるようになるでしょう。
こうしたテクニックは、経験を重ねれば誰でも身につきます。セリフを丸暗記しなくても、あいづちやS言葉のフレーズを準備しておけば、いざというときに使えます。
しかし不慣れな人は、まだ不安が残るでしょう。そこで、もう1つの覚え方を伝授します。
「サ行のほめ言葉」をご存じですか?
•「さすがですね」 •「知らなかった」 •「すごいですね」 •「センスがいいですね」 •「そうなんですね!」
こんなふうにあいづちを打たれれば、悪い気になる人は多くないでしょう。クレーム対応でも、「さしすせそ」でキラーフレーズを覚えておくのが有効です。
さ:「さようでございますか」 し:「失礼いたしました」「承知いたしました」 す:「すみません」 せ:「……」 そ:「そうなんですか」
「せ」が抜けていますが、じつはここが最も重要です。声には出さなくとも、クレームから逃げずに「責任をもって、私が対応します」という意識をつねにもっておくことです。
初期対応での「6つの禁句」
D言葉のほかにも、相手の怒りを再燃させる「不用意なひと言」が6つあります。
その代表例が「会社の規定で」「会社の方針で」「事務処理上」といった表現です。これらは、こちらの都合を一方的に押しつけているように解釈されることがあります。
また、「普通は」「一般的に」「基本的には」という言葉も、使い方によっては「上から目線」の印象を与えかねません。
たとえば「普通は、そのようなトラブルが起きないはずなんですが……」と言われた身としては、「じゃあ、オレは普通じゃないのか!」と、カチンとくるわけです。初期対応では、こうした相手を不快にさせる言葉に十分注意してください。
ただし、過剰要求を繰り返す悪質なクレーマーに対しては、その限りではありません。丁寧な言葉づかいをしながらも、ドライに言い切ることが必要です。
最初の5分間は徹底的に演じ切れ
初期対応は、最初の5分間が勝負です。5分間というと、ずいぶん短く思うかもしれませんが、相手の怒気を帯びた声を聞いていると、結構長く感じるものです。
しかし、決して気を緩めてはいけません。クレームの初期対応は、比較的マニュアル化しやすいように考えられがちですが、油断すると思わぬ失敗をおかします。
「受話器を置く前に、フッとため息をついてしまった」
特にクレーム電話への対応では、そうしたことが起こりがちです。一瞬の気の緩みから話がこじれてしまうことがよくあるのです。
電話は声だけのコミュニケーションであるため、「声が小さい」「早口だ」と文句を言われることもあります。また、相手の大声につられて自分の声にも力が入ってしまい、いつの間にか論争になってしまうケースもあります。
クレーマーの自宅を訪問した際にも、「顔がニヤけている」「お辞儀の角度が悪い」「名刺の出し方が無礼だ」などと叱られることがあります。
言いがかりに近いことも少なくありませんが、初期対応では「演じ切る」ことが大切です。上辺だけの猿芝居ではなく、本気でひと芝居打つ覚悟が必要なのです。