えつこのマンマダイアリー

♪東京の田舎でのスローライフ...病気とも仲良く...ありのままに、ユーモラスに......♪

コンサートレビュー2015 ~清塚信也 ピアノ・リサイタル~

2015年01月20日 | 音楽

 

 一昨日、地元清塚信也氏のピアノの演奏会を聴きました。「清塚信也 ピアノ・リサイタル ~ピアノで聴くシネマ~」です。

               

  清塚氏は作曲・編曲も手がけるピアニストです。テレビドラマ「のだめカンタービレ」(2006年)や映画「神童」(2007年)で主人公のピアノ演奏シーンの吹き替えを担当して注目を集めた後、映画「さよならドビュッシー」(2013年)では俳優としてもデビューし、裏舞台から表舞台に出たという異色の経歴の持ち主です。
 その演奏会の感想を一言で言えば、 「とにかく楽しかった!」です(*^▽^*) 演奏会を聴いてこういう感想を持つのはたぶん初めてです。しっとりとした曲から情熱的な曲まで、クラシックからポップス・ジャズまで、幅広い内容のパフォーマンスで、まさに「マルチピアニスト」と称されるのがふさわしいプログラムでした。さらに、気取らない軽妙な語り口、ユーモアたっぷりの話術にも魅了されました。観て、聴いて(演奏)、聴いて(トーク)楽しめるエンターテインメントだったのです。 

 プログラムはこちらです:
        (最大に拡大してご覧ください)

 

 以下、備忘録として、清塚氏のトークの内容や私の感想をとりとめもなく記してみます。

  「戦場のピアニスト」 vs 「海の上のピアニスト」

 映画「戦場のピアニスト」で使われたショパンの「ノクターン第20番~遺作~」と、映画「海の上のピアニスト」で使われたエンニオ・モリコーネの「愛を奏でて」。この2曲の静かな調べでコンサートは始まりましたが、演奏後に語られた両曲を巡るエピソードに、会場の雰囲気は一変...清塚氏のトークにまずは“つかまれ”ました(*^_^*) 戦場→船上→海の上...という連想からか、この2曲を混同する人が多いそうで、パーティーなどで「戦場...」をリクエストされ、弾き終わった後に「曲が違う」と言われ、困惑してしまうことがままあるとか...。その語り口が実に軽妙で、“つかみ”の上手さに感心。

  名曲過ぎる「ニューシネマ・パラダイス」

 この映画のために書かれたエンニオ・モリコーネの名曲の数々には、「名曲には違いないけれど、名曲過ぎるのでは?」というユニークな提言を。「映像につける音楽は、あくまでも映像を引き立てるものでなければいけない。映像に勝ってはいけないと思っている」と。自分が映像に曲をつけるときは、少なくともそういう気持ちで作っているという言葉が印象的でした。
 そういう意味であまりに名曲過ぎると思ってしまう、ということであり、もちろん、これが清塚氏の最大の賛辞であることは言うまでもありません。この曲をも映画をも愛する私には、それがよく伝わってきました。

  お金にうるさかったベートーベン

 ベートーベンは晩年耳が聞こえなくなったと言われていますが、全く聞こえなかったわけではないことが、記録からうかがえるとか。昨年某国で虚妄が発覚したS氏の名を出すことなく、でも、さらっと匂わせながら言及するあたり、話術が見事でした。因みに、ゴーストライターを務めたN氏については、才能ある音楽家だと評していましたよ。

 閑話休題、ベートーベンは交響曲を書くのにとても時間がかかり、時には数年かかることもあったと。その間収入を得るために、交響曲に使うメロディーをモチーフとした曲をソナタとして出し、サンプルとして世間の反応を試していたとのこと。ソナタが32曲もあるのはそういう理由だとか。なるほど。例えば、ソナタ「熱情」の第1楽章に出てくる ♪タ、タ、タ、タン♪ は、後に交響曲第5番「運命」の出だしに生かされたと。
 また、同ソナタ第1楽章は、耳が聞こえなくなって絶望したベートーベンが死のうと考えていた時期に書かれた曲なので、思い切り暗いけれども、第2楽章は田園風景に癒されることで生まれ、「やはり生きていこう」という意気込みが第3楽章に表われているとの解説でした。

  人生初めての“下手に弾く練習”

 くだんの映画「神童」で、主人公のワオを演じる松山ケンイチの吹き替えをするに当たり、役柄ゆえ下手に弾かねばならず、人生で初めて下手に弾くための練習を8時間もしたとか。わざとらしくなく、事故っぽくミスする練習に励んだそうです。
 吹き替えをする演奏者選びについても、業界ならではの裏話を披露してくれました。俳優となるべく性別を合わせて選ぶとか、背格好が近い人を選ぶようにするのだそうです。俳優のイメージに合った演奏ができそうな演奏家を選ぶ、ということなんですね。諸事情から、そうはいかない場合もあるようですが。

 その映画で吹き替えた曲がくだんの「熱情」ソナタだったわけですが、「熱情」は第2楽章と第3楽章との間に休みを入れずに連続して弾く異色の形式(アタッカattacca)なので、清塚氏は2楽章の最後の部分から弾き始めて、3楽章を演奏してくれました。「下手に弾きますから」と前置きしての演奏でしたが、とんでもない、クラシック出身の氏の真骨頂を発揮、前半を閉めるにふさわしい、まさしく情熱的な演奏でした。

  サプライズ ~「闘うバイオリン弾き」の登場~

 後半3曲目の「ムーンリバー」では、学校の先輩だという西垣恵弾氏に突然呼びかけ、西垣氏がバイオリンをケースごと持って客席から登場するという、サプライズ的パフォーマンスがありました。西垣氏は自称「闘うバイオリン弾き」、格闘家でもある演奏家で、風貌もそれ系です(^_^; ステージ上でおもむろにバイオリンをケースから取り出し、調弦もしないでいきなり競演を始めましたが、その風貌からは想像できないような、美しく優しい音色を奏でていました。そのときの清塚氏の演奏は、まさに主役のバイオリンの引き立て役に徹していて、好印象でした。会場に来る途中で偶然出会って出演を依頼した、と言っていましたが、おそらく計画された演出だろうと思います。違うかな?

  圧巻だったガーシュインメドレー  

 後半はしっとりした選曲が多く、それに合わせてトークも抑えめ。そこへ、最後に、自ら編曲したガーシュインのメドレーを敢えて豪快に“速弾き(はやびき)”されまして...これが、編曲、演奏、ともに圧巻でした。「敢えて」というのは、プロの演奏家が速弾きすることは、実力をひけらかしているようで、自ら敬遠する演奏家が多いからだそうです。そのリスクを敢えて背負い、取り払いながらチャレンジしているわけなんですね。数々の受賞歴のある実力者ならではの挑戦、といえるでしょうか。
 また、コンサート全体の構成という視点でも、全体的に静と動のメリハリが効いていて、構成自体が抜群だったといえると思います。

  マルチピアニストにふさわしいアンコール

 アンコールがまたすばらしかった!
 1曲目は、ご本人編曲の映画音楽メドレーでした。
 ここからは、私の耳と認識が正しいことを前提として読んでいただきたいのですが、まず、ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」に始まり、「シェルブールの雨傘」→チャップリンの「Smile」とつながったかと思うと、勇ましく「パイレーツ・オブ・カリビアン」へ。次はどこへ行くのかと思いきや、なんとラフマニノフの交響曲第2番の第3楽章の“つかみ”のフレーズが出てきて...ハンス・ジマーからラフマニノフ?と思っていると、「タイタニック」のテーマがちょこっと出てきて、またラフマニノフに戻り...私の大好きなメロディーなので、「これをもうちょっと聞かせて~」と思っていると、ショパンの「別れの曲」へ、そしてまたラフマニノフ...(^_^; もう変幻自在、自由奔放なアレンジ! 次に何が出てくるのかとワクワクする見事なアレンジメドレーに、楽しく翻弄?幻惑?されました(*^▽^*)  

 2曲目のご本人編曲による「グランドメドレー」は、再びハンス・ジマー風のリズムに始まったかと思うと、いきなり「エリーゼのために」が流れ出し、いつのまにかモーツァルトの「トルコ行進曲」をモチーフにした、さながらジャズ風変奏曲へと巧みにつながれ、最後は清塚ワールド大展開! 楽しくてしかたないのだろうなと思える演奏、アドリブでも延々と弾けるのではないかと思える演奏で、観客の万雷の拍手を受けて終わりました。

 

 とにかく、ピアノや音楽だけではなく、映画も大好きなんだなぁというのが伝わってくると同時に、エンターテインメントに徹したコンサートで、正味2時間20分ほどのエネルギッシュなパフォーマンスはあっという間でした。演奏家本人も楽しそう&観客も楽しいコンサート。「とにかく楽しかった!」というのは、そういうわけです(#^.^#) ピアニストというよりは、エンターテイナーの呼称の方がふさわしいかもしれませんね。 

 

                  

 作曲・編曲のできる演奏家、しかもこの甘いマスク。さらに、前半と後半とで衣装や靴まで替えるおしゃれっぷり。残念ながら写っていませんが、ジャケットに合わせた白い靴、黒のアンクルパンツにノーソックスだったんですよ。やはり、裏舞台にいるのはもったいない方ですね。裏舞台で活躍する人を貶めているわけでは決してありませんが...。 
 会場には、キラキラ光るお手製と思しきファンうちわを持ったおばさまが複数いました。追っかけたくなるのも無理はないかも...(^_^; 年間120本もの演奏会をこなすという売れっ子ぶりにうなずけました。

 

                                         

 こちらはおまけ...
 昨年の3月、新日本フィルハーモニー交響楽団Wikipedia)の第86回多摩定期公演を「パルテノン多摩」で聴いていました。

             

 ジャン=クリストフ・スピノジ指揮。プログラムは以下のとおりです:
         
                (最大に拡大してご覧ください)
     

 母にまつわるゴタゴタが始まる前にチケットを買っていたので、多忙の合間を縫って、どこかに後ろめたさを抱きながら聴きましたが、やはり聴いてよかったです。音楽には癒されますねぇ。アップし損ねていたので、記録として載せておきます。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 失われゆく里山 ~変わりゆ... | トップ | 最近の新聞記事より ~女た... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音楽」カテゴリの最新記事