著者 桐野 夏生
北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、
非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。
「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、
ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、
国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。
>「あなたは人助けをしたのよ。本当に偉いわ」
人助け? リキは怪訝な顔をしてしまった。
基(もとい・代理母出産で子供を希望)の自己満足を叶えたことが、
人助けなのか。 人助けというのは、もっと切迫した悩みがあって、
困っている人を助けることかと思っていた。
いや、人によって切迫度は違う。 子ができないということが、
切迫していない悩みだとは言えない。 だが、青沼(女性・アメリカの
生殖医療専門クリニックの日本のエージェント)の言うことは
ピントがずれているように感じる。
(著者・桐野さんの言葉)
女性の貧困化が進み、日本の女性が代理母になるビジネスが行われるかもしれない。
その不安から書き始めた小説。
恐ろしいほど発達した生殖医療に、人間の精神も日本の法律も追いついていない。
私自身、結論が出なかった。
波乱の物語は、ある代理母出産で終わる。
その子は誰のものか。
誰も分からない、だから子供に聞いてみたい。
今、別の小説で、不自然な状況で出生した子供の成長した姿を描き始めている。
あっという間に読みました…
桐野さんの小説は、読みやすくて面白いです。