気の向くままに

山、花、人生を讃える

嘘から出た真

2020年02月29日 | 人生

私は高校生になってから、善人ぶった人間より、悪人ぶった人間の方がよほど正直で好ましいと思い、そして自らも悪人ぶって、いろいろ悪いことをやり始め、停学になったり、警察に補導されたり・・・するようになりました。そして悪習慣が身に付き、怠け癖が身に付き、これではいかんと思いはじめた頃には、もう自分の弱い意志では立ち直れなくなっていました。

 

これは悪い方の「嘘から出た真」ですが、その後、私が20代の頃にこんな印象的で感動的な話を聞きました。
御用とお急ぎでない方は、どうぞ、その良い方の「嘘から出た真」の話を聞いてやって下さい。

 

さて、細かいところまでは覚えていませんが、或る不良で親不幸な青年がいたと思ってください。その彼が警察に追われるような何か悪いことをして、必死に逃げていました。そして、と或る人混みの中に逃げ込みます。

 

逃げ込んだときにはゼーゼー息をしていましたが、次第に落ち着いて来て、「ここはどこ?」と周りの様子を伺うと、誰かが演壇に立って話をしていました。その話を聞くともなく聞いてみると、その演壇の人物は「嘘でもいいから親孝行せよ」という話をしていたとのこと。青年はそれを聞いて「なかなか面白いことを言う」と思ったらしいのです。

 

そして家に帰ると、父親が風呂に入っているところでした。それで青年は「嘘でもいいから親孝行せよ」という言葉を思い出し、嘘で親孝行の真似事をする気になったそうです。それで「親父、背中流してやろか」と言って、父親の背中を流し始めた。そして自分が父親の背中を流していると思うと、なんだか妙な気持ちになってきて、一生懸命こすり始めました。こすっていると、父親の背中が前に倒れ込んでいくので、その背中を起します。しかし、また倒れ込んでいくので、また起こします。そうしているうちに、父親が泣いているのに気がついたそうです。

 

父親が泣いているのに気づいた青年は、ますます妙な気持ちになり、自分は今まで親不孝ばかりしてきて父親に嫌われていると思っていたのに、ちょっと背中を流しただけで、こんなに喜んでくれる父親であることを知り、本当に申し訳なかったという気持ちになり、警察に自首し、その後すっかり親孝行な青年になったという話でした。

 

というわけで、私にとっては、今でも忘れられない印象的な話でした。

コメント
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