2016年に岡部のフリーマーケットで見つけた個体です。500円で購入しました。シャッターも切れるし、バルブでシャッタボタンを押している間の開放もOK.外観も奇麗な方だと思います。ネットで調べたら多分 Taron 35ⅢのF1.9仕様というレンジファインダーカメラらしいです。Taron タロンとは元々カメラシャッターのメーカーだった日本光測機工業株式会社が、自社製造のカメラにつけたブランドです。
Taron 35Ⅲ F1.9 (1958年発売) | |
タイプ | :レンジファインダーカメラ(距離計連動式カメラ) |
レンズ | :TARONAR C. 45mm/F1.9 |
シャッター | :COPAL-MXV |
シャッター速度 | :B・1~1/500秒 |
サイズ | :132×81×69mm |
重量 | :707g実測 |
Taron 35Ⅲは、1955年製造のTaron 35から続くシリーズの3代目に当たります。
製造元の日本光測機工業株式会社は東京都大田区大森4-45にあった会社で前身は日本光測機製作所で1943(昭和18年)に発行された「国産寫眞機ノ現状調査」という報告書に当時日本に存在した61社ものカメラ製造メーカーのひとつとして挙げられていたということからも、設立はそれ以前だったようです。設立時はNKSシャッターの製造メーカーとして1940年から1942年マミヤシックスシリーズで使用されていたようです。その後、1941年からの太平洋戦争当時はどのような状況にあったかは知る由もありませんが、戦後同社は日本光測機工業㈱として再編します。当時はフジカ、トプコン、ヤシカなど、他のカメラメーカーのためNKSシャッターを作ることによって生き残りました。このNKSシャッターは、安価な二眼レフカメラにたくさん取り付けられていたそうです。そして先にも記述したように、1955年から自社ブランドのカメラ、タロンシリーズの製造販売を開始したんですね。この個体Taron 35Ⅲ F1.9販売の翌年にはTaron 35Ⅲ F2.8を発売すると共に社名を「タロン株式会社」に変更し、1960年代後半には姿を消してしまいました。
いずれにしても、このカメラは最も古い歴史をもつシャッターメーカーの技術陣が、精密機械技術を生かし開発された35㎜判完全オートマットカメラです。この完全オートマットという表現は、当たり前にフィルムを入れて巻き上げると撮影1枚目がセットされる普通のフィルムカメラのことですが、デジカメが主流になった2016年現在では違和感ありますね。カメラそのものの質感はとても高いです。安物感はありません。露出計のない、完全マニュアル機だからこそですが、現役感があっていつまででも使えそうです。
軍艦部もかっこいいです。Taronの文字や巻上げレバー、巻き取りクランクもおしゃれっぽい。巻き戻しクランクは、後で紹介する変わった機構を持っています。
ASA感度の表示プレートとすごく大きな巻取り時にフリーにするためのリバースボタンがあります。
レンズはTARONAR C. 45mm/F1.9 1955年発売の初代Taron 35は、あの富岡光学のLAUSAR 1:2.8 f=4.5cmを採用していましたが、このTaron 35Ⅲは自社ブランドレンズを使ってます。Cはコーティングしてあるってことでしょうね。この時代にF1.9は明るいです。発売されていたときにはタロンのレンズなんてって感じだったのかなぁ。薄くカビが育っていたので前レンズをゴムで回して外したり、シャッターをバルブ状態にしたりして掃除しました。少しフォーカスリングが渋いですが使えないことは無いレベルでしょう。
裏蓋の内側も奇麗です。裏面は何も無いシンプルさ。
レンズが自社製になった代わりなのか、シャッターメーカーなのにCOPAL-MXVう使っています。まさか1/500秒が自社製じゃできなかったとか?タイマーも付いています。
アンティークとして見ても、品質高く雰囲気もいいですね。アップに耐える造りの良さを感じます。
例によって巻き戻しクランク部分は、凝ってますねえ。上に引き上げて倒して使います。でも最初の上への引き出しが使い難くて、策士策におぼれるってやつかな。このカメラ、たっちゃんと誕生年が同じなんでしみじみしちゃいますね。