真山仁さんの小説「コラプティオ」を読んだ。
たまたま古い本を整理していて手にしたものである。
単行本は2011年7月発刊、文庫本は2014年1月発行である。
小説最後の謝辞にもあるが、この小説は「別冊文藝春秋」2010年3月号から2011年5月号に連載した小説を、
大幅に加筆修正したものという。
連載最終会の締切3日前に東日本大震災が発生したため、震災と原発事故を踏まえて作品を発表するのが小説家の使命と考え
加筆修正したという。
小説は、震災後の日本に現れたカリスマ総理・宮藤隼人の活躍を、その政策とそれを支える側近、そして新聞記者の攻防の物語である。
宮藤は、震災で荒廃した日本の復興に”禁断の原発政策"を採用しようとする。
温暖化対策や脱炭素政策で原発が必要で、そのことで日本の復興につなげようと考えていた。
そのために、原発技術を持つ企業を国有化したり、ウランの確保のためにアフリカ諸国に支援をしたりという政策を考えた。
民間ビジネスへの国家の介入、それをかぎつけた新聞記者との攻防、アフリカ諸国との会議の開催や裏での接待攻勢など、
実際にもありそうな事件で興味がわいてくる。
そんな中、アフリカでの日本人殺害の事件が、政権の闇を広げてゆく。
独裁的になろうとするカリスマ総理と取り巻く政権幹部、事件を追う新聞記者、現代の出来事を見事にとらえて小説としている。
そんなこともあるだろうという妄想を持ちながら、現実の政治との違いや報道の裏側で展開されているドロドロとした世界を
感じた小説であった。
ちょうど菅総理が退陣を表明し、新総裁が選ばれる自民党の総裁選挙時であり、総理大臣とはどのようにあるべきか、
総理を支える方々の気持ちや権力を争う人たちの行動などに、大いに興味をひかれた小説であった。
なお、「コラプティオ」とはラテン語で「汚職・腐敗」の意である。
また追加で、この小説とは関係はないが、この度新総裁に選ばれた岸田文雄氏は父も祖父も衆議院議員の世襲三代目である。
地盤は広島県であるが、元総理大臣の宮沢喜一氏ともつながりがあるという。
そして、今後の人事で財務相を想定されている鈴木俊一氏は、元総理大臣の鈴木善幸氏の息子であるが、その姉の夫が麻生太郎氏である。
麻生氏はその職をつながりのある義理の弟に引き継ぐのであろう。まあ会見では「適材適所」という言葉になると思うが。
すでに世の中は「新階級社会」などといわれているが、このように政界では世襲がほとんどになり、そのつながりで金力や権力が
受け継がれてゆく。そして一度その閨閥に類すると、それをまた強固にして自分たちだけが太ってゆく。
言葉では、国民のためといわれるが、行動は自己の権力の維持と増大を目指しているとしか思えない。
「安全安心」なオリンピックといって国民の生命を危機に落とすようなコロナ感染を拡大させながら、終われば自民党総裁選まつりで
大騒ぎしてメディアジャック、昔のことを忘れさせようとしても、私は忘れたくない。モリトモ、カケ、サクラ、アベ、スガ。