池澤夏樹著 “静かな大地”の紹介。
この物語は、明治4年の「廃藩置県」により淡路島から北海道日高に来た人々とアイヌ民族との様々な出会いを描いた作品である。北海道にゆかりの深い作家 池澤夏樹が、初めて本格的に北海道をテーマに描いた小説である。
池澤夏樹は、作家福永武彦の息子として、帯広に生まれ6歳まで過ごした。池澤の母方の曾祖父たちは、明治の初めに淡路島から北海道に入植した開拓者だった。
池澤は幼少のころから、一族の開拓時代の物語を聞いて育ち、いつかそのことを小説にしようと、心に決めていたという。明治の時代に、和人とアイヌ民族とが共に生きる大地で、どういう生き方が存在したのかという一点を描いている。
この物語は、アイヌ・モ・シリ(人間の静かな大地)と呼ばれた北海道が、多民族・多文化の大地であり、多様性をもった社会が存在していたこと、そして、それが次々と失われていく姿を、100年後の我々に見せてくれる。
30年前、淡路島にいったことはあるが、このような歴史が北海道と淡路島にあった事実を知らなかった。
日高の静内に近い新ひだか町には、シブチャリ・アイヌの首長「シャクシャイン像」が建っている。シャクシャインは、1669年、「シャクシャインの戦い」を起こしている。
元々松前藩は、アイヌ民族に対して交易に規制をかけて利益を得ようとするなど、圧力をかけていた。松前藩とアイヌ民族との戦いである「シャクシャインの戦い」は、アイヌ民族のこうした圧力に対する不満の表れでもあった。
この戦いで約390人の日本人が犠牲となったが、鉄砲を持つ松前藩が優位に立ち、アイヌ側は最終的に償いの宝物を差し出し、シャクシャインたちを殺さないことを条件に和議となった。
しかし、この約束は偽りで和議の席で酒に酔ったシャクシャインらは殺され、アイヌ側の砦も攻め落とされ、戦いはアイヌ側の敗北で幕を閉じている。
「十勝の活性化を考える会」会長
注) シャクシャイン像
(写真:蜂起の指導者シャクシャイン像 、Yahoo検索より)