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教育系ポップスバンド 風船花(ホウセンカ)の活動日記
日常の中であれこれ思ったことなど

続 ひまわりのころ 29

2016年01月19日 22時09分23秒 | 続 ひまわりのころ

久しぶりですね。29話をアップします。北澤高校の試合が続きます。

「いよいよ、出てきたな」
平田さんがつぶやいた。高杉君は代走だった。僕らのヒーローが今、ついにグランドに帰ってきた。そして、高杉君は、一塁に立ち、自身がホームを駆け抜ける夢を見ている。そして、ここで北澤高校を応援しているみんなが同じ夢を見ている。
みんな立ち上がっての応援だ。
「カキーン」
カウント、ツーボール、ワンストライクから打った四球目の打球は、ライトとセンターの間に落ちる。太鼓の激しい音、全校生徒が叩くメガフォンの響き、そして、応援席からの絶叫。ドキドキしている。胸が張り裂けるくらいドキドキしている。ボールの行方とランナー、高杉君の走る姿の間を僕の視線は、忙しく行ったり来たりしている。

センターがボールに追い付いた時、まず、同点になる。みんなが飛び上がる。サードコーチャーは、高杉君に向かって大きく腕を回している。センターがバックホームする。鋭い返球がセカンドの辺りを通過する。三塁ベースを回った高杉君はホームベースを目指す。

ピッチャーマウンドとホームベースの間でバウンドしたボールは、絶好のコースでキャッチャーミットに飛び込んでいく。高杉君がホームに滑り込む。「セーフ」か、「アウト」か、審判がどちらをコールしても不思議はないタイミングだった。                                      

審判が右手だけを挙げようとする。僕の目の前はスローモーションになった。歓喜が落胆へと急降下しようとした時、キャッチャーミットからボールがこぼれた。審判は、

「セーフ」

大きく手を広げた。応戦席は、この逆転に興奮状態になる。そして、高杉君が逆転のホームを踏んだことを讃える声が沸き立つ。
「いいぞ、高杉!」
「さすが高杉!」
立ち上がった高杉君は応援席の向かって、
「ありがとうございます」
と言わんばかりに拳を高々と挙げた。

「すごいね、高杉君」
広人が高杉君のガッツポーズを見ながら言った。奏太も、
「かっこいいね」
と言いながら、いつまでも拍手している。
「夏まで病院のベットに寝ていた人に思えないわね。スーパーマンだわ」
母さんもつくづく感心したように噛みしめるように言った。
「ホントだ、ホントだ、よくやってくれた。泣けてきたぞ」
平田さんは目を擦る。
高杉君は僕らのヒーローだ。

 


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