こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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先入観は危険

2012-06-24 22:01:15 | 訪問看護、緩和ケア
何事にも言えることですが、先入観はとても危険です。

情報の共有は必要ですし、病状や経過や問題点などの申し送りも必要です。
でも、現状これからどう支援していくかは、あくまでも自分の眼でみて判断しないと、実は真逆だったなんてことも良くあります。

病院では、「神経質で我儘で、いつもイライラして、ケアも拒否するので、本当に対応が難しいですよ。」と言われていた方が、在宅に戻ってしばらくすると、本当に穏やかで、周囲にも気遣い、いつもニコニコしている、素敵なお母さんになっていたりします。

何で、あんなに病院では不機嫌だったのだろうか?と不思議に思っていたのですが、実は原因はただ一つ、「辛かった。具合が悪かった。」からだと言う事が分かったりします。

本人の訴えに耳を澄まして、ちっとしたお薬の処方や、ケアのし方の工夫や、処置の声掛けで、苦痛が軽減されることで、表情は全く変わってくるのだということがよくわかります。

だから、その人が再びイライラしたり、返事もしないし、時々声を荒げるなんてことがあれば、それはきっとどこかとても辛いところがあるのだとわかるのです。

特に、患者さんは病院での顔と家での顔は、全く違ったりします。

ある患者さんは、退院前訪問に行くと、ずっと苦虫をかみつぶしたような顔をして、ちょっと怖い人かな?と思わせる雰囲気を漂わせていました。
病棟ナースに聞いても「彼はずっとつらそうな表情で、笑顔もほとんど見せません。」と言われていましたが、
退院直後の初回訪問に行くと、びっくりするくらい柔和な笑顔で、私を迎えてくれました。
これからのこと、冗談を交えながらも、どれほど家族が愛おしいかを話してくれました。
そして、二度と病院には戻らず、ここで最後を迎えたいと話してくれました。

「病院にいるときは、随分と怒ったようなお顔をされていましたね。でも今はとてもうれしそう。やっぱりお家は最高ですか?」と聞くと「とにかく、病院が嫌で嫌で仕方なかった。自分と同じ病気の人が、次々と死んでいく。もう、本当に耐えられなかったんです。やっぱり、家はいいなぁ。」と。

家族背景も、ご本人もいろいろな問題があって、すごく大変かも・・。
と言われていた患者さんが、関わってみるとどんどん受け入れてくれて、実は意外にスムーズにいくこともあれば、すごく親孝行で一生懸命なご家族に、何とか力になりたいと、万全な体制で支援に入ったとたん、ものすごいクレーマーと化したり・・。

そうでなくとも、人間対人間。
相性一つで、良くも悪くも変わったりします。

いろいろと問題の多いとされる患者さんの初回訪問に学生さんを連れて行ったあと、「サマリから想像していた家族状況ともちょっと違う感じがしました。」と言っていました。
相手の状況をどうとらえるかも、実は人によって大きく違います。

「サマリや、申し送りをちゃんと知りつつも、自分の眼でみて、自分で話を聞いて、状況を判断することが大事だよね。」と話をしました。

だから、「ものすごい困難事例らしい依頼があったよ。」と言った時「そんな大変な事例ばかり受けないで、よそに回せばいいのに・・。」と囁く声に、「大変だと言っていても、実は何とかなっちゃうこともあるし、先入観で患者さんを選びたくないから受けるよ。」と言いました。

でも・・、その通りめっちゃ支援が大変だったことも、実はけっこう多いのです。

ま、誰かがうけなきゃならないので、とりあえず深く考えずにトライするのみです。