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教育系ポップスバンド 風船花(ホウセンカ)の活動日記
日常の中であれこれ思ったことなど

続 ひまわりのころ 10(訂正 再掲)

2015年09月13日 21時53分24秒 | 続 ひまわりのころ

ヒロトの語りで思い出の試合が続きます!

奏太は僕の期待に応えて、手を広げたままだった。ボールは奏太の目の前にポトリと落ちた。ノーアウト、二塁。ついに、同点のチャンスがやってきた。
しかし…。何とか、ランナーを帰そうと力んだ五番は、思いっ切り、バットを三回振り回して三振。
六番。今度は遥希が乱れて、デットボール。ワンアウト、一、二塁となった。
遥希は何度も何度も汗を拭った。セットポジションで構えて静止する時、肩で息をしているのがベンチから見ていてもよくわかった。でも、
『ハルキ!頑張れ!』
とは、今の自分に言えない。
一球目。遥希の手を離れたボールは、バックネットを目指して飛んでいった。このワイルドピッチで、ランナーそれぞれが進塁し、二、三塁。ベンチは、サヨナラゲームを期待する応援で大騒ぎとなった。
二球目。今度は、キャッチャーのミットがゴールだと言わんばかりに、白いボールが走る。その瞬間、三塁ランナーもスタートする。まずは、確実な同点ねらいのスクイズだった。ミットへのゴールを阻まれたボールはピッチャーフライトなり、遥希のグローブに収まった。
それぞれのランナーが慌てて、塁に戻る。
ツーアウト、二、三塁。

監督はネクストバッターボックスにいた、ケイスケを読んだかと思うと、審判に向かって、手を挙げ、
「代打!大山広人」と。

あんなに出たかったこの試合だけれど、さすがにこの場面の代打は、こっそりわからないように逃げ出したかった。
「さあ、ヒロト、お前に託したぞ。行ってこい」
と僕を促した。
気持ちを決めて、
「打ってやる!打ってやる!打ってやる!」
と三回唱えて、それに合わせてバットを振り、バッターボックスに向かった。
「ハルキ!さあ、来い」
僕は力一杯バットを握って遥希に向かって構えた。
一球目を見送る。ど真ん中のストライクだった。
二球目に向かって、思いっ切りバットを振った。空振りでストライク、僕は早々と、あと一球へと追い込まれた。
遥希は、
「どうだ!」
と言わんばかりだった。遥希は、僕に背を向け、右手の人指し指を立て、守備をするシーガルの仲間に、
「あと一球!」
声をかけた。
「オー!」
八人がグローブを上げて答える。それから、
「ヒロト!行くぞ」
と言いながら、僕に向かってボールを握った手を伸ばした。
三球目。僕は二球目のボールのスピードをイメージしてバットを出した。ところが、遥希の投げたボールはスローボールで、僕は完全にタイミングを外されたものの、何とかバットをボールに当てた。そして、無我夢中でファーストに向かって走った。
力のない打球であったが、遥希の足下を抜け、セカンドのタケルが一塁に向かって送球するころには、僕はファーストベースを抱えて、土ぼこりの中にいた。
もちろん、それより先に、三塁ランナーはホームベースに滑り込んでいた。
ファイターズの応援席から、
「ワァー!」
と歓声が沸く。最終回、ついに僕らは同点に追い付いた。僕は有頂天だった。
ツーアウト、一、三塁だ。今度こそ、サヨナラのチャンスだ。
「このまま。勝てば、ハルキがカホに告白だ!」
一塁ベースに立ち、そんなことを考えていた。でも、それはそれで何だか悔しい感じもした。
そんなことを考えているうちに、
「カキーン」
打球は僕の頭を越え、少し前と同じようにライトに向かって飛んだ。

 


 


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