SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

神津照雄先生を悼む

2008-06-08 | 雑感
 2008年6月4日千葉大学医学部附属病院光学医療診療部教授の神津照雄先生のお通夜に行ってきました。神津教授は食道がんの内視鏡診断では我が国の第1人者として大変有名な先生でした。

 私が千葉大学第2外科に入局した時、神津先生は助手ながら第2外科の内視鏡グループのリーダーとして食道の手術と内視鏡診断に一生懸命取り組んでいました。当時から声が大きく、笑顔の絶えない先生でした。その後は食道がんの診断と治療で全国的に有名となり多方面でご活躍されました。千葉大学医学部では最も有名な教授だったと言えるかもしれません。まだ62歳とお若く大変残念です。先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

若い女性に多い膵腫瘍-solid pseudopapillary tumor

2008-06-08 | 治療
 若い女性に多い膵腫瘍があります。一般に「solid pseudopapillary tumor」または「SPT」と言われていますが、訳すと「充実性偽乳頭腫瘍」となります。 最近私はSPTに関する論文を書きましたのでSPTについてご紹介します。Surgical outcome of solid pseudopapillary tumor of the pancreas

 国立がんセンター東病院で切除したSPTの14例中13例は女性でした。平均年齢は39歳で、腫瘍の大きさは平均4.4cmでした。14例中、10例に腫瘍周囲に被膜が認められ、8例で腫瘍内にのう胞成分を認め、6例で腫瘍内に石灰化を認めました。PET検査を施行した6例中5例では腫瘍に強いFDGの集積を認めました。

 この腫瘍は一般的にはゆっくり大きくなる予後の良い腫瘍です。しかし、徐々にではあるものの大きくなることと、肝臓やリンパ節に転移することもあることから、診断がつけば腫瘍を摘出することが原則です。国立がんセンター東病院で切除した人では再発はなく全員無再発生存中です。つまり切除できれば治る可能性が極めて高いのです。ただし、少ないながら肝転移再発、リンパ節再発、局所再発などがあることも報告されています。