神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

酒巻芳男『皇室制度講話』つづき 3

2023-12-21 19:52:55 | 皇室会計
 つづきです。今日は池田秀吉『皇室会計法規要義』を紹介します。
 この本には「まえがき」も「あとがき」もないので、刊行の経緯は不明ですが、奥付に、帝室林野局、非売品、昭和7年4月発行、同9年3月再発行とあります。ほかは手掛かりなしですが、帝室林野局の職員講習用に作成されたものと思われます。大きさはA5判です。(著者の池田秀吉は、明治26年9月松山市生まれ、大正9年7月京都帝大法学部政治学科卒業、農商務省属・事務官のち宮内省入省)。
 
 私はこれを古書店で入手しました。調べたところ、東京国立博物館に所蔵が確認されましたが、国会図書館にも宮内公文書館にも所蔵されていないようです。

 ここで、池田『要義』と高木『大意』を比較してみましょう。
   池田『要義』          高木『大意』
 第1編 緒 論         
 第2編 総 説         第1章 総 説
 第3編 予 算         第2章 予 算
 第4編 収入支出の基因(契約) 第3章 現 計
 第5編 収入及支出       第4章 決 算
 第6編 決 算         第5章 契 約

 配列を比較しただけですが、池田『要義』は、高木『大意』を第5章・第3章・第4章と変えた形となっていることがわかります。では、内訳はどうでしょうか。ここでは、スペースの関係で「総説」だけを同様に比較してみます。対比しやすいように少しずらしました。
   池田『要義』          高木『大意』
 第2編 総 説         第2章 総 説
                  第1節 会計の意義 
                  第2節 皇室会計の基礎法規
  第1章 皇室会計の種別     第3節 皇室会計の種別 
  第2章 皇室会計の機関     第4節 皇室会計上の機関
  第3章 会計年度        第5節 皇室会計上の年度
   第1節 会計年度の独立    第1款 会計年度の意義及期間
   第2節 年度所属区分     第2款 整理機関
    第1 歳入の年度所属    第3款 年度所属
    第2 歳出の年度        
   第3節 整理期間        
     1 出納閉鎖期
     2 帳簿締切期

 これを見ると、似たような項目建てをしていることがわかります。しかし、じつは両者の違いとして興味深いのは「機関」についてです。高木は「第4節 皇室会計上の機関」これより下の項目建てはしていませんが、池田は下のようにさらに小項目に分類しています。   
 第2章 皇室会計の機関
  第1 天皇  第2 宮内大臣  第3 主幹部局長官  第4 内蔵頭         
  第5 分任官  第6 主幹部局長官の代理官  第7 配付官  
  第8 契約担任官吏  第9 出納官吏  第10 入札担任管理 
  第11 予算委員会  第12 帝室経済会議  
  第13 帝室会計審査局

 なお、高木は目次には項目建てはしていませんが、本文中で「第1 主幹部局長官」、「第2 予算委員会」、「第3 帝室経済会議」、「第4 帝室会計審査局」の項目を建てて書いています。しかし、「第1 天皇」と「第2 宮内大臣」に相当するものを書いていないようです。
 では、高木が項目建てせず、池田が「第1 天皇」と「第2 宮内大臣」も入れて項目建てした理由は何でしょうか?
 これは、まだ十分な確証がないのですが、「第2 宮内大臣」はともかく、「第1 天皇」が機関のトップ(頂点)に挙げられていますから、「勅裁=天皇の監督機能が強まった」結果か、「機関説」が強まった結果か、のいずれかと思われますが、目下は「機関説」の強化が有力と見ています。
 今日はここまでとします。


 
  
 

 
 
 


 





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