トンボの夏／サナエトンボ

 

夏涸れです。

炎暑の夏は終わらない…

立秋も過ぎて、今日は８/20 。

まだ３５℃以上の猛暑日が、ずっと続きそうです。

週明けは３７℃なんて今夏最高気温も予想されています。

 

涼しい場所は何処だ？

思いついたのが泉です。

市内を流れる一級河川、重信川は天井川で表面を流れる水量は多くないのですが、

伏流水が何ヵ所かで泉となって湧き出しています。

ほとんどの泉が公園化されて自然の景観とは程遠い親水公園となっています。

市民の憩いの場としては、それでいいのでしょう。

唯、ナショナルトラスト運動の先進地である英国の田園風景を流れる川景観と較べると、

清潔で小奇麗な人工造形物だらけの管理された公園ばかりでいいのだろうか？

と疑問に思います。

一ヶ所だけ雑木林に囲まれた自然の景観が残る泉があることを思い出しました。

梅雨明け以来、まったくと云っていいくらい雨が降らないので、

河川敷のサイクリングロードは、照りつける太陽と熱風に焼けつくようです。

やっと辿り着いた森の中の泉は、

見事にコンクリートと石垣で護岸された用水路となっていました。

日本人は、人の手によって管理されない自然のままの景観を憎んでいるのだろうか？

つくづく最近、そう思えてきます。

養老孟司の「手入れという思想」を読んでいると、

都市化されてゆく自然景観の危機を書き綴っています。

地球上過去５度の生物の大絶滅を救ったのは、

生命の揺り籠である湿地と熱帯雨林だと云われています。

６度目の生物種大絶滅へと向かう現在は、その湿地と森が地球上から急速に失われています。

 

気を取り直して、いつもの山際の川を目指すことにしました。

葦原と緑の樹々が覆う川は、ほとんど人工造形物のない自然のままの景観で、

水辺に生きる生き物たちも豊富です。

水辺の木蔭でボーツとしていると、沢蟹が石に付着した川苔をさかんに啄んでいる。

ハグロトンボも間近で翅を休める。

そう云えばミヤマカワトンボの姿が消えてしまった。

降りそそぐ蝉しぐれもツクツクボウシの声が大きくなってきた。

季節は、ゆっくり秋へ向かっている。

帰路の里山奥の茅場では、桔梗が僅かに咲き残り、釣鐘人参や女郎花（おみなえし）が咲き始めていた。

午後の水辺で、心ここに在らず、せせらぎの音に身を委ねていると、

サナエトンボ（早苗蜻蛉）が、すぐ脇でホバリングを繰り返していた。

川の神様のくれた夏の贈り物。