アメリカで
ブタの心臓を移植した人が
術後1か月ちょっとで亡くなった。
人間のドナーが見つからなかったというよりも
ヒトの心臓を移植できるカラダの状態ではなかったというが。
日本では
臓器移植ネットワークに登録してる人が1万6000人
その中で実際に移植の希望をかなえられる人が
年に400人。
約3パーセントだという。
(すい腎同時移植の経験しか話せないが)
登録してただ漫然と過ごしているだけでよいのだろうか。
就活、婚活と同じように
移植活動(略して、移活)が必要だと思う。
まず基本は
いついかなるときに(移植の)連絡が来ても
常に移植可能なカラダの状態を維持している
...ということである。
いざ話が来ても
そのときに登録時からカラダの状態が悪化して
移植手術にはリスクが大きすぎるとなれば
見送られてしまう。
したがって
ここはまさに文字通り『ライフワーク』と
自分の健康を最優先に
友だち付き合いは二の次に
赤子なくともフタとるな
の姿勢でいなければならない。
また
登録してから私は
安売りの大学ノートを買い込んで
血糖値ノートをつけ始めた。
ノートの白い面に
横線を3本引く。
4分割される。
朝食前の血糖値。
加えて直後に売った
インスリンRとNの二種類の単位(量のこと)
さらに直後の朝食のメニューを
(4分割の)一番上の段に記す。
昼食時も夕食時にも
就寝前にも同様に記すわけである。
その自己管理ノートを
一日も欠かさず
6年ぐらい続けたとき
移植手術登録先の担当医に
ドサッとノートを提出した。
担当医は
「キミの努力に敬意を表して
ダメ元かもしれないが中央調整委員に送ってみるか」
と感心しつつ受け取った。
さて
個々のドナーの行く先を決定する組織は
よくわからないのだが
仮に上記の中央調整委員会だとしよう。
これで私の模範的な患者としてのイメージを
訴えられたかしら。
上記にも述べたように貴重なドナーの臓器
出来るだけ移植した臓器を
大切にしていてくれる患者にこそ
移植させてあげたいと考えるのが人情だろう。
ボクと同じ程度の移植候補で
甲乙つけがたい場合
僕を選んでくれる確率が高くなったかもなどと
能天気に思ったりしたが
ハタと、こうとも考えた。
この調整委員の先生方の心理としてはですね
「これだけ几帳面にノートをつけ
自分の健康維持に努力してる。
また血糖値もほぼ200以内を保っている。
だからなにも、今すぐ移植せずとも
いまの人工透析とインスリン注射の治療で
十分に、QOR(生活の質)は確保されてゆくのではないか。
したがって、はな兄さんにはドナーからの移植は必要なかろう」
そういうふうに思われたらどうしよう。
それじゃあ逆効果だ。
患者として
劣等生でもダメ
優等生過ぎてもダメ
悩ましい。
そんな迷いが生じていた時だった。
愛犬のマル(柴雑種・メス15歳)が
雷と雨が激しい夜中に外へ飛び出し
常磐線にはねられ天国へ旅立ってしまった。
大ショックだった。
私の自己管理ノートの血糖値は
その事件後3か月は不安定な状態を表している。
400以上が続いたり低血糖になったり
糖尿病性ケトアシドーシスになったりと。
前述の委員がこの部分に目を止めたとしたら
こう思ったのではないか。
「この患者はこれまで真面目でキチンとしてきたし
今も継続してるようだ。が、それも自助努力だけでは
そろそろ限界がきているのだろう。
今が移植のジャストタイミングなのかもしれない」
実際そう判断したかどうかは
むろん定かではないが
それから1年もたたずに移植の連絡が
透析の最中に
突然電話でやってきたことを考えると
そうつじつまを合わせたくなる。
してみると
私の命を救ってくれたのはまず
すい臓と腎臓をくれた
ドナーの方および遺族の方々。
多くの医療関係者及び家族
加えて
愛犬マルが
アシストしてくれた
ということになるのかもしれない。