撮り貯めた花の写真を選択してゆく過程で、忘れられない一枚の写真がある。
雨に煙る五月の面河道だった。
まだ桜の花は咲き始めたばかり。
降り続ける春まだ浅い山の雨を浴びて、びっしり雨滴を梢に連ねる
イシヅチザクラの姿に目が留まった。
その山地性の桜が醸し出す、しっとりとした佇まい心惹かれ、
一度通り越してからまた引き返して来て撮影を開始した。
三脚を据えて、はたと思案した。
雨滴を強調してクローズアップで撮るべきか、
少し退いて山地性の桜の佇まいを切り取るべきか…
結果、上記のように山の冷たい雨に打たれる桜の情景を意識して
フレーミングし、少しアンダー気味の露出でシャッターを切った。
写真の好みは、それぞれ分かれるところだろうが、
私にとって、この一枚は「山野草の息づく自然環境の空気感」を伝える
という撮影スタイルを、最も端的に表現した忘れられない一枚となった。
同じイシヅチザクラでも、次の写真「天狗尾根の満開の桜」は、
午後の斜光線を浴びて背景の二の森は陰に落ち満開の桜が浮かび上がる
華やかな花風情が対照的な桜の写真だ。
写真選択で少し悩んだが、私にとって記憶に残る風景は、
間違いなく前者の雨に打たれる桜の佇まいだった(笑)
心に残る一枚という選択肢でゆくと、この一枚も忘れられない。
もう失われた花風景というべきか…
「花の山、石鎚山」を代表する花として選ばれたシコクイチゲが
夏の朝日を浴びて光輝き、西ノ冠岳、二の森と連なる石鎚連山が
爽やかな夏山の朝の空気感を醸し出している。
残念ながら、この素晴らしいロケーションに咲くシコクイチゲの花叢は消滅しました。
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