名作の内容を手っ取り早く知りたいと、「要約文学」の最高傑作を読んでみた。
名前は知っているが、どんな内容なのか知らないのはたくさんある。
読んでみたいけど長編はなかなか読めないという作品がたくさんあるので助かった。
とりあえず、Ⅰから「ヘンリ・ライクロフトの私記」というのを読んでみた。
この作品は、ジョージ・ギッシング(1857-1903) という人の、1903年の作品である。
この作者の名前はあまり有名ではないと思う。私も知らなかった。
ただし、作品名にある想像した人物の名前、ヘンリ・ライクロフトのほうが有名である。
古本屋ではこの小説をよく見かけたものであった。
作者のギッシングは、ロンドンの貧しい人々の悲惨な生活を描いた小説をいくつも発表したものの、
死ぬまで人気を得られなかったという。
しかし、最晩年に書いたこのエッセーによって、イギリスのみならず日本でも100年間にわたって
読み継がれる作家のひとりになった。
作品中のライクロフト氏は、長い間貧乏暮らしをしていた文士であったが、50歳の時に知人から相当額の年金を遺贈され、
南イングランドの片田舎に隠退して、静かな余生を送るかたわら、この私記を書いたという。
したがって、作品中には50年余りの人生を送った後の、過去の自分に対する感慨とこれからへの思いが綴られている。
この作品は、20世紀の初めころに書かれている。21世紀になって、70歳間近かとなった私にとっては、100年以上前のことになるが
この間大きく世界は変わってきている。当然彼は20世紀の戦争の世界やグローバリゼーションなど知らなかった。
それ以前の、産業革命を経て大きくなってきたイギリスで働いてきた人であろう。
中身を見るとこれはギッシング自身がライクロフト氏を語って書いた自分の伝記ではないかと思えるものであった。
人生を振り返ってのなにがしかをやり遂げられなかったという思いと、いやそれでも自分はできることをやってここまでたどり着いたという
自分自身をたたえる言葉で綴られているような気がした。
あらすじを読んだだけでの感想になるが、私も人生の後半で思い当たるようなこともあり、実物も一度読んでみたくなった作品であった。
個人的にはなるが、昨年末のけが以来、身体の不調が治らず、いままでの仕事が続けられなくなったので、仕事を辞めた。
毎日家にいる生活になってしまった。読書、テレビ、ブログなどの毎日である。
終活ではないが、身の回りのがらくたを片付けながらの生活であり、過去を振り返ることも多くなった。
まさに、ライクロフト氏の思いを身近に感じる生活をしていると思う。
それにしても、電力代の高騰には参ってしまう。毎月の請求が大幅に昨年を上回っている。物価高騰による生活の困窮化、
これこそ今一番に解決してほしい。