今を盛りの紅葉が翡翠を透かしたような水面に映える面河渓を正午過ぎに出発した。
霧ヶ迫の岩清水の側で、おにぎりを頬張っているとパラパラきた。
雨かと見上げると霙(みぞれ)だった。
やっとこ荷物を担ぎ上げ、尾根へと這い上がる。
枯木立の尾根は鈍色(にびいろ)の雲が垂れ込め、
チラチラ粉雪が舞い始める。
「初雪か?」
吐息のように言葉が漏れる。
面河道、愛大小屋を前にして、それは木枯らしに舞う紗幕のように空を覆う。
小屋に逃げ込み、荷物を下し一息。
さて、ざっと小屋内を見廻すと、今夜の暖を取る薪が心細い。
小屋周辺の森に落ちている枯れ木や枯れ枝を拾い集め、
床下の道具箱から斧と鋸を取り出し、ストーブの火口に入るくらいの手頃な大きさに揃える。
ついでに軒下に重ねていた大き目の薪も手頃なサイズに斧を入れる。
うっすら汗が滲む頃には、森が藍色に暮れなずんでいた。
ポッと炎が敷き詰めた小枝と丸めた新聞紙から木端に移り、
炎が安定するのを見計らって薪を足してゆく。
火勢が強くなり大き目の薪にも火が充分に廻ると、
仄暗い山小屋の炉辺に、暖ったかな憩いの時間が訪れる。
窓の外は木枯らし舞う群青の闇。
こんな宵に呑む、一杯目の麦酒は格別。
「ほーっ」溜息ひとつ。
今夜、炉辺の語り部は、梨木香歩の新刊、「冬虫夏草」。
あの泉鏡花を思わせる歳時記のように移ろう季節と森羅万象との交流を
懐かしくも美しい日本語(もう死語のように忘れ去られようとしている旧い言葉づかい)
で綴られた「家守綺譚」の続編。
森の深い闇と暖かい薪の炎…
この物語の最初の一頁を開くのは、この場所と決めていた(笑)
目覚めた森閑とした闇の底。
ぶるっ、寝袋から這い出した身体が凍える寒気に震える。
ごそごそ身繕いして、コンロに火を入れ、温かい珈琲とパンで朝食。
カメラ機材をザックに詰め、さぁ出発。
昨夜の雪は止み、見上げる空に星が瞬いていた。
靴底がパリパリ軋むように霜柱を踏む。
白い息を吐きながら、勝手知ったる面河道。
夜明け前の暗がりでも頭の中に、その先の路面の展開が想像できる。
と思っていると、ツルリ横転した。
踏み出した木道についた霜に足を取られて、もんどり打って沢へ転落。
「う~ん重いよ」
起き上がり小法師の要領で反転を試みるが、儘ならない(汗)
闇の中で、ジタバタ足掻いて、やっと体勢を立て直し木道へ這い上がる。
それからは、さすがに慎重になった。
標高を上げるに従がって、樹々は白く霧氷を纏い、その造形は、より重厚に切っ先を尖らせる。
少し仄明るくなった6時過ぎに弥山到着。
昨日、連絡を取り合った菅さんは、すでに避難小屋で待機。
持参したコンロで温かい飲み物を飲んでいると、もう一人到着。
先週、瓶ヶ森でもお会いした風雪ながら暮らしのTさんだ。
日の出の時間になっても、ガスが取れない。
上空は青空なのに。
冬の天狗岳いつものパターンではあるが、
見えそうで見えない、じれったい待ち時間が過ぎてゆく。
「まるで性悪女のようだ」とつい口が滑った。
神様の山で口汚い言葉は禁句である。
でも、もう遅い(汗)
私は、いつも一言多い。
その朝、天狗岳が見えたのは一瞬だけ。
その後、天狗尾根を辿って墓場尾根まで。
さぁ雪山シーズンの幕開けだ。
二日続けて夜明け前の面河道を辿り山頂へ。
翌朝は明方前から降り続いた雪で地表は白く覆われた。
石鎚初冠雪。
次の朝は、山上にいけぴーさんが。
また長い待ち時間を一緒に過ごした。
そして向かいの瓶ヶ森にはzenさんとYさんもいた様子。
山の写真ヤさんが、この寒気に誘われて、ぞろぞろ集合(笑)
でも成果が上がったのは、じっと凍える寒さを我慢し続けた
いけぴーさんやzenさんYさんたちでした。
さっさと切り上げて山を下りた私は、
下山の面河道から雲が晴れて夕陽に染まる石鎚山を眺めるばかり。
携帯も長く使っていると電池の消耗が早いようです。
いつも山からメールをしている皆様、御免なさい。
-4℃の、この秋一番の寒気に電池の容量が消え沈黙(ブラック・アウト)してしまいました (汗)
下山して松山から夕映えに染まる石鎚山が見えたのですね。
残念、私はその頃、面河道を下山中でした。
とっぷり日の暮れた11月の山道をバイクで走リ下るのは、
身体の芯まで凍える季節になりました。
次回からは、明るい内に帰宅します(反省)
さて雪の季節到来です。
林道閉め前に、もう一回瓶ヶ森へ行けるでしょうか?
はぁ~、いいなあ~。
モノクロの写真が、一等好きです。
それと、ストーブの前のランスケさんの読書姿、いいですなあ~。缶ビール350を一本飲んで、熱燗を飲みながら顔が火照る。もう、そんな状況を諦めているだけに羨ましさがつのります。
しかし、転倒はやばかったのではないですか?
ご用心ご用心。
11月の面河道は、出発点の錦繍から山上の雪景色まで、
春四月の新緑から残雪の山と共に大好きな季節の遡行です。
そして愛大小屋で過ごす薪ストーブの夜が、何よりの時間ですね。
石立山も登った百姓モドキさんです。
ぜひ山仲間のお友達と試してください。
木枯らし吹く、これからの季節がお薦めです。
木道の転倒、かなり危なかったです。
打ち所が悪ければ、頭から岩場にですからね(汗)
実は二日目の下山も、何でもない所でバランスを崩し、ゴロゴロ転がって笹薮を滑落。
加齢と共に、足腰の踏ん張りが利かなくなっているのかな?
雪山シーズンの到来。
足首関節の骨折箇所は完治したようですが下りにカクンと違和感があります。
慎重に様子を見ながら、一年中で最も美し季節へ。
また社会面の片隅に「福島の子供、甲状腺がん、疑い含めて59人」という記事が。
http://www.huffingtonpost.jp/2013/11/12/thyroid-cancer-fukushima_n_4263666.html?utm_hp_ref=japan
8月から、また15人も増えている。
そして何処まで増えても被曝の影響とは考えられないと否定し続けるつもりらしい。
この先、100人になっても200人になっても、同じ回答が返ってくるのでしょうね?
否、秘密保護法が成立すると、そんな情報さえ出てこないかもしれません。
最近本屋さんに行く機会がずーんと減って、いけません。「冬虫夏草」早速読んでみます。モノトーン(冬景色)の中のストーブ前のランスケさん引き立ちます。
転落したとか。気をつけてください。気の緩みは大事故につながる。経験者の言葉は重みがあるでしょう。(笑)
体力が落ちました。
散歩しても息切れが・・・そこでジョギングを開始しました。今年いっぱいで元に戻らねば・・・
その「冬虫夏草」のブログ記事を書いていたので返信遅くなりました。
民俗学に造詣の深い鬼城さんにとって、より興味深い内容だと思いますよ。
一時、琵琶湖周辺に住んでいたらしい梨木香歩は、あの辺りの伝説や人々の暮らしに触れていたのだと思います。
鈴鹿山中、山郷の描写は秀逸です。
はは…百姓モドキさんも、ホッホさんも転倒を心配してくれました(汗)
鬼城さんも、つい最近回復したばかり。
お互いに身体と相談しながらですね。
ここに出てきている『山岳会の若手T』ですが、
できれば私の事を許可を取らずに勝手に書かないでください。
私の個人情報にあたります。
それから、このブログ記事ですが、山岳会の事を事実誤認されているようです。
なおまた、時間が経って、状況も私の考えもこの時よりも変わりました。
現状ですが、私は会とは距離を取っています。
また、ここ最近、体調不良が続くことや、
登山中のケガや事故が多いことなど、
様々な要因から登山そのものを止めたいと思っています。
実際の所、仕事以外での人間関係は現在、ほとんどありません。
日常生活で、私が誰かに会って話すことは、今現在、ほとんどありません。
諸般の事情で、人間関係を断って暮らしています。
一人で黙ってゆっくりしたいから登山をしていましたが
それも難しい状況になったのも、登山をやめる一因です。
あなたは会うたびに「ブログを読んでください」とおっしゃいますが
ブログの文章や内容が難しいので判断しかねます。
コメントの仕様もありません。
あなたと会話したいことも特にありません。
もし今度、登山中に顔を合わすことがあっても
(実際の所、あなたの顔をイマイチ覚えていないのですが)
無視して通ると思いますが、悪く思わないでください。
あなたの価値観や言動やブログそのものを否定するつもりはありません。
ただ、私には分からなかっただけです。
また、これは全員誰でもですが、私にも自我があって自由意志で行動しています。
人それぞれ、個性、意見、考えが違うのが当たり前です。
理解できない人は遠くに距離を取ります。
あなたにとっては突然に不躾で不愉快な内容かもしれませんが
こちらにも、自分の都合や時間があります。
これが包み隠すところがない私の考えと事情です。
ほとんどあらゆる人に、ほぼ同様の内容をお伝えしている状況です。
個人的に深く取らないでください。
必要があったら、愛大山岳会などの人に聞けば
何か分かるかと存じます。
失礼します。
6年前の記事への書き込みに驚いています。
そうですか。
何か事情があるのでしょう。
Tさんとお会いしたのは2回だけだと記憶していますが、余計な詮索は致しません。
御不快と感じられたTさんに関する記述、削除します。
ごめんなさい。