日本百名山は深谷久弥氏が自ら登った山で、品格・個性・歴史を選定基準にしている。ただ、登山愛好家の誰しもカムイエクウチカウシ山が、日本百名山に入っていないのを不思議に思っている。登山家の間では、“カムエク”と言われる。下図の真ん中に見える山がカムエクで、私が1999年11月11日、十勝幌尻岳(1,846M)の頂上から撮った写真である。
カムエクは、北海道日高山脈に属する山で、名称はアイヌ語の「熊の転げ落ちる山」に由来する。幌尻岳に次ぐ日高山脈で第二の高峰であり、標高1,979mである。日高山脈は、2024年に日高十勝国立公園化される予定であるが、その中にある山である。
アイヌ語の名称の通り急峻な山であり、日高山脈の高峰に特徴的なカールが見られ、この山に登るための整備された一般登山道はない。標識があるわけではないので、ルートファインディング能力が不可欠。難度の高い滝の登攀はないが、へつりや徒渉箇所があり、水温、水量、流れの速さを考えると、沢歩きの総合的な力は、中級以上あった方が良いそうだ。
ところで、1965年(昭和40年)3月14日未明、日高山脈縦走中の北大山岳部の登山隊6人が十ノ沢での露営中に大規模な雪崩に巻き込まれ、全員が死亡する事件が発生した。6人は決して危険な場所に雪洞を掘っていたわけではなかったが、国内最大級の雪崩に巻き込まれたのである。
初期捜索は困難を極め、雪融けを待って再開された捜索でようやく全員の遺体を発見、奇跡的に即死を免れていたリーダー澤田義一が4日間にわたった雪の中で地図の裏にしたためた遺書がポケットから発見され、大きな話題を呼んだのを覚えている。なお、十ノ沢近くには、今でもダビに付した多くの登山家の骨があるそうである。
国内にある日本百名山を23座登ったが、カールがきれいに見える山はそんなに多くはなく、十勝からは各所で見ることが出来るので、本州の登山家は是非とも来てほしい。
「十勝の活性化を考える会」会員
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