勃ちあがった象の白い涙の物語

ロックンロールにゃ老だけど死ぬにはチョイと若すぎる

「GOLDEN☆BEST」畑中葉子

2012-01-14 19:20:47 | 音楽
このベストアルバムのラストに「モアセクシー」という曲が収録されている。ユーロビート風の音楽をバックに、畑中葉子のあえぎ声が続くという、今のこの時代においてもいささか斬新な発想のものだが、この曲が、当時の彼女の置かれていた状況を象徴していると思う。

畑中葉子は、元々は平尾昌晃の音楽スクールにおける優等生で、平尾とのデュエット曲『カナダからの手紙』でデビュー。この曲は大ヒットを記録し、その年の紅白にも出場したりした。その後は、あまりパッとしたヒット曲がなかったとはいえ、そのデビュー曲の大ヒットの印象を忘れ去れらる前に、突然、結婚により芸能界を引退。しかし、その結婚生活もわずかな期間で終わり、離婚と同時に芸能界に復帰するのだが、その復帰は、それまでの平尾スクールの優等生という清純派のイメージとは正反対の、ロマンポルノの女優としてのものだった。
後になって、事務所から脱がなければ復帰できないような宣告を受けたというような彼女自身による暴露もあり、この復帰方法が決して彼女の本意ではなかったのだろうと想像は出来るが、いずれにしろ、清純派から正反対のポルノ女優としての復帰は、商業的には大成功で、主演のポルノ映画は大ヒットを記録した。
デビュー曲の大ヒットで一般的なテレビ番組にも頻繁に出演経験のある彼女の存在は、業界としても貴重なものだったらしく、今と違ってそういうポルノ系の女優が普通のテレビ番組にはなかなか出演できないような状況にあって、主に深夜の番組ではあるが、テレビにも出演できるポルノ女優として、当時としては貴重な存在として重宝されていたような記憶がある。
それだけに、当時のそういうエッチな女性の代表のようなイメージをもたれるようになり、男性がもっとも付き合いたくない女性を選ぶアンケートで第一位をとったこともある。つまりは、あれほどエッチな女性と付き合うには、体力がもたない、という印象を与えたわけである。

このベストアルバムに収められている楽曲も、前半は平尾とのデュエット曲だが、後半は、そんなポルノ女優としてのイメージをフルにいかしたモノが多く、こういう形でしか歌うことが許されなかった彼女の当時の状況に、若干の同情を覚える。

しかし、今改めてこのアルバムを聞いてみて、一番印象的なのは、彼女の歌の上手さである。元々が歌謡スクールの優等生だけに、歌が上手いのは当たり前なのだが、そういう正しい判断を拒絶するような当時の彼女が置かれたイメージは、歌手・畑中葉子にとって不幸以外の何者でもなかったのではないか。