令和2年1月4日付け「日本経済新聞」朝刊3面の“逆境の資本主義”欄に、オリックスのシニア・チェアマンである宮内義彦氏の記事が載っていた。
<進む官製市場化>━資本主義の現状をどう見ていますか。
『「資本主義が行き詰まったと言い切るのは早計だろう。むしろ資本主義をきっちり動かすためのガバナンス(統治)が揺らいでいるのだと思う」。
「資本主義や市場経済は、経済的な富を生み出すための生産のシステム。それが揺らいでいるわけではない。生産と同様に重要なのが、生み出した富の分配だ。だが資本主義にはうまく富を分配するメカニズムが備わっていない。分配の役割を担うのは国家だが、そこがうまくいっていない」。
━なぜうまくいっていないのでしょう。
「グローバリズムだ。富を再分配する税の仕組みや、公平な競争を保つ独占禁止法は一国の中でしか通用しない。タックスヘイブン(租税回避地)のような抜け穴もある。環境問題を解決するには強力な規制をつくって企業が従う必要があるが、その前提となる国際協調がうまくいっていない」。
「市場の力だけでは経済は良くならず、総合的に考えなくてはならない。格差問題や環境問題を解決するには国家の介入が必要で、それも一国では完結しない。国際連携で問題を解決する大変な作業を進めるべきだ」。
━市場経済にも問題が多いようにみえます。
「まだリーマンショックの痛みが残っており、投資家も企業も(リスクをとって投資する)アニマル・スピリッツが出せない状況だ。世界中が低金利でどの国もデフレ対策ばかりでは、高いリターンの投資案件が出てこない。投資活動よりもリスク回避に意識が向かい、荒々しい資本主義が影を潜めつつある。」。
ただ世界は投資を必要としている。たとえばアフリカの貧困問題や環境問題を解決するには、膨大な投資が必要だ。その投資を企業の市場メカニズムに連動させる仕組みがあればおのずとお金が向かうはずだが、まだできていない。
━企業統治改革の現状をどう見ていますか。
「日本のコーポレート・ガバナンスは始まったばかりで、極めて不十分だ。社外取締役を入れてコンプライアンス(法令順守)をしっかりすればいいという話ではない。
「コーポレート・ガバナンスの最終目的は、企業を中長期的に成長させること。まずはアグレッシブなトップが最大限アクセルを踏むのが大前提だ。次にトップを監督するためにガバナンスが必要になる。日本ではアクセルを踏む経営者がいないのに、ブレーキの話ばかりをしている。
「日銀が買い支えたり、公的年金が最大の株主になったり、日本の株式市場はこれが本当にオープンマーケットなのかというところまで来ている。官製市場化が進むと、企業がたくましく伸びていかない。日本は民間の富が伸びもしないのに貧富の差が我慢ならないという状態であるとすれば、それは悲しい話だ。』
日本には、まだ行なうべきことが沢山ある。ただ悲しいかな、実施に必要とされるお金が無い。どのようにお金をひねり出すか、官も民間も問われていると思う。
「十勝の活性化を考える会」会員
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