うーん、相変わらず三浦しをんさんは人物描写がうまい。
体温が感じられるっていうか、数ページですとんとその世界に入り込んでしまう。
ちょっとした文章の中にも笑いがあり、そして悲哀がある。
まるで還暦川柳のブラックな笑いのようなのだ。
「男たちはまだ、背後から忍び寄る老勢力に気づいていない」
老勢力とは、やんちゃをしていた昔の仲間からぼこぼこにされた愛弟子のため、話し合い(脅し)に出向いた堀源二郎と有田国政の73歳幼馴染コンビのことだ。
気が合うわけではないのにこんなに長く面合わせているのは、惰性ってやつらしい。
真面目に銀行を勤めあげた国政にしてみれば、好き勝手に生きてきたようにみえるつまみ簪職人の源二郎に若い弟子が出来たのがうらやましくて仕方ない。
仕事一筋、家庭を顧みなかったばっかりに、ある日妻は娘夫婦の家に出かけたまま帰ってこない。
お互いさびしい老後の境遇と思っていたのに、置いていかれた気分なのだった。
政は山崎努、源は禿頭じゃないけど菅原文太かなあ。
「神去りなあなあ」も映画化されたことだし、と勝手にイメージを膨らませてみた。
「政と源」 三浦しをん