はな兄の1分で読めるエッセー

ふと脳裏に浮かんだ雑感を気ままに綴った日記

暗闇の待合室②

2023-11-10 18:52:22 | 病院

「紅白歌合戦ももう何年観てないんだろ」

「本当の紅白らしい紅白って実質的に30年前に終わってると思う。

紅白はすべての曲が『ザ・歌謡曲』っていう感じじゃないと」

「我々の子どもの頃はまさにそうだったよね

弘田三枝子、ザ・ピーナッツ、由紀さおり、都はるみ、ちあきなおみ

水前寺清子、和田アキ子、西田佐知子、トワエモア、美川憲一、橋幸夫

森進一、村田英雄、北島三郎、三波春夫、菅原洋一...

ああ、きりがない」

「当たり前だけど、みんな歌がうまい」

「今年の紅白には、往年の歌姫が出るらしい」

「往年?」

「なら西田佐知子が出てほしいな。

『涙のかわくまで』

俺のカラオケナンバーだし」

「おいおい。浜崎とか松田とかでしょ」

「なーんだ」

「な~んだじゃない。古いんだよ

せめて百恵ぐらいならまだしも」

「今の若者にとっちゃ

山口百恵でも往年の歌手と言うことになるらしい

そりゃ俺たちも年をとったってことなんだな

百恵と俺とでは二つしか違わないのに

ずいぶん年上のような気がする

人生の濃さが違うんだろな

こちとら、スカスカの人生で

またの名を『すかがわスカオ』というんだから」

 

「いっそのこと

全員、往年の歌手特集にしちゃえばいいのに。

だって紅白って、年配者のための番組と言ってもいいわけでしょ。

森進一も北島三郎も出てほしい。サプライズは山口百恵!」

「でも往年の歌手ばかりになると

裏番組のテレビ東京の『懐かしの昭和の名曲集』みたいなのと

被っちゃうんじゃない」

「そんなの気にするな。森進一はさあ、おふくろさんばかりじゃなく

『襟裳岬』で締めくくってほしかったんだよな。最後の紅白で。

その歌手が思い入れの強すぎる曲というか歌って

聴いててコチラが肩がこっちゃう。

岩崎宏美だって

『思秋期』に思い入れが強くて

歌いたい気持ちはわかるけど

聴いてて疲れるんだよね。

宏美ファンの俺としては。悪いけど。

もっと軽快に歌った『二十才前』のほうが

聴いてて心地よいのにねえ。

歌手ってさ

『この曲は自信作だ。久しぶりにいい曲に巡りあえた。

気合を入れてヒットさせるぞ』

と、思い入れたっぷりに歌ったのが案外売れずに

『アタシこの曲、嫌いだわ。レコーディングも仕事だから

いやいやながらも一応やりましたけどォ』

ってのが、その歌手の最大のヒット作になったりするんだよね」

「サプライズゲストは誰が出てほしい?

もうほんとに、現実的非現実的とか考えずに

亡くなった人でも、どんな人であっても依頼できるとしたら。

キミは山口百恵ね」

「私は、戦後間もない頃の笠木シズ子。

今、聴くのは昔のマイクでの、昔の録音だけど。

フリオ・イグレシアスが使ってるような高性能のマイクで

現代の録音技術でのCDで聴く笠木の歌声って

とてつもなく上手なんじゃないかな」

「CDだって。いまはレコードが再びナウいらしいが。

僕は、トニー谷のタイトルは忘れたけど

『さいざんす。家庭の事情』とか歌ってるやつ。

もちろんリアルタイムじゃないんだけど

永六輔がトニー谷のファンで

タモリとたけしを合わせたより面白いって言ってたから

一度、生で観てみたい」

「ボクは将棋ファンなので

内藤先生の『おゆき』です」

「エライ!」

 

 

 

 

 

 

 


通院日

2023-10-12 05:13:49 | 病院

12日は通院日だった。

 

尿と血液検査をして診察をして

免疫用製剤+その他のクスリをもらう。

おおむね前回と変わりませんよ

と小山医師は言うが、

空腹時血糖が、135で

ヘモグロビンA1C(エーワンシー)の数値が

7.3である。

前回が7.2

前々回が7.1だった。

ちなみに

ヘモグロビンA1Cとはなにかというと...

血糖値はそもそも空腹時や食後で

一日の中でも大きく変動するが。

その人の一か月間の平均血糖値を示す数値である。

健常者は、5.0ということになる。

人生で一番高い時は38歳ぐらいの時で

14.8ぐらいになった。

腎臓の機能を測定るクレアチニンの数値も悪化し

強制入院となった。

その2年後に人工透析生活がスタートしたんだよねえ。

 

14.8というと

朝食前の空腹時で、血糖は280

その後、1日を通じて

350~450ぐらいで推移して

次の日って感じだと思うんだよね。

実は当時は血糖を計測してインスリン注射を打つんじゃなく

血糖を測らずに、ホントに適当なインスリンの量を打っていた。

低血糖になるのが怖いから、かなり控えめに注射を打っていたら

指先のしびれと

指で太ももを押すと指がめり込んで

スグには戻らず指の形のままのこるようになった。

あわてて病院へ駆け込んで14.8が判明したときは

もはや手遅れだったわけです。

 

「いずれまたインスリン始めなくちゃいけませんかねぇ」

と私が問うと小山医師は答えた。

「その前に。ん~試してみる価値のあるクスリはあるよ」

「クスリ?ダオニールですか」

「そういうんじゃない」

ダオニールというくすりは

なにか元気がなくなって(原因不明)

インスリンの出が悪くなったすい臓に対して

『すい臓くん!しっかりインスリン出してくれよ。頑張ってくれよ」

と、すい臓の肩をバンバン叩いて叱咤激励する作用がある

なんだか昭和の体育系(?)みたいなクスリなのだ。

 

今は全くアプローチが違うらしい。

摂取した過剰な糖を分解して(糖でなくし)排出する働きのある

クスリだというのである。

 

「ああそういえば、先週の『がっちりマンデー』の前の健康番組の

糖尿病特集で

チラと見たような...」

ええっ。

そんな夢のようなクスリがあるの~。

聞いてないよ。

私は一瞬躍り上がりそうになったが

いやまてまて

美味しい話には必ず落とし穴があるものだと

冷静さを取り戻し、医師に尋ねた。

「そのクスリって、副作用みたいなのはあるんですか」

すると、小山医師曰く

「服用すると一時的に尿道や膀胱に糖が溢れるんだ。

そのときに、ちょっとでもそこに菌があると

それらが結びついて、尿道炎とか膀胱炎になりやすい」

あ~なるほろ。

 

 

とはいえ

そういうクスリがあるのは心強い。

いずれ改良されて副作用も軽減されるだろう。

 

糖尿病患者数は超高齢化社会が続く限り増えてゆく。

インドを含むアジア各国でもその傾向は続くに違いない。

世の中の不景気好景気は関係なくクスリの需要は伸びるんじゃないか。

 

つーことで

今私は、株の長期的投資先に

このクスリメーカーを候補リストに入れている。

また、透析機器メーカーも。(『日機装』など)

透析機器はドイツがライバルになるが

アジアへの輸出に活路を見い出す。

これからの日本の輸出産業は

自動車だけに頼るのではなく

先端医療機器、薬品だと確信するものであるが。

 

その前に!

 

株を購入する資金を作らなければならない。

ガクッ。

 

 


真夜中の待合室

2022-09-08 03:33:01 | 病院

消灯時間は9時。

病院内の必要最低限の灯り以外は消えた。

みんなさすがにこの時間には眠れない。

 

暗闇の中

入院中のいつもの男二人と女一人が

いつものように内科の広い待合室の真ん中付近に陣取る。

小曲昭男(仮名)は、高校教師。

金箱真由美(仮名)は

自称貧乏放送作家。

そして『はな兄』こと私。

 

我ら三人は

高校時代のクラスメイトなのである。

同じ横浜の高校のクラスメイトが

40年後に

ほぼ同じ時期に東京の病院で

入院患者として出くわしてしまったのである。

松本清張の『十万分の一の偶然』どころのさわぎではない。

 

(続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 


病院うだうだ話②

2022-01-08 02:31:34 | 病院

20歳ですい臓からインスリンが出なくなり糖尿病。

25歳で服薬からインスリン注射開始。

合併症で目や腎臓が悪化してゆき

40歳、透析を始める。

毎日5回~7回のインスリン注射と週に3回の透析がちょうど10年間。

そして忘れもしない20011年5月1日。

50歳で、鳥取の60歳男性の脳死ドナーからすい臓と腎臓の移植。

以来約10年と6か月。

 

この40年は何もなさなかった40年と言ってよかった。

二十歳までの20年と以後の40年じゃ

前半の20年の方がむしろ中味が濃く充実している。

長い時間のように感じる。

後の40年を無意味なものにしないために

どう活かせるかはこれからにかかってると言えるが

もう還暦だからねえ。

どうしようか。

ジタバタしてもしょうがないし。

かといって

朽ち果てるのを待つしかないんじゃ寂しい。

 

 

アレ?

 

 

このセリフ

50歳になったばかりのときも呟いたような気がする。

その一か月後の5月に前述のように、確率2パーセントの

脳死ドナーからの移植のオファーが舞い込んできたのだ。

 

人間の運命はどう転ぶか解らない。

たんたんと生きていれば

何かいいことが起きるかもしれない。

そう思って

これからも生きてゆこう。