アベノミクスで株をやっているものだけが
大儲けしているとわけのわからない発言をした政治家がいましたが、
株をやったものはすべて儲かってるような錯覚を世間に思わせています。
儲ける人がいれば必ず損する人がいるのが株の世界です。
ゼロサムです。プラスマイナスゼロなのですから。。
そーすから
???年明けから株価はぐんぐん上がり、あっという間に大台突破。しかし、景気がよくなるわけでもない。「いったい、この国に何が起きているのか」――市場関係者は固唾を飲む
2万円の大台突破から約1年半で1万円割れ。そんな株価暴落劇が起きたのは'00~'01年のことだ。いま再び見えてきた大台超え。今度は大丈夫か、それとも悪夢再びか。駆け引きはもう始まっている。
財務省の会議室で
その顔には自信がみなぎっていた。
12月2日、野村ホールディングス(野村證券)が都内で開催した機関投資家向けの「野村インベストメントフォーラム」。ライトグレーのスーツに身を包んだ永井浩二CEOは登壇すると、2016年3月期の経営目標を「2年前倒しでおおむね達成できました」と語り出した。
アベノミクスによる株高の恩恵を受けて、野村の業績は絶好調をキープ。今年の中間決算でも、直近10年間で2番目に高い水準の純利益を確保したばかりだ。永井CEOは、インフレの時代には個人が預貯金に貯め込んだカネを株などの有価証券に移すのが「歴史的な必然」と語り、デフレ脱却を目指すアベノミクスが継続すればこの動きが「本格化する」とさらなる株高への期待感を来場者にアピールしてみせた。
こうした日本株への強気姿勢は、もちろん野村に限ったことではない。最近では米ゴールドマン・サックスが来年には日経平均株価が2万円を超えるとの予測を発表して話題になったばかりである。目下の総選挙で安倍晋三総理が率いる自民党が圧勝して、株高を追求するアベノミクスがさらに強化されれば、株式市場はこれを好感。年明けから株価はぐんぐん上がり、春先にも2万円突破がある。そんな見通しを語るマーケット関係者は少なくない。
株価は2万円を目指す。しかし、「その後」について市場関係者は多くを語ろうとしない。いくら株が上がっても景気は一向によくならず、庶民の生活は苦しくなるばかり。「不況の株高」という歴史的にも世界的にも見られない超異常事態がそう長くは続くはずもない。株価2万円という大台を超えた時に、いよいよそのアベノミクスの矛盾が露呈し、この国に何かが起きると固唾を飲んでいるのである。
そんな市場関係者の警戒を象徴するようなシーンがある。
中央エレベーターを降り、少しくすんだ赤絨毯沿いに右へ曲がって一つ目の部屋。窓からは薄明かりが差しこむ。財務省本庁舎4階フロアーにある第3特別会議室。ここに市場関係者たちが集まったのは11月下旬のことだった。
財務官僚と証券会社の国債担当者が、日本国債に関する重要事項について意見交換をする国債市場特別参加者会合。市場関係者の間で「国債インナーサークル」と呼ばれる会合が開催されていた。
16時からスタートした会は財務省理財局による来年度の国債発行計画に関する説明から始まり、応札責任に関する話題へ。続けて、最近の国債市場の状況と今後の見通しについて話が及んだ時、参加者から日本経済の先行きを懸念するこんな声が上がった。
「足元で急速な円安が進む中、円安が止まらなかった場合に、当局にそうした流れを止める手段がない」
折しも、日本銀行によるハロウィーン緩和を契機に急速に円安が進んでいた時期。安倍政権の台本に描かれている「円安→大手輸出企業の業績が向上→日本経済全体の浮上」というシナリオ通り、政府や大メディアは円安が日本経済を復活に導くと声高に語っていた。会合の出席者はそんな「円安楽観論」に疑問を投げかけたのだ。
堰を切ったように、会合では出席者から同様の危惧が次々と飛び出した。
「海外の一部では、『日本売り』が始まったのではないかといった声も聞かれる」
「円安が急激に進行した場合にそれを止める手段がないということは、非常に不幸な物価上昇につながるおそれがある」
円安の裏にある「日本売り」。それは、海外投資家たちがアベノミクスで景気がよくならない日本経済を嫌気して、円を売り始めているということに他ならない。
そして最悪の場合、円の売り浴びせが起こり、日銀のコントロールが効かない円安が進行。全国各地でアベノミクスの恩恵を受けられない多くの庶民が円安による物価高で生活苦に追いやられているが、事態の悪化がさらに加速し、モノも買えないような「不幸な物価上昇」に陥る。日本の中枢でそんな予測が語られていたのである。
海外の金融関係者も日本へ警鐘を鳴らし始めた。
12月1日、米大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本国債の格下げを発表。日本国債を先進7ヵ国(G7)の中でイタリアに次いで下から2番目、イスラエル、オマーンなどと同レベルにまで落とした。
「景気後退局面に入った」
「デフレ脱却は困難」
ムーディーズの担当者は、格下げの理由をこう語った。安倍総理は「日本経済はデフレから脱却しようとしている」と言うが、世界の見方はそれとは違うことが示された形だ。
「日本国債格下げ翌日の12月2日、日経平均株価は下げるどころか、年初来高値を更新した。同日夜にNHKの番組に出演した安倍総理は『日本の経済の力に対して外国の信任は高いのだろう』と自信満々に語っていたが、内心は焦っていたはずです。というのも、あまり知られていませんが、実はこの2日に日本銀行がETF(上場投資信託)を374億円購入し、株価を下支えしているのです。この『日銀介入』を知った一部の投資家は、中央銀行に逆らうなという相場の格言に従って株売りをストップさせた。もしそれがなければどうなっていたか」(外資系証券会社幹部)
マーケットアナリストの豊島逸夫氏も言う。
「12月2日、3日と株価は上がりましたが、実は海外投資家はほとんど買っていません。海外のヘッジファンドや年金ファンドはすでに日本株から離れ始めている。これが世界の常識です」
海外投資家の日本離れ。それを如実に示す決定的な証拠がある。
上のグラフをご覧いただきたい。今年の年始からの日経平均株価の推移を、円建てとドル建てで並べたものである。
円建てチャートのほうは日本人が普段から目にする見慣れたものである。春先にかけて株価下落があったものの、この年末にかけて株価は急上昇。年始の水準を大きく超えて、年初来高値を更新している様が見て取れる。これをもって、安倍政権は「株価を上げた」と胸を張っているわけだ。
しかし、ドル建てチャートが描く日本株の姿は、ガラリと様相が変わる。日本株市場は140~150ドルの間で株価が上下に動くボックス相場に突入。最高値は年始の株価であり、以降これが更新されていないことがわかる。言うまでもなく海外投資家が見ているのは後者、つまりはドル建てのチャートのほうである。
チャートを作成したRFSマネジメントの田代秀敏・チーフエコノミストによれば、ここから言えるのは以下の3点である。
(1)株価が上がったと思っているのは日本人だけで、世界は日本株がすでに膠着していると見ている。ドル建て高値が更新されないのは、世界がアベノミクスの限界に気付いているから。
(2)つまり、海外の金融機関は日本株を積極的に買っていない。その証拠に海外勢のドル建ての総投資額は増加していない。言い方を換えれば、今年に入ってからすでに積極的な「日本買い」は起きていない。
(3)海外勢がやっているのは短期投資。株価の乱高下を利用して利益を出そうとしているだけで、そのためボックス相場になっている。日本株市場は短期筋の「カジノ場」と化した―。
産経新聞NY駐在編集委員の松浦肇氏も言う。
「アベノミクスが始まった当初は円安になる以上に株価が上がっていたのですが、その流れは最初の7~8ヵ月で止まっています。腰をすえた資金を呼び寄せられるかどうかは痛みを伴う『第3の矢』の成否にかかっていますが、現状ではヘッジファンドと話をしても、長期的な視点で日本買いをしたいという声はあまり聞こえてきません」
世界中のマーケット関係者が毎日ウォッチしているブルームバーグは、11月末に中国の株式市場の時価総額が日本のそれを上回り、日本が「世界2位」の座から転落したとの記事を配信した。同記事によれば、中国の時価総額が年始から33%増加したのに対して、日本は約3%減少したという。日本の株式市場はすでにシュリンク(収縮)を始めているのだ
日本が貧乏になっていく
安倍政権が誕生してから2年。実はこの間、ドル建てで見た日本のGDPが約1兆ドルも縮んだということもあまり知られていない。
ドルベースで見た世界各国のGDP推移を見ると、この20年ほどで米国は2倍以上、中国は10倍以上も成長している。しかし、「日本は20年前の水準を大きく超えない状態を続けてきた上、アベノミクスが始まったここ2年ほどでさらに大きく縮んでいます。結果、いまや日本のGDPは中国の半分にも及ばない水準にまで落ちた。つまり、アベノミクスは日本の経済成長になんの影響も与えず、実は日本経済はドルベースでは衰退を続けているだけなのです」(ジャーナリストの山田順氏)。
このままいけば、日本がドイツに抜かれて世界第3位の経済大国の座を奪われる事態も考えられる。「日本買い」が起こらないのも当然である。
在NY投資銀行家の神谷秀樹氏も言う。
「最近、英誌『エコノミスト』が'15年の一人当たりGDPの予想値を載せていましたが、それによれば日本の一人当たりGDPは約3万9000ドルでほとんどの欧米主要各国よりも下。アジア内でも5~6番手でした。アベノミクスが始まって以来、4割円安となりました。これは国際基準で見れば、日本人が4割貧乏になったのと同義です。さらにアベノミクスが円安を進めれば、日本人がどんどん貧乏になっていくだけです」
国が縮み、国民は貧しくなる―これが世界から見た日本のリアルな姿なのだ。しかし考えてみれば、それは多くの日本人の庶民感覚とも合致する見方ではないだろうか。
政府や大メディアは株が上がった、企業は最高益ラッシュだと騒ぐが、景気がよくなったと思っているのは一部の資産家と大企業だけ。日本人の7割が勤める中小企業は円安の影響でむしろ業績が悪化し、給料カットや倒産の憂き目にあっている人も少なくない。安倍総理は「賃金は上がっている」などと叫ぶが、それも大企業だけの話で、なにをバカなことを言っているんだというのが多くの日本人の実感だろう。
最近では、病院関係者から「来院者が減っている」との声が聞こえてくる。物価高で食料などの生活必需品は値上がりラッシュ。給料も減る中で、おカネがもったいないので病院に行かないという選択肢を取る日本人が増えているのだ。過激な言い方をすれば、アベノミクスによる死者が出てもおかしくない窮状にまで追い込まれているのである。
それでも株価は、前述した通り、2万円を目指していく。今回の選挙で安倍政権が勝利することは間違いなく、株価が庶民の気持ちのバロメーターだと考えている安倍総理はなにがなんでも株高を維持する政策を打ってくると市場は見るからだ。
さらに来年には、いま進行中の原油安によって日銀が掲げるインフレ目標が達成できない可能性が出てくるため、それを阻止すべく「黒田バズーカ」が再び発動される可能性が高い。日銀は「円安・物価高の追求に余念がない」(みずほ銀行チーフマーケットエコノミストの唐鎌大輔氏)というのがマーケットの共通見解であり、投資家たちは「いま一度の追加緩和→円安」というシナリオにベット(賭け)し、それが株高を導く流れを加速させる。
2万円へ向けて上昇する過程で、「年末にも今年儲かっていないヘッジファンドが利益確定のために、膨らませたポジションを一旦解消。円高株安に振れるシーンがあるかもしれないが、それは一時的なもの。その後は再び株高の流れに戻る」(前出・豊島氏)。
その一方で庶民の生活はまったくよくならない。むしろ円安進行で、より強烈な物価高に襲われる。
そして、「その日」は突然やって来る。
前出・田代氏が言う。
「実体を伴わないアベバブル相場を百戦錬磨の海外投資家たちが売り崩す。上げに上げておいた相場を今度は大暴落させ、空売りで巨額の利益を得ようとしてくるわけです。それは'89~'90年にかけてのバブル相場崩壊時に投機家たちがやった手法そのものです。
これがいつなのかを予想するのは難しいですが、私はドル建ての日経平均が155ドルに迫るあたりだと見ています。日経平均が急伸した昨年末のドル建ての日経平均株価は155ドルでした。この高値を更新した時、海外勢は一斉に売りに回る。その時に1ドル=120円だと想定すると155ドルの日経平均株価は約1万8600円。1ドル=130円であれば、日経平均株価は約2万円。このあたりが臨界点になるのではないか」
大儲けしているとわけのわからない発言をした政治家がいましたが、
株をやったものはすべて儲かってるような錯覚を世間に思わせています。
儲ける人がいれば必ず損する人がいるのが株の世界です。
ゼロサムです。プラスマイナスゼロなのですから。。
そーすから
???年明けから株価はぐんぐん上がり、あっという間に大台突破。しかし、景気がよくなるわけでもない。「いったい、この国に何が起きているのか」――市場関係者は固唾を飲む
2万円の大台突破から約1年半で1万円割れ。そんな株価暴落劇が起きたのは'00~'01年のことだ。いま再び見えてきた大台超え。今度は大丈夫か、それとも悪夢再びか。駆け引きはもう始まっている。
財務省の会議室で
その顔には自信がみなぎっていた。
12月2日、野村ホールディングス(野村證券)が都内で開催した機関投資家向けの「野村インベストメントフォーラム」。ライトグレーのスーツに身を包んだ永井浩二CEOは登壇すると、2016年3月期の経営目標を「2年前倒しでおおむね達成できました」と語り出した。
アベノミクスによる株高の恩恵を受けて、野村の業績は絶好調をキープ。今年の中間決算でも、直近10年間で2番目に高い水準の純利益を確保したばかりだ。永井CEOは、インフレの時代には個人が預貯金に貯め込んだカネを株などの有価証券に移すのが「歴史的な必然」と語り、デフレ脱却を目指すアベノミクスが継続すればこの動きが「本格化する」とさらなる株高への期待感を来場者にアピールしてみせた。
こうした日本株への強気姿勢は、もちろん野村に限ったことではない。最近では米ゴールドマン・サックスが来年には日経平均株価が2万円を超えるとの予測を発表して話題になったばかりである。目下の総選挙で安倍晋三総理が率いる自民党が圧勝して、株高を追求するアベノミクスがさらに強化されれば、株式市場はこれを好感。年明けから株価はぐんぐん上がり、春先にも2万円突破がある。そんな見通しを語るマーケット関係者は少なくない。
株価は2万円を目指す。しかし、「その後」について市場関係者は多くを語ろうとしない。いくら株が上がっても景気は一向によくならず、庶民の生活は苦しくなるばかり。「不況の株高」という歴史的にも世界的にも見られない超異常事態がそう長くは続くはずもない。株価2万円という大台を超えた時に、いよいよそのアベノミクスの矛盾が露呈し、この国に何かが起きると固唾を飲んでいるのである。
そんな市場関係者の警戒を象徴するようなシーンがある。
中央エレベーターを降り、少しくすんだ赤絨毯沿いに右へ曲がって一つ目の部屋。窓からは薄明かりが差しこむ。財務省本庁舎4階フロアーにある第3特別会議室。ここに市場関係者たちが集まったのは11月下旬のことだった。
財務官僚と証券会社の国債担当者が、日本国債に関する重要事項について意見交換をする国債市場特別参加者会合。市場関係者の間で「国債インナーサークル」と呼ばれる会合が開催されていた。
16時からスタートした会は財務省理財局による来年度の国債発行計画に関する説明から始まり、応札責任に関する話題へ。続けて、最近の国債市場の状況と今後の見通しについて話が及んだ時、参加者から日本経済の先行きを懸念するこんな声が上がった。
「足元で急速な円安が進む中、円安が止まらなかった場合に、当局にそうした流れを止める手段がない」
折しも、日本銀行によるハロウィーン緩和を契機に急速に円安が進んでいた時期。安倍政権の台本に描かれている「円安→大手輸出企業の業績が向上→日本経済全体の浮上」というシナリオ通り、政府や大メディアは円安が日本経済を復活に導くと声高に語っていた。会合の出席者はそんな「円安楽観論」に疑問を投げかけたのだ。
堰を切ったように、会合では出席者から同様の危惧が次々と飛び出した。
「海外の一部では、『日本売り』が始まったのではないかといった声も聞かれる」
「円安が急激に進行した場合にそれを止める手段がないということは、非常に不幸な物価上昇につながるおそれがある」
円安の裏にある「日本売り」。それは、海外投資家たちがアベノミクスで景気がよくならない日本経済を嫌気して、円を売り始めているということに他ならない。
そして最悪の場合、円の売り浴びせが起こり、日銀のコントロールが効かない円安が進行。全国各地でアベノミクスの恩恵を受けられない多くの庶民が円安による物価高で生活苦に追いやられているが、事態の悪化がさらに加速し、モノも買えないような「不幸な物価上昇」に陥る。日本の中枢でそんな予測が語られていたのである。
海外の金融関係者も日本へ警鐘を鳴らし始めた。
12月1日、米大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本国債の格下げを発表。日本国債を先進7ヵ国(G7)の中でイタリアに次いで下から2番目、イスラエル、オマーンなどと同レベルにまで落とした。
「景気後退局面に入った」
「デフレ脱却は困難」
ムーディーズの担当者は、格下げの理由をこう語った。安倍総理は「日本経済はデフレから脱却しようとしている」と言うが、世界の見方はそれとは違うことが示された形だ。
「日本国債格下げ翌日の12月2日、日経平均株価は下げるどころか、年初来高値を更新した。同日夜にNHKの番組に出演した安倍総理は『日本の経済の力に対して外国の信任は高いのだろう』と自信満々に語っていたが、内心は焦っていたはずです。というのも、あまり知られていませんが、実はこの2日に日本銀行がETF(上場投資信託)を374億円購入し、株価を下支えしているのです。この『日銀介入』を知った一部の投資家は、中央銀行に逆らうなという相場の格言に従って株売りをストップさせた。もしそれがなければどうなっていたか」(外資系証券会社幹部)
マーケットアナリストの豊島逸夫氏も言う。
「12月2日、3日と株価は上がりましたが、実は海外投資家はほとんど買っていません。海外のヘッジファンドや年金ファンドはすでに日本株から離れ始めている。これが世界の常識です」
海外投資家の日本離れ。それを如実に示す決定的な証拠がある。
上のグラフをご覧いただきたい。今年の年始からの日経平均株価の推移を、円建てとドル建てで並べたものである。
円建てチャートのほうは日本人が普段から目にする見慣れたものである。春先にかけて株価下落があったものの、この年末にかけて株価は急上昇。年始の水準を大きく超えて、年初来高値を更新している様が見て取れる。これをもって、安倍政権は「株価を上げた」と胸を張っているわけだ。
しかし、ドル建てチャートが描く日本株の姿は、ガラリと様相が変わる。日本株市場は140~150ドルの間で株価が上下に動くボックス相場に突入。最高値は年始の株価であり、以降これが更新されていないことがわかる。言うまでもなく海外投資家が見ているのは後者、つまりはドル建てのチャートのほうである。
チャートを作成したRFSマネジメントの田代秀敏・チーフエコノミストによれば、ここから言えるのは以下の3点である。
(1)株価が上がったと思っているのは日本人だけで、世界は日本株がすでに膠着していると見ている。ドル建て高値が更新されないのは、世界がアベノミクスの限界に気付いているから。
(2)つまり、海外の金融機関は日本株を積極的に買っていない。その証拠に海外勢のドル建ての総投資額は増加していない。言い方を換えれば、今年に入ってからすでに積極的な「日本買い」は起きていない。
(3)海外勢がやっているのは短期投資。株価の乱高下を利用して利益を出そうとしているだけで、そのためボックス相場になっている。日本株市場は短期筋の「カジノ場」と化した―。
産経新聞NY駐在編集委員の松浦肇氏も言う。
「アベノミクスが始まった当初は円安になる以上に株価が上がっていたのですが、その流れは最初の7~8ヵ月で止まっています。腰をすえた資金を呼び寄せられるかどうかは痛みを伴う『第3の矢』の成否にかかっていますが、現状ではヘッジファンドと話をしても、長期的な視点で日本買いをしたいという声はあまり聞こえてきません」
世界中のマーケット関係者が毎日ウォッチしているブルームバーグは、11月末に中国の株式市場の時価総額が日本のそれを上回り、日本が「世界2位」の座から転落したとの記事を配信した。同記事によれば、中国の時価総額が年始から33%増加したのに対して、日本は約3%減少したという。日本の株式市場はすでにシュリンク(収縮)を始めているのだ
日本が貧乏になっていく
安倍政権が誕生してから2年。実はこの間、ドル建てで見た日本のGDPが約1兆ドルも縮んだということもあまり知られていない。
ドルベースで見た世界各国のGDP推移を見ると、この20年ほどで米国は2倍以上、中国は10倍以上も成長している。しかし、「日本は20年前の水準を大きく超えない状態を続けてきた上、アベノミクスが始まったここ2年ほどでさらに大きく縮んでいます。結果、いまや日本のGDPは中国の半分にも及ばない水準にまで落ちた。つまり、アベノミクスは日本の経済成長になんの影響も与えず、実は日本経済はドルベースでは衰退を続けているだけなのです」(ジャーナリストの山田順氏)。
このままいけば、日本がドイツに抜かれて世界第3位の経済大国の座を奪われる事態も考えられる。「日本買い」が起こらないのも当然である。
在NY投資銀行家の神谷秀樹氏も言う。
「最近、英誌『エコノミスト』が'15年の一人当たりGDPの予想値を載せていましたが、それによれば日本の一人当たりGDPは約3万9000ドルでほとんどの欧米主要各国よりも下。アジア内でも5~6番手でした。アベノミクスが始まって以来、4割円安となりました。これは国際基準で見れば、日本人が4割貧乏になったのと同義です。さらにアベノミクスが円安を進めれば、日本人がどんどん貧乏になっていくだけです」
国が縮み、国民は貧しくなる―これが世界から見た日本のリアルな姿なのだ。しかし考えてみれば、それは多くの日本人の庶民感覚とも合致する見方ではないだろうか。
政府や大メディアは株が上がった、企業は最高益ラッシュだと騒ぐが、景気がよくなったと思っているのは一部の資産家と大企業だけ。日本人の7割が勤める中小企業は円安の影響でむしろ業績が悪化し、給料カットや倒産の憂き目にあっている人も少なくない。安倍総理は「賃金は上がっている」などと叫ぶが、それも大企業だけの話で、なにをバカなことを言っているんだというのが多くの日本人の実感だろう。
最近では、病院関係者から「来院者が減っている」との声が聞こえてくる。物価高で食料などの生活必需品は値上がりラッシュ。給料も減る中で、おカネがもったいないので病院に行かないという選択肢を取る日本人が増えているのだ。過激な言い方をすれば、アベノミクスによる死者が出てもおかしくない窮状にまで追い込まれているのである。
それでも株価は、前述した通り、2万円を目指していく。今回の選挙で安倍政権が勝利することは間違いなく、株価が庶民の気持ちのバロメーターだと考えている安倍総理はなにがなんでも株高を維持する政策を打ってくると市場は見るからだ。
さらに来年には、いま進行中の原油安によって日銀が掲げるインフレ目標が達成できない可能性が出てくるため、それを阻止すべく「黒田バズーカ」が再び発動される可能性が高い。日銀は「円安・物価高の追求に余念がない」(みずほ銀行チーフマーケットエコノミストの唐鎌大輔氏)というのがマーケットの共通見解であり、投資家たちは「いま一度の追加緩和→円安」というシナリオにベット(賭け)し、それが株高を導く流れを加速させる。
2万円へ向けて上昇する過程で、「年末にも今年儲かっていないヘッジファンドが利益確定のために、膨らませたポジションを一旦解消。円高株安に振れるシーンがあるかもしれないが、それは一時的なもの。その後は再び株高の流れに戻る」(前出・豊島氏)。
その一方で庶民の生活はまったくよくならない。むしろ円安進行で、より強烈な物価高に襲われる。
そして、「その日」は突然やって来る。
前出・田代氏が言う。
「実体を伴わないアベバブル相場を百戦錬磨の海外投資家たちが売り崩す。上げに上げておいた相場を今度は大暴落させ、空売りで巨額の利益を得ようとしてくるわけです。それは'89~'90年にかけてのバブル相場崩壊時に投機家たちがやった手法そのものです。
これがいつなのかを予想するのは難しいですが、私はドル建ての日経平均が155ドルに迫るあたりだと見ています。日経平均が急伸した昨年末のドル建ての日経平均株価は155ドルでした。この高値を更新した時、海外勢は一斉に売りに回る。その時に1ドル=120円だと想定すると155ドルの日経平均株価は約1万8600円。1ドル=130円であれば、日経平均株価は約2万円。このあたりが臨界点になるのではないか」