和色ムーブメント

シニアになって、今一度「ムーブメント」を感じる旅に出てみようか

飲食店の “まかない” 料理

2009年04月11日 | 二升五合




「後輩のお店で」

先週、後輩のお店に顔を出した時、
“もう昼飯食べられました?良かったら一緒に ・・・!” と声が掛かりました。
すでに昼食は済ませていたのですが、「試作を兼ねた賄い料理」 ということで、
ちょこっと味見?させてもらうことに ・・・

ベースは和食&寿司の職人ですが、数年、創作料理店でも腕を揮っていた経験が
ある後輩(店主)が作る料理(メニュー)は、基本をしっかり押さえた和テイスト料理と
洋や韓の要素を取り入れた創作オリジナル料理です。料理というものは、料理人の
感覚や考え方がそのまま出てしまうものです。このお店ではイヤ味の無いシッカリ
した表情と味わいのある料理が提供されています。やはり、料理人(店主)の性格
がハッキリ出ているとつくづく感じます。

常連客も増え、地域に根付きつつあるお店ですが、一見客も含めた新たな顧客
獲得と飽きのこないメニュー提案という意味から、新たな商品(料理)は必要です。
流行を安易に追いかけた商品やお客様のニーズから懸け離れて的を得ていない
料理の乱発は、マイナスになりますので注意しなければなりませんが、現在、良い
状態のお店であっても、まったく動きを見せなければ、結局、ジリジリと後退して
しまうのが飲食店です。常に顧客の半歩先を進んでいなければなりません。


「お店と顧客の関係」

さて、話を戻しますが、後輩のお店で頂いた 「まかない」 での試食は旨かったです。
味だけなら、すぐにメニューに加えてもいけると思います。ただ、新商品の意図が
明確にあるのであれば、肉の下処理の時間等の本質的な改良も含めてでしょうが、
まだまだ詰めなければならない要点があるのだと思います。個人的には味の追求
よりも、五感に訴えるようなインパクトと料理人としての遊び心も少々発揮してほしい
と感じます。

飲食店を訪れた時、料理の味だけ旨ければ満足するというものではないはずです。
顧客が求めているもの、得たいと思っているものの中には、そのお店や料理人の
考え方や姿勢もあるはずです。料理に対して、顧客に対して、何をどうしようとして
いるのか ・・・ そして、その姿勢を来店した顧客が得たいと思うかどうかなのです。
そういう接点で、「客と店(店主や料理人)」 の関係が生まれることもあるのだと理解
すべきです。そしてそれは、まず、人と人の関わりが基本となっていることは事実で、
その関わり方が一方通行になったり、料理やお酒の興味のみで繋がっていれば、
いずれは、間違いなく人気が下降し、来客が減少し売上も低迷してしまいます。

飲食店は “生きた人間を相手にしている商売である” ということを常に頭に置いて
創意工夫しなければなりません。料理など商品に対する工夫は常に必要ですが、
これからの飲食店は、“対人間関係” という視点での工夫が明暗を分けることに
なるのではないでしょうか ・・・ マニュアルの利かない “ガチ勝負!” ですね。


「まかないの意味と役割」

本題ですが、飲食店でスタッフが摂る食事を 「まかない料理」 と言います。
元々の意味は、“有る物(残り物や安い食材)で賄う料理” という意味だと思います。
飲食店では、単に “まかない” と呼び、大きなお店では、若い見習いや中習いの
スタッフが担当し、料理を作る練習を兼ねていることが多いはずです。また一方、
個人店では、オーナーシェフなど仕事ができる人や仕事の早い人が作っている
ケースが多いかもしれません。それは時間も含めた人件費や使用食材などに
無駄なコストを掛けず “賄っている” ということだと思います。

“できれば、若いスタッフにも作らせてやりたい” と思いつつ、お店の収支も気に
しなければならないのが個人店の店主です。私の個人的な考えとしては、それらの
気持ちも含め、スタッフを巻き込んで店舗運営に当たることも必要だと考えます。
延いてはそれが、自店を大きくし、スタッフを強くすることに繋がると思います。
大きなお店の場合、使用食材の原価基準やルールがありますが、その辺りの管理
を行なうのであれば、なぜ(何の為)、自店で 「まかない」 を提供しているのかと
いう意味まで踏む込んでスタッフにも明らかにしておくべきです。(本質の共有)

実は、「まかない」 を作っていない(提供しない)飲食店もあります。コスト削減という
観点の場合と、元々、FCなどのパッケージ店舗で、提供しているほとんどの料理が
一人前ずつ真空パックされた冷食を使用していて、切るだけ、温めるだけで提供して
いるので、「まかない」 に使える食材が無い、料理を作れるスタッフが居ないなどの
場合です。ウソのようですが、そういった飲食店もそこそこ存在するのですョ ・・・ 。

「まかない」 には、スタッフのお腹を満たす(単に食事)という目的以外に、新たな
料理の試作や現状メニューの味チェック、若いスタッフにとっては “見る” “作る”
勉強であったりと、意外とたくさんの意義があるものです。時々、料理長が自ら腕を
揮うことで、特に若いスタッフには大きな刺激となり、アルバイトスタッフの中には
感動さえする者もいます。「まかない」 によって、お店の雰囲気や色合いが自然と
伝わり、一緒に働いているスタッフの心の中に、店舗に対する思い入れや愛情が
芽生えることもあります。

自身が働いているお店(料理人)の味も知らず、“おすすめは○○です!”
なんて平気で言うアルバイトさんがいたとしたら ・・・ 業界人として寂しい限りです。
グランドメニューにある料理であろうが、「まかない」 であろうが、食事として提供
されたなら、その料理をよく見て、その料理を作ってくれたスタッフの姿もよく見て、
まずは敬意 ・・・ “いただきます!” そして、感謝 ・・・ “ごちそうさまでした!”
しっかりと、自分の舌と頭にインプットしておきます。その体験した味わいこそが、
唯一、お客様に本気で伝わる “おすすめ” なのですから ・・・ 。



■ 二升五合 ■

「まかない」 の無い店は寂しいものだ
仕出し弁当で済ます店はもっと寂しい
本気で良い店、良いスタッフにしたいなら
店で賄う食事こそ大事にすべきである
そう思えるスタッフを育てるべきである

第五大成丸