京都嵐山の渡月橋の近くに2019年10月、
新たな私設美術館「福田美術館」が誕生した。
この美術館は「100年続く美術館」をコンセプトに掲げている。
当美術館の建築は伝統を意識しながらも未来に向けた新しい日本建築を志向したそうだ。
洗練された和モダンのデザインは周辺の自然にも違和感なく溶け込んでいる。
ちょうど7月17日(土)~10月10日(日)まで「京(みやこ)のファンタジスタ」と称して
伊藤若冲と同時代の画家たちが「どうしてこんなに天才たちが」を
テーマに取り上げていた。
この美術館を知ったのは人力車俥夫・勝木君の情報提供で
たまたま訪問することができた。
建物は大変コンパクトで2階建。
ギャラリーは2ヶ所プラス、パノラマギャラリーという
ちょうど良い大きさの美術館かもしれない。
こちらは2階から見た受付の光景。
入館料は若干高めの大人1,300円だ。
館内に入るといきなり2階まで一本の通し階段が現れた。
これは大迫力の空間で設計者が考えに考えた空間造りにちがいない。
当館のおもしろい空間にフィックスの大硝子を上手に使った空間造りを発見したが、
詳しくは後でご紹介いたします。
第一章(ギャラリー1)では「若冲と蕪村」を取り上げています。
同じ年に生まれた伊藤若冲と与謝蕪村。
20年間同じ京に住み、中国絵画を学ぶなどの共通点がありながら、
まったく異なる画風を追求したふたりの作品を紹介しています。
上2点が伊藤若冲の作品、下が与謝蕪村の作品です。
若冲の「霊亀図」18世紀
若冲と梅荘顕常(1719-1801)の「竹図」
若冲と太田南畝(1749-1823)の「蘆葉達磨図」
若冲の「柳に鶏図」
若冲の「鯉魚図」
伊藤若冲最初期の作品「蕪に双鶏図」
世界最先端の照明システムを採り入れた展示室は
92%という高透過率を誇るガラスケースに加え、
奥行きが30cm~1mまでの可動式。
画家たちの「筆致」を間近に見ることができる。
こちらは与謝蕪村(1716年-1783年)の作品
老松図屏風 天明元年(1781年)
同じく蕪村作の「猛虎飛瀑図」明和4年(1767年)と
「笩士図画賛」18世紀と「飼馬図」安永9年(1780年)。
こちらの美術館の素晴らしさは何といっても
フラッシュをたかなければ撮影が可能だということです。
ものすごい解放感があります。
これが硝子を使っての美術的空間だ。
1枚の透明硝子に太い細い種々なデザインの磨りガラスを模様にし、
その隙間から遠くの嵐山、桂川、そして手前に石庭を模した池の水面の広がりが見え、
これをじっと見ていると絵画を見ているような不思議な気持ちになる。
1階の奥に設けられたカフェ。
こちらからは渡月橋、桂川の水景に溶け込んだ佇まいを眺めながら
美術鑑賞の余韻に浸ることができ、至福の時を過ごすことができる。
ギャラリー1を出ると当美術館の
オリジナルグッズが売られているミュージアムショップがある。
このミュージアムショップでは、
ここでしか手に入れられないオリジナルグッズが販売され、
最高のお土産を買うことができる。
ギャラリー2では「鎬を削る画家たち」と題して若冲が生きた
18世紀の京都で活躍した多くの画家が、
寺社が所蔵する中国絵画や版画を学んだり、互いに切磋琢磨することで、
個性的で魅力あふれる画風を確立したことを展示している。
写生を基本として革新的な画風を確立して円山応拳(1733-1795年)の作品
「陶淵明図屏風」安永7年(1778年)、「栄父許由図」安永2年(1773年)、
「竹に狗子図」安永8年(1779年)。
呉春(1752-1811)の作品「松竹梅図屏風」18世紀。
日本の文人画を大成した池大雅(1723年-1776年)の作品「墨蘭図」18世紀と
「山中娯楽図屏風」18世紀。
富岡鉄斎(1837年-1924年)作の「摸月峯筆大雅堂住居図」
池大雅夫妻が暮らした祇園の住居とその周囲の様子を描いた作品。
表で比べる京の画家たちの交友関係の一覧表と住居マップ。
これはすごく興味深い資料だ。
福田美術館は江戸時代から近代にかけての
主要な日本画家の作品で構成されるコレクション約1,500点を有している。
たとえ美術に詳しくない方が見ても感動を与えられるような作品がコンセプト。
注目すべき初公開ものや幻の作品が多数含まれている。