CⅩⅩⅩⅦ「ホテル・モンタレー」1972を見る聴く、
始まりは、レセプションの様子、だが、鏡に映し出された世界、ロビーから覗かれる、枠の中に見える姿、こうして、受付から始まって、エレベーターの入り口に、二台並ぶ姿、開いて閉じて、客が乗り、下り、次にはカメラは、エレベーターの中から、上下するエレベーター、止まり、その階の廊下の様子、屯す人々、若くない人々、老人ホームのような、世界、始まりでも、老婆たちが、乗り込んでいった、ビジネスマン風の人、外国人、アジア人、エレベーターの中から見える、廊下の様子、覗き乗り込む人、見送る人、そして、部屋の中、誰もいない部屋、ベッド、灯り、シンプルだが、小奇麗に、いくつかの部屋の中、ベッドの位置が変わっている、ベッドの人、ソファの人、寝ている人、やはり、老人たち、音楽も、言葉もないのだから、静けさの中に、確かに、老夫婦の様子は見られなかった、未亡人たちか、男性でも、妻に先立たれたか、廊下、階段、ショット、だが、この固定ショットの中、陰影が撮られて、光と、影と、闇と、何所からか外光が入っていないか、ならば、時間の中、時の移ろいの中、光の動きは、必ず、あるのだ、切り取られた時空の中の動き、こんなショットたちの中、廊下の扉の蠢きが、しっかり閉じていなかったがゆえに、光の反射の動きも、ガラス張りの扉、扉の隙間から、奥の人物の姿、瞬間に閉じられて、人物は見えなくなって、だから、こうしたショットたちの中、必ず、何か、動きが有るのでは、光の、ライトの、エレベーターの押釦の、上下の表示の、階数表示の、なにも動きのない様に見えて、何か動きが、その後に続くショット、廊下を前移動、後退移動のショットが、まさに、カメラが動いている、これによって、時空もまた、光と影の動きが、そして、窓の外、階に依って、見える風景が変わる、人物が居なくても、光と影、風によって、扉が、動く、閉じる、揺らめく、ホテルは、こうした、動きの中に、消防の末端試験弁、ホース、干されている、消火に遣われたか、そして、窓の外、外のビル、壁、屋上、屋上の汚れ、柵、鳥対策の、突き出した鉄骨たち、パンして、ホテルの巡りを見つめる、下の通りには車の蠢き、静かなホテルなのだろうが、人の動きばかりか、多様な、時空間の揺らぎ、決して同じ場は、間は無い、屋上でビル群の高架水槽の列を捕え、パンアップ、曇り空の白の世界に、この白から、パンダウンすると、なんと、先ほどの、高架水槽の列とは違う、高架水槽が、白画面で、違う屋上の位置に角度にカメラは移って、パンダウンした、編集も、繋ぎも、舞い飛ぶ、ビルの位置によって、風景が、変わる、古いビル群だが、渋い落ち着いた壁たち、汚れてもいるのだが、時代を感じさせるビル群、ホテルも同様に、こんなビル群の中に、佇んでいるのだろう、人々と、ビルと、光と影の同居、動きの同居、こうした時空間を捕えることが映画なのだ、ここにあるショットたちは、行きかう人々の視線なのだ、部屋、壁、ベッド、廊下、窓、窓の外の景色、ビルたち、空、通り、町、水辺、出会い、すれ違い、歩き、部屋に戻り、座り、寝て、この陰影に何を見る、過去、未来、孤独、切望、希望、死、私、私たち、エレベーターに戻って、点滅する表示灯、開いて、閉じて、近代という、町の豊かさ、貧しさ、そして、悲しみ、これは、プルーストではないか、ホイルを介しての、主人公の監督の私の視点、視線、ロビーで、エレベーターホールで。見て、見られて、他の客たちとの関わり、廊下、光、影、歩いて、見つめて、時空、陰影、窓辺、外の風景、通り、車、この視線の中に、思考する、思い、過去、未来、今、現在、現実、音のない世界、己の内なる世界、と、現実との、関係、交わり、見つめる人々の視線、見つめる私の視線、だが、この私とは、エレベータの行き来、ランプの点滅、廊下、階段、蛍光灯の明かり、天窓からの光、部屋の中、ベッド、窓、椅子、ソファ、座っている、寝ている、閉まったドア、空いているドア、僅かに開いて、蠢いているドア、反映している、光、揺らめき、消火栓ホース、出口、誘導灯、屋上、外、他のビルの風景、空、カメラの動き、私の視線の動き、繋ぎ、町、路地、通り、水辺、近代、そして、またどこか、廃屋のような壁たち、冷却塔の冷却された白く舞う蒸気、白い煙の舞い、全ては、私の、監督の、幻、いや、これこそが、私なのだ、