天津ドーナツ「日本語で考える基礎ゼミナール」実施要綱
ゼミ担当講師リーダー・興津正信(天津商業大学)
天津ドーナツ顧問 川端敦志(天津財経大学)
天津ドーナツ基礎ゼミ担当 王永钥(天津商業大学)
Ⅰ ゼミナールの目的
覚えるだけの日本語から脱却するという前提に立ち、じっくりと、何度も、丁寧に、幅広く調査する・まとめる・考察するというゼミナールにしていきます。
ゼミナール修了後には、それぞれのレベル・段階を合わせて、以後、研究活動を進めていけるというところまで養成していくことを目指します。つまり、自分なりの問題・課題を設定し、それを解決するための方法を探し、調査を繰り返し、その結果をまとめ、考察を深めていくという一連の研究の流れを体験してもらうことを考えています。
本ゼミナールでは、2年生・3年生それぞれに、必要な研究力を養成するための機会を設けるということを鑑みて、2つのコースを設置します。
コース1:基礎研究ゼミナール(主に3年生)
コース2:考える入門ゼミナール(主に2年生)
本ゼミナールでは、以上のように2つのコースを設置しますが、それぞれ対象となる学年はあくまでも目安です。とくにコース1「基礎研究ゼミナール」については、第1学期に「天津ドーナツ卒業論文基礎ゼミナール」などで、研究の入門的スキルを学習済みの学生に適していると思います。3年生であっても、研究の導入からスタートしたい場合は、コース2を選択することを考えてもよいでしょう。
Ⅱ コース1:基礎研究ゼミナール(3年生対象)
Ⅱ-1 コースの目的
主体的な論理づけの技術を会得し、自分の意見をわかりやすく発表できる日本語能力を身につけることとする。この目的を達成するために、本コースで重点的に取り組むことは、
(1) 研究の楽しさを実感する。
① トピック探しの場:日本研究の面白さを知る。
② 「学問的対話」の楽しさを体験する。
(2) 研究の基礎力を身につける。
① 論理的思考能力の養成:事実を要約・分析し、意見を述べるための行動(案内)ができる日本語能力
② 資料批判の手法を学ぶ:理論を学ぶ。
③ 資料のアクセスのセンスを磨く:自立した求道心を養う。
(3) 一つの完成を体験する。
課題遂行の達成感を感じてもらうために、リサーチペーパー(レポート)の作成を目標とします。リサーチペーパーを作成の体験を通して、研究活動の一連の工程を学習していきます。
Ⅱ-2 本コースの意義
大目標としては、指導教員は卒論の完成イメージを持つこと、また学生もそれが早い時期に持てるのであれば、持つことを奨励しますが、3年生の段階はのびのびと様々な領域をかじる幅の広さを養った方がよいと考えています。そのため、卒論の最終形態から、あえて切り離すぐらいの感覚も必要であると感じています。これは、「すぐに成果が形として現れないなら、やりもしない」という弊害(研究力養成にとって)を形の上で排除していきたいと考えているためであります。
具体的なスケジュールから言えば、本コースの最終回(2012年6月)のゼミ発表が終わってから、フィードバックを担当講師とゼミ生で一緒に行ないます。その段階で、「3ヵ月後には、皆さんは4年生になりますね。では、卒論のテーマ(卒論で追究したい領域)について相談しましょう」というふうに、相談がスムーズにできる力を養成するという意義があります。
Ⅲ コース2:考える入門ゼミナール(2年生対象)
Ⅲ-1 コースの目的
研究活動の導入を行なうことで、覚えるだけの日本語学習の脱却を図ることを目的とします。ある程度の枠を設定しますが、ただテキストの文章をなぞるだけ、覚えるだけではなく、自分なりの発想へつなげていくための行動ができる能力を養成します。
(1) 日本を知ろうなどについて、学究的好奇心、学究的インセンティブをくすぐる入門編
① 日本に関する良書を探す。
② クラスメイトと読みあい、議論し合い、理解を共有する。
(2) レジュメの作り方を学ぶ。
① 要約の作り方、レジュメの体裁の基本を学ぶ。
② 先生や先輩のチェックを受け、じっくりと見直す習慣を身につける。
(3) 初歩的な研究発表ができるようになる。
① 事柄の提示は直線的であっても、流暢に話すことができ、研究発表で必要な日本語表現ができるようになる。
② あいさつ・間の取り方・言葉遣い・言い換え・資料提示のタイミングなどプレゼンテーションの技法を学ぶ。
Ⅲ-2 本コースの意義
まずはみんなと討論し、考察することの面白さを体験してもらうことで、学究の発心を生み出すモチベーションを育てます。そのモチベーションが、今後、上級生の段階になったときに、さらなる深化した研究活動を最後までやり抜くための原動力や忍耐力となっていきます。
大学教育の集大成である卒業論文や大学での研究活動は、一種の精神作業であります。つらい状態であっても、「研究することの喜び」や「日本語を使うことの楽しさ」を自ら発揮することができれば、挑戦しようとする元気が持ち続けられます。
また研究のスキルの基本を学ぶことで、より複雑な作業への橋渡しとなるコースであります。
Ⅳ ゼミナールの活動内容・形式
形式は「ゼミ形式」です。講座や講義中心ではありません。コースの選択、講師の指導可能な研究領域、学生のスキル状況に応じて、具体的な活動内容およびゼミの形態は数多く考えられます。ここでは、講師リーダーである興津から考えたシラバスを提示します。実際は講師およびゼミ受講生が決定した後、各ゼミでの相談の上で、シラバスの構築を図ります。
(1)形態(あくまでも参考です)
a) 1冊の課題図書ないし数冊の図書から共通したテキストを設定し、各章ごとに担当者を決めて、発表・討論を行う。
b) ゼミとしての共通テーマを決めて、それに対してゼミ生一人一人アプローチを設定し、発表・討論を行う。
c) ゼミ生一人ずつが自分の関心ごとに合わせて、テーマを設定して、発表・討論を行う。
※ b)とc)は、レポートの形態から言えば、テーマ論証あるいは調査報告を作成するのに適したものとなります。目標としてはリサーチペーパーを作成とすることに適しています。
(2)活動内容
「基礎研究ゼミナール」で、上記の形式c)を採用するという条件で考えました。
① 資料探し:世の中にはどんな資料がどこにあるのか。知的インセンティブをくすぐるような活動。
② トピック探し:問題意識から問題の場へいざなう。
③ 資料の読み込み・研究のメモ:資料批判を行う。
④ レジュメ・レポートの基本形式を理解し、自分なりのスタイルができる準備をする。
⑤ 参考文献一覧をつくることができ、資料の種類(類別)、性質を自分で判断できるようにする。
⑥ 文献レビューが作成できるようにする。
⑦ リサーチペーパーを作成できるようにする。
Ⅴ 担当講師および学生担当
【担当講師】
1.興津正信(開発学・社会学)天津商業大学 講師リーダーを兼ねます。
※講師リーダーとしての役割としては、主に講師間の連絡・相談・アドバイスを担当します。
2.・・・・・・
担当してくださる講師募集中です。
【学生担当】
ゼミナール運営担当:王永钥(天津商業大学2年生・天津ドーナツメンバー)
※主にゼミ生同士の連絡や合同ゼミ発表大会などの運営のとりまとめを担当します。
※各ゼミで、代表者の学生を決めることもよいと思います。各ゼミの運営もゼミ生が主体になって行う(教室の手配など)ことを少しずつ増やしていくと自立した課題遂行能力を養成できます。
Ⅵ 参加資格
以下の条件をすべて満たすか、担当講師が参加するに適切であると判断された学生とします。
1.天津ドーナツのメンバーおよび下記2以下の条件に合う学生
2.日本語専攻の学生。日本語専攻以外の学生は担当講師と要相談。
3.追求してみたいテーマがある。(日本以外に関することの場合は、講師に要相談)
4.日本語で考え、討論する力をつけたいと真剣に願っている。
5.本ゼミナールの共通イベント(発表会など)および所属するゼミで各講師が提示するゼミ日程すべてに参加できる。
※中間発表及び最終日の合同ゼミ発表大会での発表については、基本的に日本語で発表します。発表会で発表することは、努力目標とし、義務付けにはしません。各ゼミナールの進行状況に応じて、見学あるいは発表をするなどの参加形態を決めてください。
※ただし、通常のゼミでは、講師による一方的な講義で終わることなく、「ゼミ形式」ということに重点を置いていただき、積極的な発表および討論を展開していただくとします。その際の使用言語は、講師の裁量で、日本語・中国語どちらでも構わないとします。
※ゼミの記録およびレポートあるいはレジュメなどをまとめた報告集は、今後の天津での大学日本語学科の教育発展に向けての参考としていきたいため、可能な限り形に表したいと考えています。この点については、講師およびゼミ設置が決定した段階で、話し合いを持ちたいと考えています。
Ⅶ スケジュール及びゼミ設置について
コースごと、講師・大学ごとでゼミの進行は実情に合わせて行うため、ここでは、本ゼミナールの共通イベントの日程を提示します。また併せて、興津が考えた日程(コース1、コース2)を参考までに提示します。
<ゼミナール日程(共通)>
3月第2週 3月10日(土曜日)説明会・研究領域の確認
※中国の大学日本語学科における「初めての日本語ゼミのポイント案」の構築について説明します。
5月上旬 中間発表大会(合同ゼミ) 土日で開催
6月上旬 ゼミナール発表大会(公開予定)・ゼミレポート(レジュメ)集完成
フィードバック(4年生に向けての第1回卒論相談会)・打ち上げ
※上記「Ⅵ 参加資格」で述べたように発表大会で発表することは努力目標とし、義務ではありません。見学のみであっても、通常のゼミナール活動に真面目に参加できるのであれば、この活動への参加はOKとなります。
【スケジュール案(参考)】あくまでも参考です。
参考例その1<コース1 「基礎研究ゼミナール」」>
条件:ゼミ生数10名以内。活動内容・形式はⅣのc)(共通テキスト設定しない)
毎週1回90分のゼミナールを行う。基本的には平日開催で、場所は天津商業大学。
3月
第1回 説明会・研究領域の確認(3月10日)
第2回 資料探し成果の報告会・研究領域の再考と決定→成果の提出は、リーディングリストなどで。
第3回 文献(学術論文)レビュー発表→図書ではなく、文献レビューがしやすい学術論文を学習することで、論文の成り立ち、研究とは何かというのを実体験する。
第4回 文献レビュー発表(レジュメ)
4月
第5回 リサーチペーパー作成計画提出
第6回 途中報告
第7回 第1次原稿チェック
第8回 途中報告:口頭発表用のレジュメ
5月
第9回 中間発表(第2次原稿チェック):合同ゼミ
第10回 第3次原稿チェック
第11回 第4次原稿チェック
第12回 プレゼンテーションの訓練
①発表レジュメの作成 ②ゼミ論集作成
6月
第13回 ゼミ発表大会(6月2日or3日)
①ゼミ論集完成 ②フィードバック報告 ③打ち上げ
参考例その2<コース2 「考える日本語ゼミナール」」>
条件:ゼミ生数6名以内。(読書会のような形式の場合、あまり多くならないほうが良いと考えている)
活動内容・形式:Ⅳのa)(良書を選定し、それを共通テキストとする)
「3ヶ月で5冊読破」を目標とする。(中国語の場合なら10冊程度が好ましい)
毎週1回90分のゼミナールを行う。基本的には平日開催で、場所は天津商業大学。
3月
第1回 説明会・研究領域の確認(3月10日)
第2回 テキストの選定および発表担当の決定。レジュメの作り方の説明。
第3回 第1冊:レジュメ発表・討論(1)
※ レジュメ発表は、章ごとで行なうか、発表者の人数に合わせて行なうかは書物とゼミ状況で判断する。レジュメ発表内容を軸にして全員で討論を行う。
第4回 第1冊:レジュメ発表・討論(2)
4月
第5回 第2冊:レジュメ発表・討論(1)
第6回 第2冊:レジュメ発表・討論(2)
第7回 第3冊:レジュメ発表・討論(1)
第8回 第3冊:レジュメ発表・討論(2)
※5月の中間発表では、レジュメに基づいて、読破した書物のレビューを行なうことを目標とする。
5月
第9回 中間発表(レビュー発表):合同ゼミ
第10回 第4冊:レジュメ発表・討論(1)
第11回 第4冊:レジュメ発表・討論(2)
第12回 第5冊:レジュメ発表・討論(1)
第13回 第5冊:レジュメ発表・討論(2)
※ レジュメ報告の作成。レポートの体裁が整えるのであれば、成果として作成しても良い。
6月
第14回 ゼミ発表大会(6月2日or3日)
①ゼミ論集完成 ②フィードバック報告打 ③うち上げ
注1 太字下線部はゼミナールの共通イベントです。これについてはどんなコース内容になったとしても、共通していることとして行なっていただきます。
注2 上記のコース1、コース2の日程は、興津が担当した場合という想定で作成しました。最終的には各大学の状況、講師の指導可能な内容、使用言語などに合わせて、日程と内容が決定されます。
【ゼミ設置について】
1. ゼミの開講の頻度、合同発表大会の参加形態は、各ゼミで決定するものとします。
2. 1つの大学で複数のゼミ設置も可とします。例えばコース1で1つ、コース2で1つあるいはコース1で2つなど、研究領域、それぞれの大学の学生で強化したい能力などの実情に照らし合わせながら、ゼミ設置の数、領域(方向性)などを決定してください。
3. 1つのゼミにおける学生の成員数ですが、目安として1ゼミ(1グループ)10名前後の学生で構成されるのが適切だと思います。ちなみに興津が過去に天津商業大学で行なったゼミナールで最大人数は19名でした。しかし、このときはゼミ期間が約1年間でしたので、なんとか指導が行き届いたというところです。今回のゼミナールは3ヶ月間というやや短期的なものですので、やはり10名以内が妥当かと思われます。
4. ゼミナールを辞書的な定義で言えば、「大学で、少人数の学生が集まり、教師の指導の下に自ら研究し、発表・討論を行なう形式の授業」ですので、それを基準に構築されたものを本活動におけるゼミとします。ですので、30名や40名近い学生を集めて、それを1つのゼミにするというのは、ゼミとしてはふさわしくないとし、領域やレベルの段階で分けるなど再考を促します逆にゼミ生が少ない場合ですが、その点については、1名であっても真剣な学生であれば、ゼミの開講を奨励したいと考えております。
5. 教員1人が複数のゼミを担当する、あるいは複数の教員(2名以内が望ましい)が1つのゼミを担当するなどは、各大学、講師らの裁量によって決定していただくものとします。
6. 今回のゼミナールで、設置されたゼミの総数が多くなった場合、合同ゼミ発表大会などの共通イベントのあり方について、所要時間も含めて検討していくことになることを予めご了承ください。
7. その他ゼミ設置で不明な点があれば、リーダーの興津まで問い合わせてください。
Ⅷ 講師についての確認
1.リーダーは、興津正信(天津商業大学)が担当します。
2.指導担当講師は、学生が選ぶものとしますが、「5.講師の条件」に合う、あるいは同等の能力を有する方を考えています。自分の力を高めてくれると思う人でしたら、留学生でもかまいません。
ただし、各講師は事前に自分が担当可能なテーマを公表することとします。
3.中間発表時には、すべての講師がすべての学生の発表にアドバイスをします。
4.できるだけ、「本物」に当たらせるようにしてください。
5.講師の条件:a)研究業績がある。学術論文あるいは学会発表がある。論文は査読付であることが望ましい。また予稿集や紀要論文は、この業績に含まない場合がある。
b)大学日本語学科の教員。ただし上記a)に該当する場合はその限りにあらず。
c)研究の指導計画(シラバスに準じるもの)が作成できる(作成すること)。
Ⅸ 問い合わせ先
興津正信:okky0316@gmail.com
王永钥: keykid0126@126.com
川端敦志:kawa4215@hotmail.com
ゼミ担当講師リーダー・興津正信(天津商業大学)
天津ドーナツ顧問 川端敦志(天津財経大学)
天津ドーナツ基礎ゼミ担当 王永钥(天津商業大学)
Ⅰ ゼミナールの目的
覚えるだけの日本語から脱却するという前提に立ち、じっくりと、何度も、丁寧に、幅広く調査する・まとめる・考察するというゼミナールにしていきます。
ゼミナール修了後には、それぞれのレベル・段階を合わせて、以後、研究活動を進めていけるというところまで養成していくことを目指します。つまり、自分なりの問題・課題を設定し、それを解決するための方法を探し、調査を繰り返し、その結果をまとめ、考察を深めていくという一連の研究の流れを体験してもらうことを考えています。
本ゼミナールでは、2年生・3年生それぞれに、必要な研究力を養成するための機会を設けるということを鑑みて、2つのコースを設置します。
コース1:基礎研究ゼミナール(主に3年生)
コース2:考える入門ゼミナール(主に2年生)
本ゼミナールでは、以上のように2つのコースを設置しますが、それぞれ対象となる学年はあくまでも目安です。とくにコース1「基礎研究ゼミナール」については、第1学期に「天津ドーナツ卒業論文基礎ゼミナール」などで、研究の入門的スキルを学習済みの学生に適していると思います。3年生であっても、研究の導入からスタートしたい場合は、コース2を選択することを考えてもよいでしょう。
Ⅱ コース1:基礎研究ゼミナール(3年生対象)
Ⅱ-1 コースの目的
主体的な論理づけの技術を会得し、自分の意見をわかりやすく発表できる日本語能力を身につけることとする。この目的を達成するために、本コースで重点的に取り組むことは、
(1) 研究の楽しさを実感する。
① トピック探しの場:日本研究の面白さを知る。
② 「学問的対話」の楽しさを体験する。
(2) 研究の基礎力を身につける。
① 論理的思考能力の養成:事実を要約・分析し、意見を述べるための行動(案内)ができる日本語能力
② 資料批判の手法を学ぶ:理論を学ぶ。
③ 資料のアクセスのセンスを磨く:自立した求道心を養う。
(3) 一つの完成を体験する。
課題遂行の達成感を感じてもらうために、リサーチペーパー(レポート)の作成を目標とします。リサーチペーパーを作成の体験を通して、研究活動の一連の工程を学習していきます。
Ⅱ-2 本コースの意義
大目標としては、指導教員は卒論の完成イメージを持つこと、また学生もそれが早い時期に持てるのであれば、持つことを奨励しますが、3年生の段階はのびのびと様々な領域をかじる幅の広さを養った方がよいと考えています。そのため、卒論の最終形態から、あえて切り離すぐらいの感覚も必要であると感じています。これは、「すぐに成果が形として現れないなら、やりもしない」という弊害(研究力養成にとって)を形の上で排除していきたいと考えているためであります。
具体的なスケジュールから言えば、本コースの最終回(2012年6月)のゼミ発表が終わってから、フィードバックを担当講師とゼミ生で一緒に行ないます。その段階で、「3ヵ月後には、皆さんは4年生になりますね。では、卒論のテーマ(卒論で追究したい領域)について相談しましょう」というふうに、相談がスムーズにできる力を養成するという意義があります。
Ⅲ コース2:考える入門ゼミナール(2年生対象)
Ⅲ-1 コースの目的
研究活動の導入を行なうことで、覚えるだけの日本語学習の脱却を図ることを目的とします。ある程度の枠を設定しますが、ただテキストの文章をなぞるだけ、覚えるだけではなく、自分なりの発想へつなげていくための行動ができる能力を養成します。
(1) 日本を知ろうなどについて、学究的好奇心、学究的インセンティブをくすぐる入門編
① 日本に関する良書を探す。
② クラスメイトと読みあい、議論し合い、理解を共有する。
(2) レジュメの作り方を学ぶ。
① 要約の作り方、レジュメの体裁の基本を学ぶ。
② 先生や先輩のチェックを受け、じっくりと見直す習慣を身につける。
(3) 初歩的な研究発表ができるようになる。
① 事柄の提示は直線的であっても、流暢に話すことができ、研究発表で必要な日本語表現ができるようになる。
② あいさつ・間の取り方・言葉遣い・言い換え・資料提示のタイミングなどプレゼンテーションの技法を学ぶ。
Ⅲ-2 本コースの意義
まずはみんなと討論し、考察することの面白さを体験してもらうことで、学究の発心を生み出すモチベーションを育てます。そのモチベーションが、今後、上級生の段階になったときに、さらなる深化した研究活動を最後までやり抜くための原動力や忍耐力となっていきます。
大学教育の集大成である卒業論文や大学での研究活動は、一種の精神作業であります。つらい状態であっても、「研究することの喜び」や「日本語を使うことの楽しさ」を自ら発揮することができれば、挑戦しようとする元気が持ち続けられます。
また研究のスキルの基本を学ぶことで、より複雑な作業への橋渡しとなるコースであります。
Ⅳ ゼミナールの活動内容・形式
形式は「ゼミ形式」です。講座や講義中心ではありません。コースの選択、講師の指導可能な研究領域、学生のスキル状況に応じて、具体的な活動内容およびゼミの形態は数多く考えられます。ここでは、講師リーダーである興津から考えたシラバスを提示します。実際は講師およびゼミ受講生が決定した後、各ゼミでの相談の上で、シラバスの構築を図ります。
(1)形態(あくまでも参考です)
a) 1冊の課題図書ないし数冊の図書から共通したテキストを設定し、各章ごとに担当者を決めて、発表・討論を行う。
b) ゼミとしての共通テーマを決めて、それに対してゼミ生一人一人アプローチを設定し、発表・討論を行う。
c) ゼミ生一人ずつが自分の関心ごとに合わせて、テーマを設定して、発表・討論を行う。
※ b)とc)は、レポートの形態から言えば、テーマ論証あるいは調査報告を作成するのに適したものとなります。目標としてはリサーチペーパーを作成とすることに適しています。
(2)活動内容
「基礎研究ゼミナール」で、上記の形式c)を採用するという条件で考えました。
① 資料探し:世の中にはどんな資料がどこにあるのか。知的インセンティブをくすぐるような活動。
② トピック探し:問題意識から問題の場へいざなう。
③ 資料の読み込み・研究のメモ:資料批判を行う。
④ レジュメ・レポートの基本形式を理解し、自分なりのスタイルができる準備をする。
⑤ 参考文献一覧をつくることができ、資料の種類(類別)、性質を自分で判断できるようにする。
⑥ 文献レビューが作成できるようにする。
⑦ リサーチペーパーを作成できるようにする。
Ⅴ 担当講師および学生担当
【担当講師】
1.興津正信(開発学・社会学)天津商業大学 講師リーダーを兼ねます。
※講師リーダーとしての役割としては、主に講師間の連絡・相談・アドバイスを担当します。
2.・・・・・・
担当してくださる講師募集中です。
【学生担当】
ゼミナール運営担当:王永钥(天津商業大学2年生・天津ドーナツメンバー)
※主にゼミ生同士の連絡や合同ゼミ発表大会などの運営のとりまとめを担当します。
※各ゼミで、代表者の学生を決めることもよいと思います。各ゼミの運営もゼミ生が主体になって行う(教室の手配など)ことを少しずつ増やしていくと自立した課題遂行能力を養成できます。
Ⅵ 参加資格
以下の条件をすべて満たすか、担当講師が参加するに適切であると判断された学生とします。
1.天津ドーナツのメンバーおよび下記2以下の条件に合う学生
2.日本語専攻の学生。日本語専攻以外の学生は担当講師と要相談。
3.追求してみたいテーマがある。(日本以外に関することの場合は、講師に要相談)
4.日本語で考え、討論する力をつけたいと真剣に願っている。
5.本ゼミナールの共通イベント(発表会など)および所属するゼミで各講師が提示するゼミ日程すべてに参加できる。
※中間発表及び最終日の合同ゼミ発表大会での発表については、基本的に日本語で発表します。発表会で発表することは、努力目標とし、義務付けにはしません。各ゼミナールの進行状況に応じて、見学あるいは発表をするなどの参加形態を決めてください。
※ただし、通常のゼミでは、講師による一方的な講義で終わることなく、「ゼミ形式」ということに重点を置いていただき、積極的な発表および討論を展開していただくとします。その際の使用言語は、講師の裁量で、日本語・中国語どちらでも構わないとします。
※ゼミの記録およびレポートあるいはレジュメなどをまとめた報告集は、今後の天津での大学日本語学科の教育発展に向けての参考としていきたいため、可能な限り形に表したいと考えています。この点については、講師およびゼミ設置が決定した段階で、話し合いを持ちたいと考えています。
Ⅶ スケジュール及びゼミ設置について
コースごと、講師・大学ごとでゼミの進行は実情に合わせて行うため、ここでは、本ゼミナールの共通イベントの日程を提示します。また併せて、興津が考えた日程(コース1、コース2)を参考までに提示します。
<ゼミナール日程(共通)>
3月第2週 3月10日(土曜日)説明会・研究領域の確認
※中国の大学日本語学科における「初めての日本語ゼミのポイント案」の構築について説明します。
5月上旬 中間発表大会(合同ゼミ) 土日で開催
6月上旬 ゼミナール発表大会(公開予定)・ゼミレポート(レジュメ)集完成
フィードバック(4年生に向けての第1回卒論相談会)・打ち上げ
※上記「Ⅵ 参加資格」で述べたように発表大会で発表することは努力目標とし、義務ではありません。見学のみであっても、通常のゼミナール活動に真面目に参加できるのであれば、この活動への参加はOKとなります。
【スケジュール案(参考)】あくまでも参考です。
参考例その1<コース1 「基礎研究ゼミナール」」>
条件:ゼミ生数10名以内。活動内容・形式はⅣのc)(共通テキスト設定しない)
毎週1回90分のゼミナールを行う。基本的には平日開催で、場所は天津商業大学。
3月
第1回 説明会・研究領域の確認(3月10日)
第2回 資料探し成果の報告会・研究領域の再考と決定→成果の提出は、リーディングリストなどで。
第3回 文献(学術論文)レビュー発表→図書ではなく、文献レビューがしやすい学術論文を学習することで、論文の成り立ち、研究とは何かというのを実体験する。
第4回 文献レビュー発表(レジュメ)
4月
第5回 リサーチペーパー作成計画提出
第6回 途中報告
第7回 第1次原稿チェック
第8回 途中報告:口頭発表用のレジュメ
5月
第9回 中間発表(第2次原稿チェック):合同ゼミ
第10回 第3次原稿チェック
第11回 第4次原稿チェック
第12回 プレゼンテーションの訓練
①発表レジュメの作成 ②ゼミ論集作成
6月
第13回 ゼミ発表大会(6月2日or3日)
①ゼミ論集完成 ②フィードバック報告 ③打ち上げ
参考例その2<コース2 「考える日本語ゼミナール」」>
条件:ゼミ生数6名以内。(読書会のような形式の場合、あまり多くならないほうが良いと考えている)
活動内容・形式:Ⅳのa)(良書を選定し、それを共通テキストとする)
「3ヶ月で5冊読破」を目標とする。(中国語の場合なら10冊程度が好ましい)
毎週1回90分のゼミナールを行う。基本的には平日開催で、場所は天津商業大学。
3月
第1回 説明会・研究領域の確認(3月10日)
第2回 テキストの選定および発表担当の決定。レジュメの作り方の説明。
第3回 第1冊:レジュメ発表・討論(1)
※ レジュメ発表は、章ごとで行なうか、発表者の人数に合わせて行なうかは書物とゼミ状況で判断する。レジュメ発表内容を軸にして全員で討論を行う。
第4回 第1冊:レジュメ発表・討論(2)
4月
第5回 第2冊:レジュメ発表・討論(1)
第6回 第2冊:レジュメ発表・討論(2)
第7回 第3冊:レジュメ発表・討論(1)
第8回 第3冊:レジュメ発表・討論(2)
※5月の中間発表では、レジュメに基づいて、読破した書物のレビューを行なうことを目標とする。
5月
第9回 中間発表(レビュー発表):合同ゼミ
第10回 第4冊:レジュメ発表・討論(1)
第11回 第4冊:レジュメ発表・討論(2)
第12回 第5冊:レジュメ発表・討論(1)
第13回 第5冊:レジュメ発表・討論(2)
※ レジュメ報告の作成。レポートの体裁が整えるのであれば、成果として作成しても良い。
6月
第14回 ゼミ発表大会(6月2日or3日)
①ゼミ論集完成 ②フィードバック報告打 ③うち上げ
注1 太字下線部はゼミナールの共通イベントです。これについてはどんなコース内容になったとしても、共通していることとして行なっていただきます。
注2 上記のコース1、コース2の日程は、興津が担当した場合という想定で作成しました。最終的には各大学の状況、講師の指導可能な内容、使用言語などに合わせて、日程と内容が決定されます。
【ゼミ設置について】
1. ゼミの開講の頻度、合同発表大会の参加形態は、各ゼミで決定するものとします。
2. 1つの大学で複数のゼミ設置も可とします。例えばコース1で1つ、コース2で1つあるいはコース1で2つなど、研究領域、それぞれの大学の学生で強化したい能力などの実情に照らし合わせながら、ゼミ設置の数、領域(方向性)などを決定してください。
3. 1つのゼミにおける学生の成員数ですが、目安として1ゼミ(1グループ)10名前後の学生で構成されるのが適切だと思います。ちなみに興津が過去に天津商業大学で行なったゼミナールで最大人数は19名でした。しかし、このときはゼミ期間が約1年間でしたので、なんとか指導が行き届いたというところです。今回のゼミナールは3ヶ月間というやや短期的なものですので、やはり10名以内が妥当かと思われます。
4. ゼミナールを辞書的な定義で言えば、「大学で、少人数の学生が集まり、教師の指導の下に自ら研究し、発表・討論を行なう形式の授業」ですので、それを基準に構築されたものを本活動におけるゼミとします。ですので、30名や40名近い学生を集めて、それを1つのゼミにするというのは、ゼミとしてはふさわしくないとし、領域やレベルの段階で分けるなど再考を促します逆にゼミ生が少ない場合ですが、その点については、1名であっても真剣な学生であれば、ゼミの開講を奨励したいと考えております。
5. 教員1人が複数のゼミを担当する、あるいは複数の教員(2名以内が望ましい)が1つのゼミを担当するなどは、各大学、講師らの裁量によって決定していただくものとします。
6. 今回のゼミナールで、設置されたゼミの総数が多くなった場合、合同ゼミ発表大会などの共通イベントのあり方について、所要時間も含めて検討していくことになることを予めご了承ください。
7. その他ゼミ設置で不明な点があれば、リーダーの興津まで問い合わせてください。
Ⅷ 講師についての確認
1.リーダーは、興津正信(天津商業大学)が担当します。
2.指導担当講師は、学生が選ぶものとしますが、「5.講師の条件」に合う、あるいは同等の能力を有する方を考えています。自分の力を高めてくれると思う人でしたら、留学生でもかまいません。
ただし、各講師は事前に自分が担当可能なテーマを公表することとします。
3.中間発表時には、すべての講師がすべての学生の発表にアドバイスをします。
4.できるだけ、「本物」に当たらせるようにしてください。
5.講師の条件:a)研究業績がある。学術論文あるいは学会発表がある。論文は査読付であることが望ましい。また予稿集や紀要論文は、この業績に含まない場合がある。
b)大学日本語学科の教員。ただし上記a)に該当する場合はその限りにあらず。
c)研究の指導計画(シラバスに準じるもの)が作成できる(作成すること)。
Ⅸ 問い合わせ先
興津正信:okky0316@gmail.com
王永钥: keykid0126@126.com
川端敦志:kawa4215@hotmail.com