記憶の場所

観た映画の感想をつれづれなるままに書き連ねるブログ。週1~2本、たまに映画館。

李相日監督「怒り」

2016-09-19 21:18:20 | ア行
いやぁ邦画っていいものですね。

李相日監督「怒り」
今公開中で大ヒット満員御礼中の映画の感想を書くのは主義に反するが、どうしても書きたいから書く。
衝撃が多きすぎて自分でも与えられた情報の処理が追いついていない。ネタバレしない自信もない。

最初は優馬(妻夫木聡)と直人(綾野剛)のベッドシーンを見たいからという理由だったけど、そんな生温い気持ちで行ったせいもあってか脳みそをぶん殴られて帰ってきた感じがある。
「信じる」ってなんだろう。私も相方に対して「信じてる」「愛してる」って言うけど、それがどこまで本気なんだろう。わからなくなる。
原作を読んでいないから、推測の域を離れていない部分もあるけど許してほしい、って念押ししておく。

最初から田中が犯人っていうヒントはあったらしい、が、気付かんがな。ただ、東京編と千葉編は今考えるとあからさまに怪しい部分がはっきりと出されているんですよね。沖縄編だけがあいまいにされているし、田代くんと直人は疑われるんだけど、田中は疑われないんだよね。前者二人は行方をくらますけど、田中はさらに日常に入り込んでくる。
信頼度合としては、千葉組(愛子と田代くん)>東京組(優馬と直人)>沖縄組(田中)のように感じる。田代くんは疑われて一度離れたけど、きっとどこかで信じたいという気持ちがあったから、最後に電話をかけてきたんだろう。田代くんと直人の違いはたぶんそこで、優馬と直人はそこから一歩踏み出せなかった。最後の最後で、信じきれなかったんだと思う。

沖縄組は「信じる」ではなく、泉も辰哉も田中に対しては「憧れ」だったんだと思うのよね。もちろんそこは田中の能力(「俺わかるんだよね、こいつは俺を簡単に信じるって奴が」みたいなことを言ってたし)のせいもあったんだろうが、信じるというより依存してたんではないかと。裏切られたと感じた時に、「怒り」に向くのか「悲しみ」に向くのか、そこが違うんだと思う。専門家ではないのでうまくは伝えられない。某死神漫画の某眼鏡が「憧れは理解からもっとも遠い感情だよ」と言っていたが、沖縄組はその言葉がしっくりくる気がする。

東京組はネウロの弥子ちゃんの言葉を思い出した。今コミックスが手元にないのでうろ覚えだが、人の関係は磁石のようなもので、大切な人ほど失った時にごっそりと自分を持って行ってしまう、といった趣旨だと思う。優馬と直人の関係は、出会いこそいびつだったのかもしれないが(なんせ優馬ったら直人のこと無理矢理襲ってましたからね)、二人の絆が強まっていく描写を散々見せられて魅せられた上で、あのラストはつらい。優馬にとって、最初は、直人はたくさんある自分のものの一つにしか過ぎなかったと思うよ。それが、直人と生活を共にするようになって、直人のことを考え始めて、おそらく今まで自分が大切だと思っていたものと直人とを比較して、直人を優先させたんだろう。そして残った大切なもの=直人を失ったときの優馬の心中たるや。どうしても自分に置き換えてしまって、自分が相方を失ったら?ということを考えてしまって、胸が詰まる。
世間慣れしてなさそうだし、自分の命が残り少ないってこともわかってただろうし、優馬に魅かれてしまって大切な唯一のもの=優馬だったと思うのよね。その優馬に少しでも疑われたら…?直人が失った大切なものというのは、優馬だったのか、優馬からの信頼だったのか。それにしても直人マジ天使。
「一緒には無理かもしれないけど…隣なら、いいよね」って直人お前それが最後の台詞って泣かせに来てるだろ!たぶん一生忘れない台詞。

千葉組がおそらく一番ピュア。純粋。信じてたから確かめたかったのか…どうして通報したのかはまだわからないけれど、それでも信じたい。裏切ってしまったのは受け入れた槇親子の方で、田代くんはそれをまた信じたんだ。信じるって、本当に難しい。
渡辺謙も松ケンもそうだが、宮﨑あおいの演技力が半端ない。これが本当に宮﨑あおいなのか?って思う。

前評判でいろいろ仕入れていたこともあり、感想の量からもお分かりかとは思いますが、東京組への思い入れがすごいです。やばいですあのカップル超好みです。優馬も直人も可哀想で胸が詰まります。
もちろんベッドシーンも良かったというか、出会い頭のシーンが完全に挿入済って感じで吐息とか喘ぎとか直人の声出さないようにしてるであろう感じとか優馬の色黒細マッチョとか鼻血通り越して吐血します。血を吐きます。直人マジ天使。
私がここで長々と感想書くよりTwitter等々で感想探したほうがこれは早いと思う。

もう一度見返すには度胸がいるが、もう一度見たい。映画が終わってからしばらく動けなかった。信じるってなんだろう。怒りって何なんだろう。

モルテン・ティルドゥム監督「イミテーション・ゲーム」

2016-01-30 15:04:50 | ア行
邦題ダサくて書きたくない。

モルテン・ティルドゥム監督「イミテーション・ゲーム」
史実系。カンバーバッチ演ずるアラン・チューリングの生涯を描いた映画。
天才と変人は紙一重っつーか、あまりにも出過ぎた才能は理解されないっつーか。そもそもチューリングの性格ひねくれすぎっつーか。
そりゃ終始「あなたたちみたいな凡人にはわからないでしょうね」って言われたら周囲も上司もかっちーんってくるよね。

ドイツの暗号「エニグマ」を解読するためにコンピュータのご先祖様みたいなものを作って何とかする話。と言ってしまうと何の感動もない。
恋あり、友情あり、確執も絶望もあり…まさかこの映画で恋愛要素を見られるとは思わなかったけど。
チューリングがそのあたりぶきっちょで可愛い。「理想の夫がいればいいと思わないかい?」ってそれだれもプロポーズと思わないからね!
よくジョーンさん「まさか…プロポーズ!?」って考えたよね。いやいい話だった。

気付いてからは早かった。「ヒトラーは愛に負けたんだ」っていいよね、なんか。だからすぐにすべてが終わるとはいかなかったけども。「誰を助けるかor犠牲にするか」はなぁ…最小限の被害ってのはあるんだろうけど、心病みそう。でもそれをチームメンバーに告げる時、チューリング泣いてた。彼も人間だったんだよな。

別に敵地に乗り込んで暗号解読のキーを奪取する…とかそんな映画じゃないし、割と淡々と話が進む。場面の明るさが、過去が一番明るくて、戦時中がちょっと暗めで、現在は重い。どよーんとしてる。チューリングの気分というか、きっとクリストファーがいた時が彼の人生で一番輝いていた時なんだろうとは思うよね、なんとなく。クリストファー引きずりすぎだしね。

同年の映画なのか…?「アルゴ」と超似てる。展開的にも。どちらも秘密にされていることすら秘密だったんだろうし、関係者をそれで正当に評価できなかった(されなかった)というのも。もっと大々的に褒め称えることのできるものであれば、きっとチューリングの人生は全然変わっていただろうし、「天才は早死にする」ということにもならなかったんだろう。「アルゴ」はそれでもまだいいけど、そんな偉人が同性愛者ってだけで白い眼で見られるのは酷すぎる。

ちゃんとまとまってて面白いし、カンバーバッチの演技が良いからチューリングと感情を共有できる。良い映画だった。

蛇足
カンバーバッチ、前にも似たような映画で似たような仕事してる同性愛者やってなかった…?

シルベスター・スタローン監督「エクスペンダブルズ」

2015-12-14 20:37:31 | ア行
とりあえずアクションと名のつく要素を詰め込んだっぽい。


シルベスター・スタローン監督「エクスペンダブルズ」
肉体派のお兄さんおいちゃん達が血と汗と爆風と銃弾にまみれながらアクションする映画。
何のことかわからないと思うけど一言で説明するとそういう映画だと思う。

ジェイソン・ステイサムがイケメンすぎる。ナイフと格闘バリバリできるお兄ちゃん。そんな男の彼女をとったら(しかも殴ったら)そうなるよねー、みたいな感じになってたよね。
ジェット・リーもミッキー・ロークもスタローンもイケメンだったけど、その中でもジェイソン・ステイサムがとにかくイケメンだったよね。ナイフ使いってそれだけでなんかこうポイントが高くなると思うのよ。

映画自体はこう、ストーリーなんてあってないかのようながちがちのアクションだから、とにかく爆発とか楽しめばいいし、格闘も面白いし、楽しんで観るにはそれで十分よね。
ジェット・リーの回し蹴りすごかったな。汗臭いスタイリッシュアクションであった。
アクションをしないブルース・ウィリスも珍しい。ってかスーツを着てるブルース・ウィリスが珍しい気がする。
「アクションが面白かった」としか言いようがないから、感想が続かないw

蛇足
禿のイケメンを大量に拝める映画でもあると思う。

ランディ・ムーア監督「エスケープ・フロム・トゥモロー」

2015-04-27 07:19:44 | ア行
よく訴えられなかったなと感心する。


ランディ・ムーア監督「エスケープ・フロム・トゥモロー」
隠されているメッセージが深すぎて私みたいな凡人にはついぞ理解できませんでした。
なんとストーリーを表現していいかもわからない。

家族旅行でディ○ニーに来ていた男が、さぁ今から行くぞ!ってタイミングで首を宣告されるんですよ。
正直、その状態で楽しめない雰囲気なのはわかる。逆に吹っ切れちゃって、家族旅行だってのに美女二人組が超気になっちゃうのもわかる。
飲まなきゃやってられないって気持ちになるのもわかる。でも公衆の面前でいちゃいちゃはじめようとするのはわからない。そこは奥さんに同情する。

ダークファンタジーってのはよくわかるんだけど、この映画、最後に伏線を回収するのかと思いきや結局投げっぱなしなのが良くない。
「意味ありげなことをつぶやきつつ最後は泣いてしまう看護師」「意味ありげな挙動+謎のコスプレを始める熟女」「主人公の行く先々に現れるフランス人美女2人組」などなど、どっかで何かに発展しそうな要素がたくさんあるのに何も発展しない!逆にびっくりだよ!
よくわからないまま謎の組織に拉致されちゃったりしちゃってもっとよくわからないよ!
(実はこのあたりでビーズを部屋中にまかしちゃってストーリーが一瞬迷子になった。)
前に見た爆発しちゃう映画並に何をしたかった映画なのかがよくわからない。まだタイヤが人殺しする映画の方が理解できるレベル。

一番驚いたのは、これがディ○ニーに無許可で撮影されたってところかな。謎の合成とかちょこちょこ入ってたんだけど、ちょっと納得。
でも言われなきゃ気付かないし、まぁ「家族旅行撮ってますー」って風で撮ってればばれないか。そうか。


面白くないわけじゃなかったんだけど、これだったら悩んでたもう一本を借りてきたほうが良かったかな…。


ロブ・マーシャル監督「イントゥ・ザ・ウッズ」

2015-03-22 08:33:16 | ア行
バカ(王子)と巨人とファンタジー

ロブ・マーシャル監督「イントゥ・ザ・ウッズ」
ジョニデ観たい娘とベイマックスでディズニーに味を占めた母の意見が一致したから観てきた…けど……、公開2日目の映画にこれを言っていいのかどうか悩むけど、まぁ今一つ。
どうでもいいけどロブ・マーシャル監督の映画は2作目。「シカゴ」以来。

個人的には、シンデレラのストーリーが大人向け、というか、足切られて目を潰されるバージョンだったのに好感が持てた。あとパン屋の奥さん美人。メリル・ストリープの圧倒的大物感。そしてBGMがひたすらファゴットファゴットファゴット。耳が幸せだった。
ジョニデをガンガン押してた割に、登場時間短くてちょっと拍子抜け。その後はバカ王子どもが面白かったからいいけど。

「人生は必ずしもハッピーエンドではありませんよ^^」ってのが主題なのかな。その主題に行くまでがごちゃごちゃしすぎで疲れる。部分ごとに観ると結構面白いし突っ込みどころはあるし、バカ王子がバカすぎて笑い堪えるのが大変だった。
調べてみたら、基になるミュージカルがあって、後半部はオリジナルストーリーなのね。これだからオリジナルは…。

呪い解きたいです→ではアイテムを集めてください→4つ集めました→それは私が触ったから効力がないのー!(by魔女)→「トウモロコシのように黄色い髪」がないんなら「とうもろこしの髭」でいいんじゃね?→解決!ってえぇっってなったわ。
それ他の奴も代用きいたよね!?白粉叩いた牛とか!?結構魔女の呪いっていい加減だな。魔女発狂するし。「優しいだけじゃやっていけないのよ。たまには私みたいに正しいことを正しく言える人も必要なの。」ってのが魔女か。魔女の役割か。「お前らが言うこと聞かなくて正しいことをしなかったからこんな事態になってんじゃねーのバーカ(意訳)」ってのがたぶん魔女の言いたかったこと。
確かに寄り道しなきゃ赤ずきんはオオカミに誘惑されなかったかもしれないし、市場でちゃんと牛を売っていればジャックも豆を手に入れなかったし、盗みをしなきゃパン屋にも子どもができてたわけだもんな。おぉ怖い怖い。

バカ王子どもを見てたらこの前の帝を思い出したぞ。「私にこうされて喜ばぬ女はいなかった」ってな。兄は分かりやすいクズ、弟は憎めないバカ。結局弟はラプンツェルさらって逃げちゃったけど、何で?ラプンツェルも途中で城が崩れた途端逃げてるし、何で?
「僕の奥さん候補の方が美しいし、それを手に入れられない僕は世界で一番不幸だー」ってのが王子のスタンス。明暗はちゃんとその子だけを見続けられたかどうかってことか。幸せになれないシンデレラって良いねって思っちゃった私はクズという自覚はある。
途中から奥さんに感情移入しすぎてしまって、まぁその理由がアレだからあまり詳しくは言わないけど、すげー奥さんの気持ち分かるわーって感じ。

観て損はしないと思うけど、うーん。また観たいとは思わないかなー。
ちなみに母とは「『ナイト・ミュージアム』」観ときゃ良かった」って話をしてた。


蛇足
バカ王子ども観てたらテッテレ王子思い出した。奥さん観てたら「Yield」思い出した。サンホラーなら楽しめるかもしれない。