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10月29日、更新料を有効とする大阪高裁の判決がありました。
これは、更新料支払い特約(2年ごとに2か月分)を巡って今年3月27日、大津地裁で貸主側が勝訴した(借主側の請求が棄却された)事案の控訴審です。
<経緯>
原告(借主)は平成12年8月、賃料5万2千円、更新料2か月等の条件で滋賀県の物件に入居。2年ごとに2か月分の更新料を2回、3回目の更新時は1か月分を支払った。
退去後、原告は「更新料支払いの約定が消費者契約法10条または民法90条に反して無効である」と主張して、5か月分の更新料26万円の返還等を求めたが、21年3月27日、大津地裁はこれを棄却。
原告はこれを不服として3月31日に控訴。大阪高裁は本日、これを棄却した。
<大阪高裁の判決の内容等>
詳細が分かりましたら、後日、改めてお知らせいたします。
<参考:大津地裁の判決全文>
(賃貸マンション更新料問題を考える会のページより)
http://www.koushinryou.net/document/otsukoushin.pdf
<参考:大津地裁の判決の要点>
(以下、3月27日の日管協メルマガより)
<賃貸借契約書の記載>
第2条(契約期間・更新)
標記の契約期間満了の1ヶ月前までに、甲、乙のいずれからも書面による異議申出のない場合は更に2年間更新されるものとし、以後も同様とする。その場合、乙は甲に対して契約更新料として標記の通り支払うとともに、更新に必要な書類を甲に提出するものとする。
<更新料の法的性質に関する裁判所の判断>
1.賃料の補充(一部前払い)の性質
・賃貸借契約書および重要事項説明書、また本件建物の広告に家賃や更新料の記載がある。
・証拠によれば京滋地区においては更新料の慣行が長年にわたり存続し、17年4月からの1年間に契約された物件に限っても、55.1パーセントの契約に更新料(平均1.4か月)の定めが設けられている。
・「借賃以外に授受される金銭の額及び当該金員の授受の目的」は重要事項説明の対象であるから、仲介業者は更新料(更新時に授受され、返還されない)について説明したと推認される。
・よって、原告は賃料や礼金、更新料を支払う必要があると認識し、立地、間取り、設備等とあわせて複数の賃貸物件と比較した上で、自らの需要に最も合致した物件を選択したと推認される。
・貸主が更新料名目の一時金を設ける趣旨は、月額賃料等のみならず一時金をも加えて目的物の使用収益の対価として把握し、契約期間終了時までに受領すべき賃料の一部を前払いにより回収する代わりに、その分月額賃料を低くするというところにあると推認される。
・つまり貸主・借主とも一時金が設けられているとの認識は合致しており、本件更新料は、合意更新後の賃料の一部前払いとしての性質を有するものというべきである。
2.更新拒絶権放棄の対価の性質
・更新料を、更新拒絶の放棄の対価とみることは可能。とはいえ更新拒絶の正当事由が認められることは経験則上多くはないから、更新拒絶権放棄の対価たる性質は希薄といえる。
3.賃借権強化の機能
・契約途中で貸主が解約を申し入れないという意味で更新料に賃借権強化の機能が認められる。とはいえ貸主の正当事由が認められることは経験則上多くはないから、賃借権強化の対価たる性質は希薄といえる。
4.結論
・更新料支払い条項は、目的物の使用収益の対価たる賃料の一部前払いおよびその額を定めた条項である。
<消費者契約法との関係についての裁判所の判断>
1.法10条前段の要件(民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の義務を加重する消費者契約の条項)に該当するか・更新料支払い条項は、更新後賃料の一部を前払いさせる
ものであり、賃料の後払いを定めている民法614条と比べて、借主の義務を加重している。
・また、借主により中途解約されたときにも返還・精算されず、使用収益が無いのに対価だけ徴収されることから、民法上の任意規定が適用される場合と比較して借主の義務を加重するものであるといえる。
・よって、更新料支払い条項は、消費者の義務を加重している。
2.法10条後段の要件(民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの)に該当するか
・更新料支払い条項は、借主が負担すべき額や次期が明確であり、判断の前提となる情報は開示されていたうえ、京滋地区で長年普及した概念である。
・証拠によれば、民間賃貸住宅のストック数は量的に充足しており、原告が更新料条項を不当と考えた場合には他の賃貸物件を選択することが容易だった。原告は自由意思で本件物件を選択しており、貸主が情報力・交渉力の格差につけ込み、自己に一方的に有利な契約条項を借主に押し付けたとはいえない。
・よって、更新料支払い約定に、消費者の利益を一方的に害する事実は認められない。法10条後段の要件に該当し無効であるということはできない。
<判決>
以上の次第で、原告の請求は理由がないからこれを棄却する。