第140回記事(2013年4月8日(月)発行)
(次回4月15日(月)発行予定)
(独り言:今、もの造り企業の環境はたいへん厳しいですね。3K職場ですし、海外から安価なものが入ってくるし。
また、但馬は”谷間”から来ているのではと言われるくらい平地が少ないところです。
そんな但馬地方のもの造り企業の応援の気持ちでこの記事を書いています。
井上三右衛門@晴耕雨読)
1年ぶりのものづくり・工場改善 会社編の記事になります。
<はじめに>
この「ものづくり・工場改善 企業編」では、兵庫県豊岡市にあり、独自技術を持った企業である、
①中田工芸さん(高級木製ハンガーシェアNo.1)
②東海バネ工業さん(人の背丈以上の高さのバネがスカイツリーの先端に組み込まれている)
を紹介してきました。これらの企業は、
会社の形態をとり、
工業的な生産をされており、
特定の分野で独自技術を持ち、
全国的に大変知名度が高い
会社さんです。
今回紹介するのは、神鍋山からの伏流水の清水(毎秒約700L湧出)で「わさび」を育てられている北村わさびさん(十戸区)です。上記の会社と比較すると、
家業の形態であり、
農業の分野に属し、
気候・天候の変化に対応されながら、
良質の大型のわさびを生産
されています。
しかも、十戸区の地で300年近くに亘っての生産になります。大変長い期間であり、何代にも亘っての生産になります。固有種としては約50年位になるようです。
<わさびについて>
わさび生産と言えば、長野県(安曇野市にある大王わさび農場は有名。行ったことがあります。)や静岡県(伊豆半島のわさびは有名。)の生産量が多く、北村わさびさんの知名度は低いと私は思っていました。しかし、グーグルの検索で「わさび」を入れると、4番目に登場してきました。ホームページを作成されていろいろ営業努力・情報発信などされている結果が検索順位に表れており、全国的に知られたものになっています。
わさびはアブラナ科ワサビ属に属します。わさび、特に沢わさびは、大量のきれいな水のあるところで栽培されます。つまり、大量のきれいな水がないと栽培できないものです。栽培には2年から3年かかります。また、抗菌作用・抗サビ作用・抗虫作用などを持っています。
そして、春に花が咲きます。実家の裏の農業用水路で小さいが白く可憐な花がひっそり咲いていた記憶があります。
(①わさび畑を見させていただいたときも白い花が咲いていました。
花から種が出来ます。)
<栽培は苦労だらけ>
北村わさびさんのホームページを読ませていただき、「わさび」栽培の苦労の大変さをつくづく感じました。ほんとうに大変です。その苦労はホームページを読んでいただければよくわかるはずですので、
ぜひ「わさび作りのこと」のページところを読んでください。
http://kitamura-wasabi.com/
また、「種取り人から種とり人へ」で検索していただくと、第17回のビデオ(前編と後編があります)の中で栽培の苦労がしみじみと語られています。
具体的に挙げてみると
作土関係
わさびを植えつける田に敷く、小石作り(田は面積で33アール=60m平方程度あり)
育成関係
わさびは高温を嫌うので、夏の温度管理
雨が降ると清水の量が増えるので、水量管理
冬場の冷たい中での、水を扱う作業
イノシシ・チョウチョなどの獣虫害の防止
種とり関係
良質で均一なわさびとなる種を取り続けること
約2ケ月かかる種の取り出し
発芽管理
再生
収穫後に泥にまみれた小石の洗浄(これは唯一機械化されたようですが)
手作業での小石のコケや水草の除去
などです。
(②苗床で育っているわさびの苗)
<長く継続することの難しさ>
北村わさびさんを紹介したくなった理由は2つあります。
一つは、ブログの2本柱である「神鍋溶岩流」と「企業・ものづくり」を両方カバーしている点。
もう一つは2013年3月2日(土)に「長寿企業の研究」と言うシンポジウムが京都市の同志社大学であり行ってきました。シンポジウムで登壇されたパネリストは、
池坊由紀氏(華道池坊次期家元:華道池坊はご存知かと思います)
大倉治彦氏(月桂冠株式会社社長:月桂冠は清酒の売り上げ日本一)
石田隆一氏(株式会社イシダ会長:イシダは秤でのシェア日本一)
です。たとえば、月桂冠さんは200年以上の歴史があります。しかし、今隆盛しているこれらの会社なども、ある時期には
社会・環境の変化による事業の継続
後継者の育成
では、大きな問題があり、それらを乗り越え乗り越えての現在があるという話を聞くに及び、300年近く苦労の多いわさび栽培を継続されることがどんなに大変なことか認識をあらたにしました。
(③苗床から畑に移植され、畑で育っているわさび。少し大きくなっています。)
この記事を書くために、北村わさびさんのわさび園を一目でも見てみたいと思いました。観光化された長野県の大王わさび農場に行ったことがありましたので。そのことを長寿庵さんという北村わさびさんのわさびを使用しているお蕎麦屋さんで話すと、わさび園は周辺を囲ってあるのでわさび園を見ることはできないとの事でした。実際に行って見て確かにそうでした。
わさび園を見ることが出来ずに帰る時、家の前で3歳くらいの子供さんが遊んでいて、手を振ってくれたので、こちらも手を振って別れ、車を停めた大清水商店の前の駐車場まで帰りました。帰る途中思いだされたのは、スクールバスで日高西中学校に通っていたころのこと。あのころは大清水商店の前は多くの生徒で溢れていたように思います。しかし、母校の西気小学校が生徒数の減少で138年目で閉校になってしまい、長く継続することがどんなに大変なことか。それは、卒業して都会に出てしまった私達に責任の一端がありますが。後を継いでくれる人がいないことはさびしいことです。
北村わさびさんは宜弘(よしひろ)さんが跡を継がれ、わさびの栽培を継続されています。
<まとめると>
TV東京などで放映されている「カンブリア宮殿」の村上龍氏風に書くと、次のようになるでしょうか。
時代が変わり、社会が変わり、環境が変わり、人が変わる。色々な変化がある。
そして、気候も年によっては大きく変動することがある。
そんな中で、100年以上も事業を継続していく事は難しい。
一つのことを長く継続することの難しさ
by晴耕雨読
後日談
4月30日にわさび畑を見学に行ってきました。
思っていた以上に、はるか彼方までわさび、ワサビ、山葵です。
それは、壁で仕切られた別世界でした。
一部のわさびには白い花が咲いていました。
(④大きく育ったわさび。はるか彼方までのわさび畑)
わさび畑全部の本数は約2万本ぐらいではとの事でした。
種から育成した場合の歩留まりは半分程度とのことでしたので、
約4万本をまず最初に育成されることになります。大変な数ですね。
また、約300年続いている点は、北村さんの本家がわさび栽培をされていたのを譲り受けて栽培を継続されており、合計で約300年になるとの事でした。
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