郷が杜備忘録

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美しき愚かものたちのタブロー(原田マハ著)

2023-01-12 | 読書

しばらくぶりに小説を読み始めた。

原田マハさんは、以前から読んでみたかった。1冊は過去に読んでいるが。

 

この本は、西洋美術に関する小説である。

美術は小、中学校で学んで、作品とか画家など知っている名前が多い。

内容は戦前に松方幸次郎が収集した美術(松方コレクション)を戦後日本が取り戻す過程を描いたものである。

そして、この松方コレクションを収容する場所として、上野にある「国立西洋美術館」作られたということであった。

 

最初にこの題名を見たとき「タブロー」とは何かがよくわからなかった。

読み進むうちに「絵画」であることが分かったが、さらに別の美術解説本で、ダヴィンチの時代に壁画と区別されて

「タブロー」と呼ばれたということであった。

 

話は、戦後と戦前を行き来しながら話が進んでゆく。

松方幸次郎とは誰れかや、なぜ西洋絵画を収集することになったのか、1920年代に収集した絵画はどのようにしてパリでの戦中を

免れたか、フランス政府に接収されたコレクションがどのようにして「寄贈返還」されることになったのか、

その間に、パリの街の中やルーブル美術館、いろいろな通りや建物、画家や画商たちなどが描かれている。

私も一度だけ行ったことがあるパリの街を思い出しながら、そして地図や美術品の関係本などを見ながら、読み進め楽しむことができた。

 

下の本は、かつて購入したルーブル美術館の所蔵品の解説本である。

印象派、特にゴッホやモネの作品が出てくるので、印象派に関する本も見てみた。







この本に出てくるゴッホの「アルルの寝室」は表紙にも採用されているが、うえにある解説本にも真ん中右側に載っていた。

さらに解説本裏の真ん中左はモネの「睡蓮」である。

フランスから「寄贈返還」されたのはコレクション全てではなかった。20数点はフランス政府に残されたという。

それでもモネの「睡蓮 柳の反映」、ルノワールの「アルジェリア風のパリの女たち」、ゴッホの「アルルの寝室」の

3点は返還をこだわったが、モネとゴッホの作品は戻らなかった。

さらに雨宮塔子さんの書いた「パリ アート散歩」によると、ゴッホの「アルルの寝室」は同名の作品が3点あるという。

1つはオルセー美術館のもの、もう一つはゴッホ美術館のもの、最後の1点はシカゴ美術館にあるという。

 

そして小説の最後に、

「戦闘機じゃなくて、タブローを」「戦争じゃなくて、平和を」。この言葉は戦争中にコレクションを守った日置こう三郎の

妻ジェルメンヌの言葉であった。

そして、松方幸次郎の言葉は「ほんものの絵を見たことがない日本の若者のために、ほんもの絵がみられる美術館を創る。

それがわしの夢なんだ」

交渉役を担った田代雄一の脳裏によみがえった言葉であった。

コメント (3)
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