ⅭⅩⅥ「のんきな姉さん」を見る聴く、
夜の闇の中、歩いている主人公、遠くネオンが、花火が上がる、まっすく夜空に上がって、破裂、見つめる主人公、全ては、この一瞬の間の幻想ではないか、オフィスの主人公、一人残業か、雪山を転がりゆく青年、電話、主人公に、どこにいるのと主人公、判っているはずと弟、主人公の婚約者が電話、男の両親に挨拶もないままに、結婚話が進んでいる、オフィスのトイレ、電話している主人公、女性トイレだが、課長が現れて、驚きの主人公、結婚話を聞かれてしまう、こうして、オフィスでの、課長と主人公の語らい、向かい合ってはいない、課長の席に座って居る課長、ショットが変わると、全く違う位置に居る課長、この変幻自在、課長のテーブルの赤い置物が構図のアクセントに、語らい、言葉は何所か空回り、そこに婚約者が現れた、通りでのんきな姉さんの本の広告、買ってきた婚約者、既に、手にしていた主人公、課長も知っている、ここに書かれていることは、何も知らなかったと主人公、馬鹿なと、これはお話よと主人公、今度またお話しましょうと、主人公の部屋のベッド、朝、なんと主人公と弟が同じベッドで寝ている、姉と弟、甘えて、食事を作ってと弟、まるで夫婦、果たして、二人の関係は、食事する弟、見つめる姉、さて絵画のレッスン、裸のモデルの弟、見つめ生徒たち、絵を描いて、このシーンで、聞こえてくるのは、姉と弟の会話、弟の帰り道、生徒の一人が、小学校の同級生だよと、もっと裸を見たいかと弟、何よと娘、こうして二人は主人公の部屋に、姉は会社と思っている弟、が、玄関が開いている、不審、部屋の中、抱きつく娘、恋、オフでは、二人の絡みの音、二人は、人の気配、気付いて振り返る、姉が起きだしたのだ、姉は出かけていなくて、部屋にいた、苦笑いの弟、娘、挨拶する娘、お茶を飲む二人、タバコの二人、むせて、吐く主人公、妊娠ではと娘、驚きの弟、帰った方がいいか娘、そうしてと弟、弟は己の子と思っているのだ、娘との語らいで、学校でアルコールランプで、燃やしてしまったことを覚えているかと、過去シーンだろうか、なんと家が炎上しているのだ、これもまた、誰かの幻想、果たして、かくて、オフィスの主人公の世界と、主人公の部屋での弟の世界、電話の青年、それは雪山の弟、これらが、絡まりあって、どこまでが、現実世界、どこからが、小説の世界、いや、誰かの幻想世界、全てが小説世界とも、妊娠のことを問いただす弟、馬鹿ねと、あなたの子ではないと、でも、あなたの子ではないと云うことは、二人はやはりセックスしていたのだ、愛し合っていたのだ、主人公は覚悟を決めて出ていくことに、そこに婚約者の男が、一緒に墓参りにと、弟は、姉に出ていかせたくなくて、二人に絡むのだが、結局、車で両親の墓に、車の中、弟のアップ、素晴らしい、都心の川縁の弟と男、いたわる男、優しく抱きよせるように、何所か厭らしい手つき、その男がオフィスに、弟はどこだと、弟に何をしたと、あなたはと課長、弟の父だと、養子にしたのだと、聴いてないと主人公、プレゼントのごとく男が持ってきた箱の中にはライフルが、主人公を脅す、止めに入る課長、撃たれる課長、この世界もまた、どこの世界、小説の中、弟の夢世界、姉の幻想、車から降り立つ、三人、トンネルの向こうに墓が、墓の前で手を合わせる三人、弟が、語りだす、姉と愛し合っているのだと、何を言うのだと主人公、問い質す婚約者、逃げ去る主人公を追う男、こうして、弟と主人公の道行き、川縁、車の中で、両親のことが語られた、借金に追われての家の炎上、事故とも、自殺も、だが、主人公と弟の語りや姿を見ていると、そして、小屋が炎上しているシーンに弟が居る、見つめている、佇んでいる、二人が殺したのではなかったか、駄目両親を撃った、いや、撃つ前に、死なれてしまった、この炎上ゆえの、二人の恋、二人が、残された、二人が、抱き合い求めて、生き延びてきた、これまでの、何所かコミカルな世界から、位置関係の曖昧なショットたちゆえの、課長、弟の父、婚約者らの、オフィスでの位置、構図、言葉、空回り、すれ違い、夜の闇の中、始まりのシーン、にまいもどったか、花火が上がる、破裂、見つめる主人公、だが、道行の二人は雪山に、その二人が聞く花火の破裂音、あの始まりとその前の破裂音の反復か、二人は歩いていく、そして、主人公は弟を送りだす、その空に花火が上がる、いくつもの花火が、祝福か、課長が語っていた、主人公に、大丈夫と、同じことは起こらないと、二人は、それぞれに、自立して、やっていけるか、孤児の二人が、こうして生き延びるしかなかった地獄から、今、だが、これもまた、小説世界に過ぎないのではないか、弟の小説、いや、二人の小説、弟ばかりが、主人公の結婚に食って掛かっているが、弟の恋と絡みのシーンで、姉が現れた、弟は玄関で、姉が居ることを察していて見せつけようとしていなかったか、姉が、二人の恋を阻んだのだとも、まさか、ラストの花火を、祝いと思う愚か者もあるまい、優しい課長の言葉を真実とも思うまい、殺し屋のライフルの炸裂も真とは思うまい、地獄の中、一人通りを歩む上がった花火に託された幻想の中、地獄は続くのだ、のんきな姉さん、そして、のんきな私たち、