約300年前のヴェネチアで活躍した作曲家・ヴィヴァルディ。
ヴァイオリン協奏曲「四季」の作曲家として、あまりにも有名です。
そんな大作曲家の人となりを、
彼の生涯に関わった複数の女性を通して描いた作品~
大島真寿美著「ピエタ」を読みました。
もう、おもしろくて一気に、そして丁寧に読みました。
(以下、ネタバレがあります)
ヴェネツィアの慈善院「ピエタ」は、
捨てられた赤ちゃん達を養育する、教会付属の施設です。
言わば、赤ちゃんポストの走りといったところでしょうか。
ヴィヴァルディは、司祭職に就いていましたが、
そこで養育された娘達に、音楽の指導をしていました。
彼自身が作曲した曲を演奏させて、教会、その他で発表していたのです。
ピエタの「合奏の娘たち」の演奏技術は非常に高く、
ヴェネチア内外で、非常に高い評価を受けていたそうです。
そんな「合奏の娘たち」の中で、
一流の演奏家になったアンナ・マリーアと、事務職にまわったエミーリア。
貴族の娘でありながら、ピエタを資金面で支えたヴェロニカ。
ヴィヴァルディ先生を誰よりも理解していた高級娼婦のクラウディア。
それぞれが昔話をするなかで、
過去の出来事の真意が分かったり繋がったりしながら物語は進みます。
また、一枚の楽譜を巡っての、様々なエピソードが秀逸でした。
楽譜に関しての小さなエピソードが沢山有り、
それが終盤に向けて収束していく様が素晴らしく、
小説を読む醍醐味を味わうことが出来ました。
そして、至る所に描かれているヴェネチアの風景描写や、
カーニバルの様子を表す表現が非常に美しく、
映画を観ているように引き込まれます。
そして、まるで私自身が、その当時のヴェネチアに生きているかのような、
そんな錯覚に陥る程でした。
そしてまた、読んだ後にも、その余韻は続きます。
「ピエタ」を読んでから、私は毎日、
ヴィヴァルディの音楽を聴いて過ごしています。
そして、ヴァイオリンを弾けない自分自身を、非常に悔やみます。
それ程のめり込んだ小説「ピエタ」は、
音楽が好きな方も、そうでない方にもお勧めできる
「珠玉の1冊」だと思います。